女子ゲーム交流会 C
女子ゲーム交流会 5
「うわぁぁぁぁぁぁぁん、コータロー! 僕は悔しい、悔しいんだ!」
「お前な……」
家に帰ると、珍しく悔し涙を浮かべたアカネが俺の胸に飛びつき、そして『悔しい、悔しいんだぁぁぁぁぁ!』と俺に訴えてきた。
勿論始めは心配した。
何か近所で言われたんじゃないか?
何か嫌がらせを受けたんじゃないか?
俺はそう思ってとても心配だった。
心配だったが……。
「お前な、ゲームで負けたからって泣くほどなのか?」
「そうさ! 結果、僕はあのモミジに負ける事になったんだよ! 僕は悔しくてたまらないよ!」
「…………」
話を聞き終わったとき、俺の真剣な顔は、やや呆れた顔へと取り換えられた。
ホント、モミジに負けて悔しいのは分かるが、泣くほどなのか? いや、アカネにとっては泣くほどだろうな。
俺には分からん気持ちだが……。
「うわぁぁぁぁぁぁぁん! 悔しい、光秀め〜! 今度は絶対配下にしないからな! 信用しないからな! うわぁぁぁぁぁぁぁ僕の勝利があぁぁぁぁぁぁぁ! グスッグス……」
まったくコイツは……。
コイツを励ますためにも、出来るだけ美味しい料理でも……っとその前に軽く言葉をかけておくか。
コイツの涙は、つまらない事が原因としても見ていたくないからな。
「お前、落ち込んでいる暇があるなら、根っから負けず嫌いの性格を生かして、練習したらどうだ? その方がよっぽどお前らしいぞ」
「は! そ、そうだね! 落ち込んでばかりだと僕らしくない! よし、僕はやるぞぉぉぉぉぉぉぉ!」
そして、俺の言葉を聞いたアカネは走ってリビングに向かい、棚から取り出したパソコンを広げてソファーに座った。
そんなアカネの姿に俺は。
『ノートパソコンとゲームをセットで欲しがったから買ってあげた訳だが、買ってよかったな! 19万もしたから俺のへそくりが寂しくなったが……、まぁ良い暇つぶしにはなるだろうし、良かったとしよう!』
そう微笑みながら呟いた
…………。
「アカネ、ご飯できたぞ~」
「ちょ、ちょっと待って! 今、僕はとてもいい所なんだ!」
さて、俺はパンにポタージュスープ、そしてサラダや豆腐ハンバーグ等を作り、低いテーブルの上に置いた訳だが、アカネはどうもゲームに夢中らしい、いや、間違いなく夢中だろう。
と言うのも、短パンTシャツ姿のアカネは、画面に食い入らんかの様な勢いだ。
……ここまでゲームに夢中になるとは思ってなかったな……。
っとそう思っている暇はない。
せっかく料理を作ったのだ、俺としては美味しいうちに食べてもらいたいと言うエゴがあるのだが、アカネがこう夢中になっている姿を見ると、たまには良いのかもしれないと思うところがあり、うーん……。
そう考えると、どちらの答えが正しいか?
……まぁ俺がけしかけた様なものだ、ここで無理に料理を食べさせるのは野暮なのかもしれないな。
…………。
「アカネ……、そろそろ食べないか?」
「ん~もうちょっと待ってくれるかな? 僕の圧倒的な軍略で関西周辺を収めている所なのだから……」
「…………」
その、何だ、一時間たっているので、そろそろ手を休めてもらえたら嬉しいと思うのだが、部屋の隅にあるソファーの上でうつ伏せになっているアカネは、ゲームに夢中だ。
きっとこの調子なら食べないだろうな、まぁここはラップをして、レンジでチンすればいつでも食べれるように、しておくか。
「アカネ、とりあえずラップしておくぞ」
「ん~」
そして俺は、作った料理の乗った皿をラップで覆い、そして食べ終わった自分の皿を洗い始める。
……正直心がムズムズする。
いつもであれば、アカネと一緒に他愛のない話をしながら食事をしているハズだ。
だが、今日は一人で静かに食べた。
いや、冷静になってみれば、結婚する以前は一人で食べていたハズなのだ。
なのに、不思議と今は寂しさを感じてしまっている。
……どうやら、知らぬ間にアカネと言う存在は、俺の中で大きくなっていたようだ。
あぁきっとコレが、アカネと食事する事が、今の俺の日常の一部だったんだな……。
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