夫達と妻達の時間 B
夫達と妻達の時間 4
「そう言えばコータローさん達の高校時代ってどんな感じだったんですか?」
「高校時代?」
泊りがけの出張にタツヤと一緒に行っていた俺は、夕食後のホテルの寝室でそう尋ねられる。
しかし高校時代と言えばまぁ色々あったが、とりあえずあの話をするか……。
「まぁせっかくだし、あの二人についての話を聞くか?」
「はい、是非!」
そしてベットに座る俺は、同じくベットに座るタツヤに向けて、昔話を始めるのであった。
…………。
あれは高校一年の時だったな。
確か高校で初めて会った時は、直ぐに仲が良くなってなあの二人、アカネは『モミモミ』モミジは『アカネちゃん』と呼び合っていたな。
それでよく二人で、俺のところに来てはワイワイ仲良く話していたんだが……、梅雨のある日の昼休みの事だったな。
俺はその時、男友達と世間話をしていたんだが。
「コータロー!」
っと元気よくモミジが俺の背後から抱き着いてきたんだ。
それを見たアカネが『ぼ、僕でもまだコータローに抱き着いた事がないというのに……。 モミジ、貴様は敵だ!』と言ってな。
それからアカネとモミジはちょっと不仲になって、テストの点数とか、体育の成績とかでいろんな事で争っていたぞ。
そのおかげか知らないが、あの二人は成績はとても良くて、勉強に関してはあの二人に教わることが多かったんだが……、まぁあの二人は『僕の方が教え方が上手い!』『ワタクシの方が勉強の教え方が上手い』って言い合いながら俺に教え、俺が二人の喧嘩を止めると言う流れが出来ていたなぁ。
ただ、あの二人には感謝している、おかげで毎回赤点は回避できたからな。
…………。
「へぇ、何かモミジさんが教えるの上手いの納得した気がしますよ」
「ん? 何かアイツから教わったのか?」
「前の会社に入社した時、モミジさんに色々教わったもので……。 その、もっと明るくしなさいとか、自分の意見はハッキリ言いなさいとか、後は仕事に関して色々ですかね」
まるで子供の教育だな……。
「ですけど、おかげで自分は一人前になれたと自負しています! だからモミジさんを大切にしたいと思っているんです!」
「そうか、なら大切にな」
「ところで、他にはないんですか? お二人の話。 ちょっとモミジさん達がどんな高校時代を過ごしていたのか気になるんで!」
「そうか、なら今日はとことん高校時代について話すぞ。 いいな?」
「はい!」
…………。
昔、少し遠くにある遊園地に行った時の話なんだがな、その遊園地に着いた途端、アイツらときたら。
「はっはっは、僕は将来ボンキュッボンなスタイルに天才的な頭脳を持つ完璧な美女になるから、ジェットコースター程度で悲鳴などあげないのさ! モミジと違ってさ」
「何を言っていますの! ワタクシはアカネさんと違って決して悲鳴など上げませんわ! まったくこれだから貧乳は……」
「そんな下品な乳をした女に僕は言われたくないね! どうせ知性も全部胸に吸われているんだろう!」
「まぁ、乳にも脳にも栄養がいってないのによく言いますわね! 良いですわ、その喧嘩、買ってあげます!」
なんて言って喧嘩しながらジェットコースターに乗っていたんだが、まぁあの二人、ジェットコースターに乗りながらも互いに罵倒し合っているんだよ、それも相手の泣き顔を見てやるって事でな。
しかも何週もそれを繰り返すもんだから、目立つんだよ……。
もう周りから冷たい目線が刺さるんだよ……。
そして最終的には。
「あ、お二人並んでですね。 お兄さんは後ろですね」
って従業員に顔を覚えられるわ。
「おい、噂の騒音女たちだろ、あれ……」
「ホント迷惑よね……」
「一緒にいる男、注意しないのかしら……」
とか他の客から陰口をたたかれるわで災難だったな、あの時は……。
…………。
「コータローさん、苦労してるんですね……」
「いや、こんな事は序の口なんだよ……」
「ま、まだこれより酷い話があるんですか!?」
「あるんだよ、タツヤ……」
そう、これはまだまだ序の口なのだ。
これはまだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます