愛と言う名の下に…… 12

 「すまんアカネ! お前に誤解を生む行動を取ってしまって……。 一緒にいたのは会社の新入りでな、その、お前へのクリスマスプレゼントを考えるべく、相談に乗って貰っていたんだ……。 ホントすまない!」


 受付傍の椅子に僕とコータローは座ると、真っ先にコータローが僕に頭を下げてきた。

 まぁでも、僕も心配をかけた訳だけどその……。


 「ま、まぁ僕の早とちりもあっただろうし、お互い様だよ」


 とちょっと偉そうに言った。

 その、こんな迷惑をかけておいてなんだけど、僕はコータローの思いがどれだけの物か、分からされたような気がする。

 とてもありがたいとしか言いようのない、素敵な愛情だと……。


 …………。


 僕たちは、ホテルに宿泊する予定だった費用を払うと、そのまま街へと足を運んだ。

 時刻は九時半、残業につかれたであろうサラリーマンが街をうろつく頃、コータローが。


 「寄り道をしたいんだが、良いか?」


 と言うモノなので。


 「僕は行くよ、君について行くさ……」


 と言って、コータローについて行った。

 そして、僕が連れられて行った場所は、コータローとあの女が一緒に向かっていたデパート。

 そのデパートの中を僕はコータローの後を追い奥へ進む。

 すると、とある店舗の前に立ち止まると、コータローが。


 「アカネ、好きなだけ選べ。 俺からのプレゼントだ!」


 と言って、僕に言ってきた。

 で、でもこれは……。


 「い、良いのかい!? オルガノのケーキ、好きなだけ選んで!?」

 「あぁ、良いぞ。 好きなだけ選んでいいからな!」


 それは僕の大好きなオルガノのケーキ、それを好きなだけ選んでいいなんて、なんて贅沢なんだ!

 でも……。


 「コータロー、どうせなら一緒に選んで、一緒に食べないかい?」

 「いいのか?」

 「いいさ、僕は今日、コータローの優しさを十二分に理解したのだから……あ、ついでにお酒も買おう! 僕はスクリュードライバーをだね!」

 「分かった分かった、それなら一緒に選ぶか」


 そして僕たちは一緒にケーキを選んだあと、お酒を一杯買い、そして自宅へと歩いて帰る事にした。

 その途中、僕はふと気になった事があった。

 それは僕をどうやって見つけたのか?という事。

 だから、左手にケーキの箱、右手にお酒の入った袋を持つコータローの顔を見ながら僕は尋ねることにした。


 「コータロー、僕をどうやって見つけたのかい?」

 「あぁ、シンの顔の広さのおかげでだな……。 シンの知り合いに、アカネの写真を送って「この子を見かけたら連絡が欲しい」ってお願いしてだな」

 「写真? 君は僕の写真をいつの間に撮っていたのかい?」

 「いや、お前の砂の弁当箱に埋まっていた写真をだな……」

 「ふにゃ!?」


 つ、つまり何だい……。

 僕の下着写真が、あの変態ルートで広まったという訳なのかい……。

 こ、これじゃあ世間やコータローからは『清純派の可愛い奥さん』って評判だったはずなのに、きっと写真のせいで『清純派に見せた狡猾な痴女』なんて評判に変わったんじゃないのかい!?


 ……ええい、もうこうなればヤケだ!

 今まで世間からのクリーンなイメージを守りつつ、コータローと愛を育む為、僕を襲ってくれる様に様々な策を練ったりしていたけど、クリーンなイメージが崩されたのだから、もうコータローからのイメージなどを気にせず、僕からドンドン迫ってやる!

 っとその前に理性ブレーキを壊す儀式をしておかないと……。


 「コータロー! お酒を頂戴!」

 「お、おう」


 そして僕は、コータローにそう言って、手渡された袋のスクリュードライバーを、3本飲み干すと。


 「コータロー、おんぶ!」

 「お、おう……。 その、アカネ、どうした?」

 「何でもない!」


 コータローにおんぶされて、家へと帰っていった。

 ぐふふ……もう、恐れることもないさ……。

 理性ブレーキも一時故障した気分だ、遠慮なく外でもべたついてやる!


 「あ、アカネ! お前グラグラ動くなって!」

 「いえーい、僕はラブラブだぞー!」


 …………。


 「アカネ……着いたぞ……。 俺はソファーで休む……」

 「ふふふふふ……仕方ないね……」


 家に着いた僕は、汗をかいたコータローの後ろをついてきながら、服を一枚、一枚脱いでいく。

 そして、コータローがリビングのソファーに座った時、彼の背後から腕を絡ませると。


 「ほら、コータロー……。 僕を抱くんだ……さぁ……」


 そして僕は、コータローの耳にそう囁く。

 ふふ、男ならこの誘いを断れないだろう。

 それも女性から男性を夜の営みに誘っているのだから……。

 そして、それは僕の思い通りに行ったらしい。

 コータローは僕を抱きかかえると、そのままベットへと運び、そして僕をその上に優しく置いた。


 ふふふ、きっとこれから僕を襲ってくれるのだろう。

 きっと僕の身体を生まれたままの姿にすると、コータローが魅力的な僕の身体をメチャメチャにして、そして遂には……。


 「はぁ……お前な、焼き肉屋でもそうだったが、酔っている時に異性を誘うような行動や言動をする癖は直したほうが良いぞ!」

 「ふにゃ!?」


 ち、違うってコータロー、癖じゃないって……。

 僕は本心で君にそう言っているんだけどさ……。


 「まぁそれはともかく今日は寝るんだ。 俺はお前の脱ぎ散らかした服を洗濯しないといけないからな、それに明日のお前の朝食の準備をしないと……」

 「コータローの大バカモノぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 「いだだだだだだだだ! 噛むな、アカネ!」


 僕は、妻の誘いより家事の事を優先した大バカの右腕に思いっきり噛みついた。

 僕は、僕は、本気だったんだぞぉぉぉぉぉぉぉ!


 「僕より家事が大切なのかい!? まったく、まったく!」

 「あ、アカネ、お前は酒の飲み過ぎだ! 悪酔いしているぞ! いだだだだだ、や、止めてくれ!」

 「もう僕は怒った! 徹底的に噛んでやる! 君の身体に僕の怒りを記してやる!」


 まったく、まったく! ……バカで鈍いんだから! ふふふ……。

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