たまには夫同士で会話を……
たまには夫同士で会話を…… A
たまには夫同士で会話を…… 1
「すまんアカネ。 今日はシンとタツヤの3人で、遊んでくるから、冷蔵庫の食事を作っておいた、それを食べておいてくれ!」
「ふふふ、たまにはゆっくり羽を伸ばしてくれたまえ!」
その日、俺はアカネの笑みを背に、バスに乗り、居酒屋へ向かった。
それはあの3人の夫達が、酒を交わしつつ他愛もない事を話す、交流会へと。
…………。
「おぉおぉ、ツンデレーノ男爵! 寂しいから先に一杯口にしてたぜ」
「ん? えらく早かったな、シン」
さて、居酒屋に入った俺は店員に案内されて、奥にある和室風の個室に入ると、そこにはシンが酒を飲む姿が広がっていた。
シンは氷菓先輩の夫で、社会人になってから初めて出来た同い年の友人だ。
一言でいうなら、うさん臭い男。
クリっとした目が印象的でなかなか良い男だが、夏でも冬でもジーパンに白のTシャツを着ていて、わざとらしく道化た様な話し方をする男。
だが、まぁ真面目に話すときは真面目に話す奴だから、結構人間として好きだったりする訳で……。
それはそうと。
「シン、お前、顔面にアイアンクローされた跡があるぞ、一体何をやらかしたんだ?」
「あぁ、単純に俺様が浮気したって勘違いされてよぉ。 知り合いに付き合ってキャバクラ行ったんだが、その時にかわい子ちゃんから首元にキスされちゃってな! 『俺ちゃんこりゃモテ期か? ヤバイねぇ、嬉しいな』と上機嫌で家に帰ったらだな……まぁ死ぬかと思った……」
「まぁ何だ。 同情するよ、お前には……」
俺はアイアンクローの後を指さしながらそう口にするシンを見て思う。
コイツはどうして氷菓先輩と結婚したのだろう?
かたや、世界的大企業の娘で美しい外見に多彩な才能を発揮した天才と評される才女。
かたや、一体何を考えているのか分からない男。
ホント、何がどうなればこの二人がくっついたのか不思議だ……。
っと、流石にそれは聞いちゃいけないのだろうな……。
「ところで、お前さんの方はどうなんだ、コータローちゃん〜。 最近はよ〜?」
「ん? そうだな……。 うーむ……」
そして俺は考え出す。
とりあえず、まず浮かぶのは、アカネが料理に凝りだした事だろうか?
この前の焼き肉屋以降、またモミジと言い争いをしたアカネは、モミジに負けまいと最近料理のレシピをインターネットで読み漁り、ゆっくりと料理の腕を上げていると……いや、これだとノロケ話だよな……。
後は……、アカネがまたデートに行きたがっていて……。
思い出せ俺、アカネ以外の話題を……。
…………。
「おいおい、いつまで悩んでいるんだ? コータローちゃんよ~」
「すまん、結局なかった……」
腕を組んで10分以上考えたが、結局他には何も浮かばなかった。
いや、ホントはあるはずなんだが、不思議と思い出せないと言うか……。
そんな時、ガラガラと戸が開き。
「お疲れ様です、コータローさん、それにシンさん!」
「おぉ、お嬢様言葉ん所の従者じゃねぇか、遅かったな!」
「いやー、ちょっとモミジさんと抱き合いながら、一緒に昼寝しちゃってて……。 不思議と一緒にいると気が安らいでしまってですね」
頭をかきながら遅れてタツヤが個室へと入ってくる。
……待て、一緒に添い寝って恥ずかしくならないのか、それは!?
「何だよおめ〜、そりゃ自己管理の問題じゃねぇか。 イチャイチャしてないでシャキッとしろ、シャキッと!」
「えへへ、すいませんホント」
「っとまぁ話はそれ位にして、酒を飲もうぜ酒を!」
「分かりました、それじゃあ俺もドンドン飲みますよ~!」
そして、その声をきっかけに夫達の飲み会の幕が開くのであった。
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