たまには夫同士で会話を…… B

たまには夫同士で会話を…… 4

 さて、予想だにしないサプライズ発表に固まったコータローと俺様だったが、まぁめでたい事には違いない。


 「なんだタツヤ、ホントに驚く事を言うなよ! ま、おめでとう!」

 「俺ちゃんだってびっくりよ~! よし、今日は妊娠おめでとうの回だ!」

 「ありがとうございます、お2人とも。 ホントはモミジさんから『もう少し内緒にしておいて』って言われていたんですけど、2人にはですね……」

 「まぁ良いじゃん! とりあえず、俺ちゃんから、新たな父親の誕生を祝って、カンパーイ!」

 「「カンパーイ!」」


 そして、祝う気持ちMAXって事でまぁガンガン飲んだ。


 …………。


 訳なンだが……。


 「スー……スー……」


 あらら〜俺ちゃんの前には、主役が机に顔を埋めて爆睡と……。

 っとそんな様子を。


 「タツヤの奴、珍しく飲んだな……」


 横から生暖かい目のコータローが優しく眺める。 

 おやおや〜、偉く優しいじゃないの〜、カッコイー!なんてな。


 「コータローちゃんよ〜、後輩思いの良い先輩してんじゃない〜」

 「まぁな、可愛い後輩だな、コイツは」

 「おろ? ツンデレの癖に素直じゃない〜。 どしたよ、もしかして飲み過ぎたかい?」

 「んな訳あるか! と言うか俺はツンデレな訳ないだろ!」


 そんな愉快な俺ちゃんの質問に、ツンデレコータローはえらく素直に答えたと思ったら、ツンデレを否定する発言をする。

 でも、そんな嘘、俺には通じないっての。

 だってさ。


 「コータローちゃん、お前前に酒に酔って寝ていた時言ったぞ~。 『アカネ、愛しているぞ……』ってな!」

 「な!? そ、そんな事言う訳ないだろ!? お、俺はだな、その、い、言わないと俺は……」

 「何だよコータローちゃん、えらく動揺しているみたいだぞ〜? まぁ素直になれって、その方が楽だぜ!」

 「ば、バカか!? その、俺は言いかねないかもしれないと言っておくが、その、言った事を認めた訳じゃないぞ! 第一、お前が嘘をついているって可能性も無いとは……」

 「おう、俺様特製のスペシャルな嘘だ!」

 「お前な……」


 こういう風に動揺させれば、簡単に自白してくれるんだから、お手軽なモンよ!

 全く、いつまで男の照れを隠してんだか……。

 ……まぁそれは一度置いておいて、俺もコータローと二人で話したくなった話題がある訳だが、その前にちょっと予告だけしておくか!


 「ここで、コータローちゃんが嫌がる話していい?」

 「嫌と言ったら?」

 「そりゃ、俺ちゃんが一方的に話し続けるよ、お前さんの大好きなアカネちゃんの話をさ〜。 しかもエンドレスに!」

 「くそ、この変人め……」

 「いやー、もう嫌そうに見せながら褒めちゃうんだから、もう良いツンデレだねぇコータローちゃん!」

 「ホントに嫌なんだよ、この大バカ野郎! ええい、これ以上不快になるよりはマシだし、どうせ酒に酔っているんだ! 聞いてやる!」

 「会社で働く社会人なんだから嫌な事も我慢しないとね~、ま、会社で働いた事ない俺様にそんな気持ちは分かんないけどな!」

 「早く話せ、このバカ野郎!」


 おっと、せっかちだとカワイ子ちゃんとのデートチャンスも逃しちゃうぞ~、っとまぁそれは置いといて、そろそろ本題に入るか。


 「正直なところさ。 お前、アカネちゃんを抱いた?」

 「は!? な、何をいきなり!?」

 「だから、裸で抱き合ったか?って聞いてるんだよ、俺様は」

 「ば、バカ!? 公共の場だぞ!」


 まったく30歳なのに初心だねぇコイツは……。

 さて、からかいながら言うのは止めるか、ちょっとだけよ……なんてな!


 「……あ~まぁつまり、何が言いたいかって言えばだ、子供についてどう思うよ? コータロー」

 「ん? その、まぁ……。 アカネがどう思うかなのだろうが、まぁ……。 タツヤのあんな話を聞いたら、ちょっと欲しいかなと思ってしまった……」

 「そうか、そうだよなぁ……。 俺様もそうなんだ、子供欲しいって思っちまった……」


 そして俺様は天井を見て思い出す。

 タツヤが笑顔で語った未来予想図を……。


 『子供はヒカルって名前にしようと思ってるんスよ、自分たちの希望として光ってほしいって願いを込めて』

 『出来れば幸せに生きてほしいっスね~! 男だったらやっぱキャッチボールしたいと言うか……』

 『女の子だったらどうするっスかね~。 やっぱ人形とか買ってあげるべきっスよね!』


 そして、その時思った。

 なんつーか、情けないって思う奴もいるかもしれないが、話を聞いていたら、不思議と子供が欲しくなった。

 それは、自分の性欲の解消とか、形だけの言葉とか、そんなんじゃない。

 自分の血と姐さんの血を引いた子供、何と言うか夫婦の愛の証って奴を一緒に育ててみたいワクワク感。

 ただ、それだけ。

 それだけのつまらない理由だった。


 「シン、一つ提案なんだが?」

 「何だ、コータローちゃんよ?」

 「いつか、3家族とも子供が出来たら、3家族で旅行に行ってみないか?」

 「悪くはねぇけど、俺ちゃんの血を引いた子供は、とんでもない悪ガキになるかもしれないぜ?」

 「お前は何だかんだいい奴なんだ、そんな事ありえないだろう?」

 「……今の発言、ツンデレって認定しておくぜ、俺様」


 そして俺たちは『フッ』っと鼻息で笑うと、互いのビールのジョッキをぶつけ、半分程残ったビールを全て飲み干すのだった。

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