たまには夫同士で会話を…… 6
「よいしょっと……、とりあえず2人を後ろに乗せ終わったぜ、姐さん!」
「把握」
さて、姐さんからのハードなお仕置きから解放された俺様は、自身のひろーい背中でおぶって2人を軽自動車の後ろに乗せ終わった俺は助手席に座り、それを確認した氷菓の姐さんは車を発進させた。
窓の外は流れるネオンの明かり、その下には所々スーツ姿の男達が肩を組んで歩き、そして地面で眠るスーツ姿に車のライトが当たる。
いや、言ってしまえばコレが都心の休日前の風景なのか?なんて思ってしまうんだが、俺様なんか上から目線? いや、神様目線!?
なーんて思っていた俺に。
「シン、話、内容」
「ん? 今日、俺様達が何話したかって?」
「そう、聞きたい」
姐さんは前を見ながら運転しつつ、そう俺ちゃんに言い放つ。
そんなもん簡単だ、だって。
「トークルーレットってアプリで話したんだけどよ、これが良いんだ! こう、すっごく話が盛り上がるんだなぁ!」
「盛り上がる?何?」
「何って? 甘いなぁ姉さん〜。 これ使えばさ、キャバクラで姉ちゃんたちと盛り上がれるって寸法でさ~、もうキャバクラの帝王間違いなし!……っていだだだだだだだだ! 冗談、俺ちゃんのユーモア溢れる冗談だからさ! だから太ももを抓るの止めてって! ……ってあれ?」
あらら、珍しい事で……。
いつもなら、もうちょっとお仕置きタイムは長いんだけどさ、一体どうしたのやら……。
「正直に、話して……」
「…………」
仕方ねぇな……。
「モミジちゃんが妊娠したらしくてな、タツヤがえらく楽しそうに話しててな、正直羨ましく思った。 なんつーか、こう子供の未来の想像って言うかな、なんか色々ある訳よ、勉強で一番になってほしいとか、将来学者になってほしいとか! まぁそんな点が羨ましくてさ、あ~悪い、難しい事はパスだパス!」
「…………」
やっぱ向かないな俺様、姐さんには悪いけどさ。
まぁその後は会話が無かった。
なんつーか、照れって言うか……。
…………。
「ここに住むモミジちゃん、ドアを開けなさい! このままだと俺様が、酒に酔ったタツヤをお持ち帰りする事になるよ~!」
「あら、セクハラ男ではありませんの? ワタクシのタツヤを届けてくださったの?」
「そりゃ、俺様いい男だから当然!」
ゆっくりと扉が開き、迎えるは巨乳のかわい子、モミジちゃん!
いやーやっぱ可愛いね~、顔も体も魅力的!
あ、でも……。
「……って言うか俺ちゃん、まだオッパイ揉んだりチューしたりしてないからセーフだろ? ノーセクハラ!」
「アナタのいやらしい目線がセクハラですわ……」
「何言ってんだよ呆れた目で見ちゃって〜。 俺は魅力的だからそんな目で見てるんだぜ〜。 つまり、エロ目線は女性への誉め言葉! 自信持たなきゃ損よ、損!」
俺様がせっかくモミジちゃんのオッパイを見るついでに可愛い従者君を運んできてあげたのに、そう言わなくたっていいじゃないの〜……。
どうせなら、変態とか、変質者とか、もうハッキリ言ってもらわないと、なーんて。
「……っと言うところで、俺は帰るわ! あと、妊娠の事聞いたぜ、無理すんなよ」
「な!? き、聞きましたの!?」
「よっこいしょっと! ……ったく、隠す事ねーだろ、そんなおめでたい事! ……困ったら呼べよ、仲間なんだからよ!」
「……礼はありませんわよ?」
そして俺は、タツヤを玄関に降ろすと、そんな言葉を贈るモミジに背中を向けて右手を上げ、車へと戻る。
まったく、仲間助けるのに礼なんかいるかよ。
次はコータローだな。
…………。
「おーい、僕っ子〜。 酔っぱらったコータローを連れてきたぞ、開けろ〜」
「うるさいぞ、変態! 僕のコータローをさっさと玄関に降ろせ! さぁ帰れ!」
一瞬の出来事だったドアがバンと空き、そして僕っ子がコータローを奪い取り、自分の背中に背負い家の中に入ると、バンと扉が閉じられた。
そして。
「い、今なら酒に酔って襲ったという事で……その、許されると思うぞ、コータロー……あ、あの、た、頼む……頼む、僕を無視しないでくれ……」
すっごく情けない小さな声がドアの向こうから俺様の耳に入ってくる。
あら〜相変わらず愛されているなぁコータロー、そしてまだ手を出せてないのかコータロー……。
よし、ここで俺様が、夫婦の距離を一気に縮める為に一言、声援を送るとしよう!
「本日のニュースです。 コータロー氏は俺様氏に対し『ちょっと子供がほしいかな』と語っていた事がわかりました」
「……僕はニュースの続きを、その……聞きたい……」
まったく、夫婦そろって似た物同士だな、ここは……。
「まぁつまり、今日子供の話題になって、ちょっと欲しくなったんだと。 そしてニュースは終わりだ。 まぁ、似た者同士、頑張れよ~」
「あ、ちょっと!? 僕は詳しくその話を……、あ、ドアのチェーンが上手く空かない!? あ、ま、待て! 待て!」
さて、俺様はそんなアカネちゃんの慌ただしい声を背に受けながら車に戻り、そして去っていく。
まったく、あの2つの夫婦の夫たちは愛されているなぁと俺様は思う。
確かにあの2人は性格はいいよ、だから愛されていると俺様も認めよう、実にアツアツだ。
まぁでも、俺様は思うんだ。
コータロー、ありゃ大丈夫かね? もう少し素直さを持てば違うんだろうけどな……。
……なんてな。
「あ、ところで姐さん。 良ければ家で飲まない? 俺ちゃん、もう少し楽しく飲みたい気分なんだけど?」
「いい、私も飲みたい」
あぁやっぱこの人と結婚出来て良かったわ俺様。
たまに見せてくれる可愛らしい笑みを眺めていて、俺様はそう思ってしまった。
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