愛と言う名の下に…… 2

 「実はだな、妻に内緒で、驚くようなクリスマスプレゼントをしたいと考えているんだが、なかなかいい案が浮かばなくてな」

 「おぉつまり、LAVEだね! クリスマスLAVEだね!? 超ラブラブって事だね!」


 さて、ノアに妻へのプレゼントについて相談した結果、その話題にとても興味が湧いたのか、キラキラ輝かせた瞳を俺に近づける。

 しかしだな、ノア……。


 「お前、顔が近いよ……」

 「そりゃ、ワクワクするラブラブ話だもの! 私の大好きな話だもの! ワックワックさんだよ~」

 「分かった、分かったから落ち着けよ……」


 正直、ノアとは良く話すわけでもないので『こんな一面があるんだな……』と驚かされたが、その驚きが消える程の顔の近づけ方に、俺は自然と頬を染めながらも、ノアから軽く距離を取る様に後ろに下がる。

 その、やっぱり可愛らしさはあるので、男として照れてしまうのは仕方ない……っと言い訳したいな、ちょっと……。


 「あらあらあら〜、顔を赤くしてるけど、照れてるの〜? ダメだよ浮気は。 ダメ絶対! メッ! 悪い子!」

 「バカ!? コレはその……、熱があるんだ今日は!」

 「へ!? 熱なの!? それなら早く帰らないとダメだってコーさん! その熱が重病だったら大変だよ、奥さん可哀そうだよ!」

 「すまん……、ホントはノアの顔が近くて照れてた……」

 「へ? コーさん嘘はダメだよ! ダメ絶対! メ! 浮気と同じくらい!」

 「…………」


 多少相手を疑えよ、ノア……ちょっと心配だぞ……。

 ま、まぁとりあえず、それはいったんおいておいて。


 「ま、まぁ話を戻すが、何かプレゼントでいいものが無いか?」

 「うーん……、あ! 手料理が!」

 「それは、タツヤがもう言ったぞ。 と言うか俺はほぼ毎日作っているぞ」


 うーむ……、結局若い女性だからといって、良い意見が出るわけでは無いんだな……。

 仕方ない、ここは自分で考えるしかないな。

 そう思った時の事であった。


 「甘い! コーさん甘い! 料理はただ食事を作るだじゃなくて、いつもと違う雰囲気で、そして珍しい料理を食べるだけでも大違い! だって、同じフランス料理を食べるのに、海辺のレストランで食べるのと、小さな店で食べるのとでは全然違うでしょ! コーさん!」

 「な!?」


 俺の体を雷が通り過ぎたような衝撃を受けた。

 た、確かに俺は、料理を作るしかしてこなくて、食べる時の雰囲気なんてあまり考えてこなかった。

 しかし、食べる時の雰囲気か……一体どうすれば良いのだろうか……。


 「ふっふっふ……、コーさんどうすれば良いか迷ってるね? 迷っちゃってる感じだよね? 迷走中だよね!」


 そんな俺の考えが顔に書いてあったのか、ノアはニヤニヤしながら俺を見る。

 と言うかだな、ノア。


 「だからお前、顔が近いんだよ……」

 「それは仕方ないよ~、その話題への興味がそれだけあるって事なんだから仕方ないよコーさん!」

 「ええい! だからって、顔を、近づけるな!」

 「熱くなるんだ! 熱くなるしかないんだ、コーさん! そして、高校三年生、略して高3!」

 「お前は、何を、言って、いるんだ!?」


 ええい、興味があるからって顔を近づけるなって、ホント意地悪しようとする子供じゃないんだから!

 そして俺とノアが顔を近づけ、俺が手でノアの顔を遠ざけるという攻防戦をしばらく繰り返した後、ノアは満足したのか。


 「っと冗談はこれくらいにして、とりあえずそれを勉強する為、私のおススメのレストランに行ってみようよコーさん!」


 っとにこやかな顔で俺に言うのであった。

 確かに行ってみて、学んだ方が良いだろうな。

 よし!


 「分かった、そのレストランに行ってみようか」

 「ちなみに、私も言った事無いから、いくらかかるかも知らないし、店内がどんな雰囲気か知らないけど、とりあえず行ってみようよコーさん! ちなみに支払いはコーさんでよろしく!」

 「バカ、俺はなるべく金は節約したいんだぞ! アカネのプレゼントの費用は余裕を持ってお行きたいからな」

 「冗談だって〜、ホントは言った事あるし、値段は一人分のセットメニューで2500円くらいのレストランだよ~。 でも支払いよろしく、コーさん!」

 「……分かったよ、お前にも意見を貰った訳だからな。 それ位は出そう」

 「やったー! タダ飯タダ飯〜!」


 まったく……、可愛い後輩だよ……。

 俺はピョンピョン跳ねて喜ぶノアの姿を見て微笑んだ。

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