愛と言う名の下に…… 3
「いらっしゃいませ」
さて、ノアの意見でレストランへとやって来た俺だが……。
「凄いな……」
俺は自然とそう口にしてしまった。
と言うのも、龍を模った像の口に加えられた『清一色』という文字の看板が印象的な外装。
内装は、やや薄暗い塗料を塗られた木が店内を覆い、その木に味を出す様に黄色のラインが木の壁を無造作にカクカクと走り模様を描く。
そんな店内を照らす中華風の店内の明かりは、その独特の雰囲気を醸し出す店内を優しく照らし、モダンな香り漂うテーブルと机は、より中華レストランらしさを醸し出しているのだろうか?
「どよコーさん、私のお気に入りの店は! とってもいい雰囲気でしょ、ふっふーん!」
そんな俺の驚く姿が嬉しかったのか、ノアは両手を腰に当てて胸を張り、嬉しそうな笑みを浮かべている。
しかし、ホント子供みたいだな。
素直で純粋で、そしていつも明るくて……。
「さぁコーさん、早く食べよう! 私、お腹すいちゃってるし! もう、お腹と背中がくっつきそうだし! 食べよう、食べようよコーさん! 店員さん、早く席に案内して! 早く早く〜」
「わ、分かりました!?」
訂正、もう少し大人らしく落ち着くべきだろうなノア……。
お前が大声出しながら手をブンブン振るから、店内の注目を集めているじゃないか……。
…………。
さて、店員に奥のテーブルへと案内された俺は、メニューを開くわけだが……。
「何だ……コレ……」
俺はその内容に言葉を失ってしまう。
と言うのも。
「コーさん、何で固まっているんです?」
「そりゃメニューが似た様なモノしかないからだよ……」
「何言ってるんです? 麻婆豆腐とか餃子とか色々あるじゃないですか?」
「お前には、それらの文字の前にある唐辛子たっぷりと言う文字が見えないのか?」
メニューに載っている全ての食べ物の前に、必ず唐辛子たっぷりの文字が付いているからだ。
しかも、メニューの写真はどれも唐辛子の山。
写真を見て、間違いはどこだ?と言われても、皿以外の違いが分からないレベルと言えば通じるだろう。
しかも、俺は唐辛子が苦手だ。
その、年のせいか辛い物を食べると胃に来ると言うか……、次の日、胃が締め付けれる様に痛くなるから食べたくないと言うかだな……。
さらに言えば、メニューの写真を見た瞬間、少し空腹だったお腹が一気に満腹になった。
それだけ、俺は辛い物を避けたいと言う訳だ。
だが、そんな俺の思いを知ってか知らずか、ノアの奴は。
「え? だってココ、唐辛子専門店だよ? だからどの料理も唐辛子がメインなんだよ?」
等と恐ろしい言葉を吐いてきた。
うーむ、胃の事を考えたら、食べない方が良いだろうな……。
なので俺は食べるのを断る為。
「すまないが、辛いモノは控えているんだ。 ノアだけ食べてくれ」
と俺は食べることを断ったのだが。
「大丈夫! 初めての方向けに、唐辛子控えめなアマチュアっていうのにお願いできるから、問題ないよ、コーさん!」
と熱く言うので、『あぁ量が少なくなるなら』と思い。
「そ、そうか……。 なら俺も注文するかな? すみません、チャーハンを一つ、アマチュアで……」
俺はノアの顔を立てて、アマチュアで食べてみることにしたのであった。
「すみませーん! 私、女性向けディナーセットのプロフェッショナルで!」
「……プロフェッショナルってなんだ?」
…………。
さて、10分程待ったところでテーブルに料理が運ばれてきたのだが……。
「おぉぉぉぉぉぉ! 美味しそう! いっただっきまーす、あ、コーさんゴチになりまーす!」
「何だコレは……」
目の前に運ばれてきたのは、唐辛子の山、そしてノアの様々な皿に乗った唐辛子の見本市……。
しかも、皿を見たら俺はアマチュアと言ったハズなのに、大して量が少ない様にも見えない、と言うか唐辛子の一番乗っているノアの皿と変わらない量が乗っている。
なので俺はノアに尋ねる、この恐るべき出来事について……。
「なぁノア……」
「ん? どしたのコーさん?」
「俺はアマチュアを頼んだはずなんだが、あんまり変わらなくないか?」
「へ? 違うよ辛さが」
「…………」
そう言えば、一言も量とは言ってなかったな、ただ唐辛子控えめなとしか言ってなかったな……。
ま、まぁアマチュアだから、大した辛さではないだろう。
そう思って、俺は静かに唐辛子を口に運んだのだが。
「辛い! 水!」
俺は辛さの余り、水を一気に飲むのであった。
し、しかしこれは食い物なのか!? 流石にこれは食べ物でないと……。
「うーん、美味しい! やっぱり唐辛子は最高だね!」
「…………」
俺は悟った。
ノアに聞いたのが間違いだったと……。
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