幼馴染は何年たっても素直でない B
幼馴染は何年たっても素直でない 4
「コータローさんってツンデレなんですか?」
「ん? 何でそう思うんだ?」
時刻は11時30分、休憩30分前。
パソコンとにらめっこしながら仕事をしていた俺に対し、好青年風の後輩タツヤが急に、そんな事を言うから一瞬、思考停止してしまった。
俺がツンデレ? ホントどうしてだよ?
「だってコータローさん、奥さんを色々愚痴を言いながらも、ケーキ買って帰ったり『アカネの奴、一人で大丈夫かな……』ってたまに呟いたりしているじゃないですか〜!」
「な! ば、バカ! 気のせいだ! 誰があんな猫みたいなじゃじゃ馬を……」
あ、あんな猫みたいに甘えん坊で、砂の弁当なんて変な物作ったり、素直に言葉で言えない奴のどこが可愛いんだか!
……その、確かにアイツは自分の感情を伝えるのが不器用な性格だが、ちょっと心配になる不器用さと言うか……あぁぁぁぁぁぁもう!
「コータローさん、頭を掻きむしってどうしたんです?」
「うるせぇ!」
あぁ、タツヤの奴め……余計な事を言うから、またアカネが気になって来たじゃないか、クソ……。
アカネの奴、風邪ひいて寝込んでいるけど大丈夫かな……、今日は遅くなるし、ちょっとな……。
…………。
プルルル、プルルル、プルルル……。
12時の休憩に入った途端、俺は会社の屋上へ向かい、急いで電話をかける。
別に心配とか、そんな訳じゃない!
ただ単純に、一人で寂しかろうから声をかけてやろうかなと言うか……何か結婚生活初めて甘えたがっている様子もあったから、ちょっと気遣いと言うか……お!
「もしもし、アカネ、大丈夫か?」
「ゲホゲホ……そう思うなら、僕の為に早く帰ってきてくれていいものじゃないかい……?」
「はぁ……、今日は外せない仕事なんだって言ってたじゃないか……」
「うっうっう……、僕は悲しい……ゲッホゲッホ、こんな冷たい夫を持って……。 ところで話は変わるが、君の作っておいてくれた鶏がらベースの卵がゆ、とても美味しかったよ……ゲッホ。 また別の日に食べたいのだが? ゲッホゲッホ……」
「わかったわかった。 また作ってやるからさ、ゆっくり寝てろよお前」
とりあえず、俺の心配……ではなく気遣いを返せと言ってやりたい訳だが、まぁその……とりあえずだな……。
「まぁ何だ……その、ちょっと元気な声が聞けて良かったぞ、アカネ……」
「い、今何てゲホッゲホ!? 僕、もう一度その言葉を聞きた……」
俺は電話を急いで切った。
ま、まったくアイツが寂しがっているかもしれないと思ったから……まぁサービスと言うかだな……。
全く、俺だってちょっと恥ずかしいんだぞ、アイツめ……。
「コータローさん、何胸押さえているんです?」
「!? お、お前いつから俺の背後にいたんだ!?」
「いや、今ちょうどですよ~。 ところで顔が真っ赤ですよ~? あ、なるほど〜もしかしてHな事を考えていたんですね! ダメですよ、そんな事を会社で考えていては……ぎゃん! な、何でいきなり殴るんですか!?」
「バカ、俺がそんな事考えている訳ないだろうが! お、お前はホントに失礼な奴だな……」
まったく多少は先輩を敬え、タツヤめ……。
だけど、よその夫婦の結婚生活ってどんな感じなのだろうか?
ちょっと、気になるな……。
「なぁタツヤ……」
「ん? 何すか、コータローさん?」
「お前とモミジの新婚生活ってどんな感じなんだ?」
「へ? モミジさんとの新婚生活っすか!? いや〜良いもんっすね~割と〜。 うちはモミジさんが愛読している『由緒正しい結婚の作法』てのがあってっすね……。 その中に書いてある重要な事は守ろうって二人のルールがあるんすよ~」
「ん? ルール?」
ん? 急にモジモジし出してどうしたんだ?
まさか、新婚生活って結構恥ずかしいモノなのか!?
ちょっと照れくさく思っている俺がおかしいのか!?
そして、少しの沈黙を置いて俺は学ぶことになる、新婚生活というものを……。
「えーっとっすね、『由緒正しい結婚の作法』によると、『真っ当な新婚はお出かけのチューをするものなのです!』という事で毎日熱いキスをし、『帰ったら妻の無事を確認する為、熱い抱擁をしながら、ベロチュー』と言うのがまず最低条件らしく……」
「そんなバカな!? 聞いたこと無いぞ、そんな作法!」
「いえ、これに書いてあるんです、ほら!」
そう言ってタツヤは懐からメモ帳程の大きさの本を取り出し俺に差し出す。
確かにタイトルには『由緒正しい結婚の作法』と書いてあるが、それ以上に気になったのは、本の帯に書かれた『これが出来なきゃ離婚危機!?』との文字。
……いやいやまさか……そんな訳が……。
…………。
「さぁ正解は、1番の『出かける前にキス』でした〜! 新婚の皆さん、しっかり行いましょうね! これが結婚の作法ですから!」
「新婚さんはですね~帰った時に熱い抱擁をすると、エンドフェルトミンb1が発生して、離婚率が激減すると言うデータがありましてね~……結婚の作法と言うのは正しいという事です!」
「さぁ新婚の皆さん! 今こそ結婚の作法を身に着けて、幸せな結婚生活を送りましょうね~」
そんな訳がありました……。
しかし、コレは一体どうなっているんだ……。
町中のテレビやラジオから飛び交う理解しがたい言葉が俺の耳に……。
俺って夫として失格なのか!?
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