夫達と妻達の時間 6

 まず、自分とモミジさんの出会いは、前の会社に自分が入社した時ですね。

 その時、仕事について教えてくれたのがモミジさんでした。

 正直、一目ぼれでしたね。

 頼れる美人で行動的で人を引っ張る、なんだか当時の自分の持っていないモノを持っている様で惹かれたのです。


 その頃の自分というのが、今と違って暗くてですね、一言も話さない日もある位、暗い人間でしたからね、真逆ですよモミジさんと。

 だから、当時好きって気持ちを声に出して言えなくってですね恥ずかしくて……。

 だからちょっと避けていた部分もあったんですよ。


 そうして何日か過ごしていたある日、モミジさんが自分の所にやってきて。


 「そうやって黙っていては、コミュニケーションも取れませんわよ! 殿方でしたらしっかり自己主張なさってはいかがかしら!」


 って怒られてしまいました。

 それが始まりだったと思います。

 そんなモジモジした自分をモミジさんは、優しく褒めてくれたり、時には注意してくれたりととても親切にしてもらいました。

 そして、そのおかげで以前にはなかった明るさと言うモノを手に入れられたのです。


 その頃になると、自分の思いをだいぶ話せるようになり、そろそろモミジさんを日ごろの感謝という事でデートに誘って、いずれ告白しようかな?なんて思い出した頃、セクハラ親父と有名な方が来ましてね、その方がモミジさんにセクハラをしだしたんですよ。

 その、普段だったら『止めましょう!』と言う所なんですけど、その方が社長の知り合いの方でしたので、どうしようか考えた末に、とりあえず止めるだけでもやってみようと思い、その方へと近寄って行ったのですが……。


 その、躓いて転びそうになって、最終的に殴ってしまったんですよね、その方の後頭部を……。

 そして、その、気を失ってしまわれまして……。


 まぁその後、モミジさんに『ちょ、ちょっといらっしゃい!」と腕を掴まれて居酒屋へと連れていかれましたよ、ちょっと頬を染めたモミジさんに……。

 そんな居酒屋の個室でモミジさんは。


 「ど、どうしましょう!? タツヤ、アナタが救ってくれたのは嬉しいですが、あぁこのままだとアナタがクビになりかねないですわ……。 あわわわわわわわ、どうしましょう……」


 珍しく冷静さを失って、動揺していましたね。

 ただ、その時思ったんです。

 やっぱり……って。

 それは不思議といつもとのギャップと言いますか……、その、姿って思ってしまったんです。

 だから、自分はビールを一気に飲んで、今まで言えなかった気持ちをモミジさんにぶつけました。


 「そ、その! 自分はココに入社した時からモミジさんが好きでした! でも当時は勇気がなくて自分は何もできませんでしたけど、今はモミジさんのおかげで堂々とした男になれました。 だからこそ言います! 俺と結婚を前提に付き合って下さい、そして、モミジさんを守らせてください!」


 ホント、あの時はもう、断られても良いって感じで言いました。

 今言えなければ、きっと一生言えないだろうと思ってですね……。

 そうしたら、モミジさんは照れながら。


 「ま、まぁワタクシを守ってくれたのですから……そ、それ位の褒美はあげないといけませんわね!? ま、まぁこれからもワタクシを守りなさい! その代わり、ワタクシがあなたを立派にしつけ、そして支えてあげますわ!」


 とokしてくれたのです。


 …………。


 「そして、それから1年ほど付き合って、僕から『モミジさん、結婚してください!』と告白して、それで晴れて結婚する事になったんです! ……ってもうこんな時間じゃないですか! そろそろ寝ません?」

 「む? 11時だし寝るか」


 そして俺たちはベッドに寝転がり、眠りにつくことにした。


 ……何だかんだ、互いに支え合ういい夫婦なのかもしれないな、タツヤの所は……。

 俺はふと天井を見ながらそう思う。


 昔話だが、数年前の9月にモミジが俺に急に電話してきて。


 『一人、その、タツヤって若者を何とか中途採用出来る様にお願いできませんか!? 出来れば、昔の事は聞かないで下さいな! 一生のお願いですの! それと、この件は本人には内緒でお願いしたいのです!』


 と言ってきたことがあったので、お義姉さんに無理にお願いしてタツヤを採用してもらった後に。


 「この恩は忘れませんわ、コータロー! 本当に感謝いたします!」


 なんて電話でお礼を言ってきた事があったが、今考えたら年上としてタツヤを支えようと陰ながら頑張っていたのかもしれないな、モミジは……。


 ……俺ももしかしたら、陰でアカネが支えてくれているかもしれないし、帰ったら新しい服を買いに行くか?と誘ってみるかな?

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