夫達と妻達の時間 おまけ

夫達と妻達の時間 おまけ

 「……とまぁ、この前の出張の時、タツヤと話したんだが、お前の所の馴れ初めってどうなんだ、タツヤ?」


 さて、コンビニで密林ポイントを購入しに向かっていた途中。


 《野生のサラリーマン、コータローが現れた》


 とエンカウント!

 そして、俺ちゃんの脳内に現れた選択肢が。


 ・go to ファミレス! ohhh!yessss!! な話をする男達。

 ・生贄アタック! 行け、アカネちゃん! 嫉妬による愛の雷だ!

 ・ザ副業トーク! 一万円が、またレインメーカードルに!

 ・にげる。 しかし、まわりこまれてしまった。


 の4つ。

 なので俺ちゃんは、ファミレスの選択肢を選んだ結果、姐さんとのohhh!yessss!!な馴れ初めの話をする事になったのである。

 しかし、こんなに興味を持っているであろう俺ちゃんファン(一名)の期待に応えない訳にはいきません。

 なので。


 「ふっふっふ、ならば聞くがいい! 俺様と姐さんの深く味わい深い馴れ初めの話を!」


 俺ちゃんはファン(一名)の期待に応えるべく熱く感動的な馴れ初めの話を始めるのであった。


 …………。


 あれは、熱い夏の事だった。

 俺ちゃんがガールハントの為に街をぶらぶらしていると、ワオ、クールな美女発見! それが姐さんとの出会いだった。

 そして俺は、迷わず。


 「お姉さーん、僕とデートしよーう!」


 と飛びかかった所。


 「変態、処刑……」


 俺ちゃんの顔面に強烈なストレートがめり込んだ。

 その時俺ちゃんは感じたね。


 「この痛み……超刺激的……プライスレス……」


 と……。


 …………。


 「それから俺ちゃんはナンパorストレートを食らうと言う贅沢な選択肢を楽しむべく、姐さんと出会う度に飛びかかったのさ!」

 「……誰がMへ目覚める馴れ初めを話せと言ったんだ、お前……」

 「おろ? そうだっけ?」


 おかしいな……感動的な話なのに、何でコータローは呆れた顔を……。

 だって、涙が出たんだぜ、殴られた時に俺ちゃんが!

 しかし、オーディエンス(一人)を満足させられなければ、おはよう下半身……否、変態的変人としての名折れかもしれない。

 となると。


 「仕方ない、今度こそ夏の様に熱く、そして刺激的なお話を提供しようじゃないか!」


 俺ちゃんはそう言って、素晴らしい話を始めるのであった。


 「……どうせくだらない話だろう、シン……」

 「し、失敬な! しっかり俺ちゃんの話は聞くもんだぜ!」


 …………。


 これは現在に至るまでの物語……。

 それは俺ちゃんが可愛い子を見つけるたびに発症する病気なんだが、最近この症状が悪化したんだ。

 それは、別に呪いを受けたとか、何かにとりつかれているとかそんなオカルトな話ではなく……。

 そう、現実の結婚男性が襲われる、恐怖の現代病の話……。


 …………。


 「そう! これは男として、可愛い女の子をナンパしないのは可愛い女の子に失礼! だから俺は積極的に可愛い子をナンパして……あ、そこのウェイトレスさん、君可愛いね~!」


 その時、俺ちゃんと可愛い子ちゃんの間を、包丁が回転しながら通り過ぎていき、椅子の背もたれに刺さる。

 そして、包丁の飛んできた方には、冷たい目線で睨みつける姐さんの姿があった。


 俺ちゃんはそんな光景を見て、固まっている様子のコータローに向けて、カッコいい顔つきを浮かべて、こう決め台詞を飛ばすのであった。


 「ふ……。 どうかねコータロー? 夏らしく熱く、刺激的なお話だっただろう? そして帰ったら俺ちゃんは、更にプライスレスな刺激を味わう事が出来るんだ……。 羨ましかろう?」

 「誰が夏のホラー並みに背筋が凍る話をしろと言った……? 第一、お前の話の内容が無意味過ぎてプライスレスだぞ……」

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