幼馴染は何年たっても素直でない 6

 「アカネ、タオルを持ってきたぞ」

 「……ゲホっゲホ、お帰り……」


 寝室へ戻ると、真っ赤に顔を染めたアカネが弱弱しい声で俺を出迎える。

 さて、とりあえず着替えとタオルを置いて、布団をどけてと……。


 「……アカネ、とりあえず汗を拭いて着替えろ。 風邪が悪化するかもしれないからな」

 「やって……」


 アカネは両手両足をベットを覆うように大きく伸ばし、寂しそうにそう一言。

 どうやら、着替えさせろと言っているらしい。

 ……仕方ない。


 「……アカネ、今日だけだぞ……」


 俺はそう言うと、アカネの横に座り、身体に纏うパジャマのボタンをはずし始める。

 上から、1つ、2つ、3つ……。

 アカネの若々しく綺麗な肌が露出していく。


 「……なぁ、コータロー……もっと近くで僕を見てくれ……」

 「何でだ?」

 「ゲホ……いいから……」

 「ん?」


 俺は言われたとおりに顔を近づける。

 アカネの奴一体どうしたと……。


 「んっ!?」

 「…………」


 アカネの両手は俺の頭を引き寄せ、そして唇が連結され、アカネの舌が潜りこみ、不意を突かれた俺の身体に電気が走り、頬が熱を持ち体が固まる。

 まるで、アカネの唾液と酸素を共有しているような……。

 そして。


 「ぷはっ……!」

 「……ゲホ……」


 アカネは満足したのか、両手を真っすぐ上に伸ばして、唇の連結を解き。


 「おかえり、コータロー……ゲホ……」

 「あ、あぁ……ただいま……」


 今更ながら、お帰りの会話を口にしたのだった。

 ……あぁ、まだ唇の感覚が……いや待て!


 「お前、何でこんなことをしたんだ?」


 いつものアカネなら、こんな事をしないハズだ。

 しかも、舌を口に入れる様な大胆な……。

 すると、アカネは咳をしながら。


 「スマホの動画で僕は見たんだ……、って、ゲホッゲホッゲホ……。 その動画の中で。 なら、熱いキスをすれば離婚する事も無くなると思って……ゲホッゲホッゲホ!」

 「お前な……」


 と弱弱しく答える。

 コイツは、熱で冷静さを欠いているのか、それとも頭がおかしくなったのか?

 と言うか、風邪が悪化しているんじゃないのか、ホントに……。

 ったくコイツはもう……。


 「いた! 病人に何をするんだい!」


 俺は軽くアカネの頭を叩くと。


 「病人らしく大人しくしてろ! 明日休みを取ったし、ゆっくり看護してやるからな」

 「コータロー……」


 微笑みながらアカネを見下ろした。

 しかし改めて思うが、アカネは可愛らしい。

 絶対に言うつもりは無いが、文句ない美女だと……。


 ピリリリ、ピリリリ、ピリリリ。


 電話が鳴る、が俺ではない。

 とすると。


 「ゲホ……ん? 誰からだろう……げ!? お姉ちゃんからだ……」


 やはりアカネのスマートフォンから。

 しかし、一体お義姉さんは何の用事なのだろう?

 やっぱり、アカネを心配してかけてきたのだろ……。


 「やっほ〜アカネちゃ〜ん! アカネちゃんの胸を自由に揉ませる権利、コーちゃんに渡しといてくれたかな~? いいとも〜って言ってくれるかな~? あ、ちなみにコーちゃんは許可してくれました!」


 いいえ、電話でした。

 そして静かに電話を切った


 「コータロー……」

 「お、お前……、俺は言ってないぞ、そんな事! と言うか寝てろアカネ、起きなくていいから」

 「…………」


 そして……。


 「この、この、この〜!」

 「いだだだだだだだだだ! か、噛むな、噛むなあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 起き上がったアカネは、思いっきり俺の首元に噛みつき、俺はその攻撃が終わるのをただ声を上げて待つしかなかった。


 …………。


 そして次の日。


 「ゲホッゲホッゲホ……」


 誤解は解けた、俺は風邪を引いた、そして。


 「ふっふっふ、これでしばらく僕と二人の時間が過ごせるな。 なに、家事は僕に任せておいてくれたまえ!」


 アカネは風邪が治った。

 あぁ、きっとあの時コイツとキスをしたから、うつったんだろうな……。

 でも、アカネの病気が治ったから良しとするか……。


 「ふふ、でも僕はまた病気になって寝込みたいね……。 だってそうなればだろうから……」

 「ゲホッゲホ……アカネ、何か言ったか?」

 「あぁ僕の独り言さ、気にしないでくれたまえ」

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