幼馴染は何年たっても素直でない 2

 「さて、どれを買ってみようか……む?」

 「あ……」


 コンビニに寄って、どれを買おうか迷っている僕は出会ってしまった。

 中学時代から知る不愉快な女に……。


 「何だいモミジ君、ここは僕が長年行きつけにしているコンビニなんだけどさ。 なのに君はどうしてここにいるんだい?」

 「あらあらアカネさん、ここはワタクシの行きつけでしてよ? アナタこそ、どうしてこのお気に入りのコンビニにいるのかしら?」

 「はっはっは、それは買い物の為に決まっているだろう? 僕が理由もなく行動したことがあったかな?」

 「おほほほほ、つまり胸が平凡だから、精力剤の力を借りないと、殿方と一戦交える事ができないと言う訳ですわね~」

 「はっはっは、そんな牛の様な乳を持っていながら、精力剤を買おうとする君ほどではないさ……」

 「「…………チッ!」」


 ……僕はこの蒼崎モミジが大嫌いだ。

 長い髪に偉く高飛車そうな目つき、そして僕より一回り大きな体に、無駄に豪華な服、それに下品な牛乳うしちちが……、あぁ僕はこの下品な牛乳が一番嫌いだ!

 なんだ、僕の胸が平凡的な大きさで何が悪いのか!?

 脳みそを胸に取られている癖に、全く実に不愉快な奴だ!


 「ふ、ふふ……。 僕は天才だからな、もっと彼に楽しんでもらう為にこういうモノをスタンバイしているんだ。 下品な乳に知性を持ってかれている君には考えも及ばない事だろう……」

 「お、おほほ……。 知性があっても、殿方に愛を感じさせられる胸が無ければ意味がないと思ってよ~。 あら、そう言えばあなたには、この愛の塊が無かったのだったわね、おほほほ、失礼〜」

 「あっはっはっはっは……。 巨乳なんて、年を取れば醜く垂れさがるだけだろう、

 「おほほほほ……。 胸が小さいと心も小さくなるのですわね……。 

 「「…………」」


 その時、僕の怒りは限界を超えた。

 僕は怒りに任せて、この下品な牛乳女の乳を掴むと。


 「何だ、僕の胸は小さくないぞ! それに君の下品な胸みたいに下品な性格で無い分マシだ!」

 「痛い痛い痛い!」


 容赦なくそれを引きちぎるつもりで思いっきり引っ張る。

 だけど。


 「この貧相な乳で一体何を言うのです!? これだから心に余裕の無い人間は……」

 「ギャーもげるもげる!」


 この下品な女は僕の程よい胸を思いっきり鷲掴みして離さない!

 ええい、この下品な女に正義の鉄槌を……。

 そんな時だった。


 「同類処刑」

 「「ぎゃ!」」


 メリメリという鈍い音と共に僕達の頭に走る痛み、それは頭部に指がめり込んだ為。

 そして、僕達の頭に指をめり込ませているであろう人物の、とても静かな声を聞いた時。


 「「氷菓ひょうか先輩ごめんなさい……」」


 僕達はただ、震えながら謝るしかなかった。


 …………。


 「原因、究明、回答、希望」


 雪代ゆきしろ氷菓先輩は中高同じ学校で、僕らより1歳上の先輩だ。

 白い長髪に、常に何を考えているのか分からない、ボーっとした雰囲気漂う青く大きな瞳。

 そしてスレンダーな体は、モミジよりも2回りほど高く、人間離れした身体能力を持っているから、片手で簡単にネックハンギングツリーする事も出来る。

 そう、今の僕らみたいに……。


 うんそうだね、僕は大切な夫がいるし……、ついでに

 だから。


 「げ・ん・い・ん!」

 「「コイツが先に喧嘩を売ってきました!」」


 僕は、青白く瞳を光らせて睨みつける氷菓先輩の怒りを、この牛乳女に押し付けるべく……この低知能の牛乳め、僕と同じ様に相手を指さして売ろうとするなんて、全く最低な奴!

 ふふふ、この牛乳め、今日こそ僕が貶めてやるからな……。


 「見てくださいこの牛乳を! こんな! 出来の良い僕とは違うんですよ!」

 「何をいっているのかしら〜、この僕っ子は。 全く貧相な胸だと心も貧相なのはこれで分かりましたよね、先輩! つまり胸が貧相だと心も貧相で哀れな人間だと証明できる事実なのです! そして逆に殿という事の証明に……」

 「はっはっは、乳に栄養が行き過ぎてのおバカ理論、片腹痛いのだが? もっと僕の様に、頭に栄養を送らないとな」

 「聞きましたか、この口の悪さ! ええワタクシの言っている事は間違いない……って先輩、自分の胸を見てどうなさ……あ……」


 ふふふ、氷菓先輩は僕以下の慎ましい胸。

 つまり僕の胸をバカにするという事は、先輩もバカにするという事なのだ。


 「モミジ、処刑……」

 「ぎゃ!」


 冷たい瞳を浮かべたまま、氷菓先輩はモミジにとどめをさした。

 愚かにも白目を向くモミジの顔、実に無様だな。

 やはり僕の様に知的でなければ……あれ、先輩……何で僕を睨んでいるんだい……?


 「アカネ、私より胸ある、でも私のシンへの愛、アカネ以上……」


 あれ、僕すっごく嫌な予感がするんだけど、あの牛乳女が言った余計な発言を気にしているのかな!?

 あれ、首を絞める力がドンドン強く……。


 「イコール、アカネ、処刑……」

 「ぐえ!」

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