幼馴染は何年たっても素直でない

幼馴染は何年たっても素直でない A

幼馴染は何年たっても素直でない 1

 結婚12日目の夕方、コータローが僕の弁当に不満を言った。

 だけど、僕がそんな弁当を作ってやったのは当然の事だった。


 「お前な、弁当作るんだったら作ってくれよ……」

 「僕は君に素敵な愛妻弁当を作ったというのに、何が不満なんだい?」

 「お前、あれを不満に思わない夫はいないぞ……」

 「不満だって!? それがあるのは僕の方だ! こんな素敵な美女である僕とのお風呂の時間より、洗濯を優先したじゃないか! 僕は寂しくて寂しくてお風呂で泣いていたんだよ!」

 「お前はまだいいよ! 俺なんてな、会社でお前のに『僕の大好きなトレジャーハンターへ、2500円埋まってます!』って書かれた紙と100円玉が25枚、そしてお前の下着姿の写真が埋まっていたあの弁当! 俺、お前に怒られるような事したっけ?って悩んだんだぞ!」


 確かに、僕は砂たっぷりの弁当にそんなメッセージを仕込み、100円玉をふんだんに埋めた弁当を作ったわけだが、これは僕の遊び心と愛をこめた渾身の作品なのだ。

 昨今、夫の弁当代は1000円ほどと聞くが、僕の愛はその倍以上はあるぞ!という主張を込めた力作だと言うのに……。


「頼むから、あんな弁当二度と作るなよ! 作るなら普通の弁当を作れって!」


 そんな思いもしらないコータローに、僕は怒鳴られてしまったのだった。

 むぅぅぅぅ……そんなに怒る事は無いではないか……。

 


 …………。


 次の日の4時。

 僕は頑張って早起きして、朝食を作ることにした、あぁ眠いなぁ……。

 だけど問題が一つある、それは。


 


 まぁでも、中高共に生徒会長をしていたし、勉強もスポーツも常にトップクラスの才女だった訳だし、まぁスマホでメニューを見ながら作れば最低限、弁当らしく作ることが出来るだろう!

 さて、コータローを驚かせるため、頑張るぞ~!


 …………。


 「……お前が作ろうとしたのは分かったが……」

 「すまない、冷蔵庫の食材を確認するべきだった……」

 「まぁ良いよ、今日はコンビニで弁当を買っていくから。 それじゃ、行ってくるぞ」

 「い、いってらっしゃい……」


 午前7時。

 僕はこの一軒家の玄関からコータローを見送りながら思った。

 冷静に考えれば、材料がなければ料理なんて作れないという事を……。

 だが落ち着くんだ僕、たった一度の失敗ではないか、人間失敗をするから成長が出来る、この失敗を糧にして成長すればいいのさ!

 だから今日の晩御飯づくりを頑張るとしよう!

 ……その前に、早起きして眠いからひと眠りしよう……。


 …………。


 ……うむむむ、11時過ぎとは僕も疲れていたのかな?

 ま、まぁともかく食材を買いに行こう!


 僕は、黒のTシャツ綿パンに着替え、軽自動車に乗るとスーパーへと向かう。

 ……情けない話だが、僕はコータローに家事を任せっきりだ。

 だからその、僕としてはそれでコータローの愛を感じられると思っていたのだけど、やっぱりそれでは満たされない。

 こう、、僕は。

 その『お前が居なければ生きていけない!』と言って抱きしめてくれたり、『休ませてくれ』とソファーに座る僕の膝に顔を埋めたりする、そういう身体と身体の触れ合いがあるスキンシップが欲しいのだ。

 その、やっぱり結婚したのに距離感があると寂しいと言うか……っとそろそろスーパーの駐車場だから、運転に意識を集中せねば……。


 さて、スーパーの駐車場に車を止めた僕は、3階建ての大型スーパータカムラへとやって来て、早速中に入ったわけだが……その、実は一人でスーパーに来るのは初めてなのだ。


 今までずっと実家暮らしでスーパーに行こうと思った事も無いしだな……、その、買いたいものがあってもコンビニに行って買っていたから、生活に不自由しなかったと言うか……。

 それ以前に、僕は何を作るべきなのだろう?

 その、出来れば彼が喜んでもらえたら嬉しいとは思うが、うーむ……そうだ!

 昔、彼女に作ってもらいたい料理のランキングで肉じゃががトップだった様な記憶がある、ならば肉じゃがを作るべきだろう!

 それに、余れば冷蔵庫に保存も出来るだろうし!


 そう決意した僕の行動は、実に手早かった。

 まず、スマホで肉じゃがの作り方を確認し、ニンジン、玉ねぎなどの食材を買うと、余計なモノは買わずにレジへ。

 そして会計がおわり、僕は車に乗って帰っていく。

 未来に待つ未知なる幸福にドキドキさせながら……。


 「む? 精力剤を買えば、を堪能できるかもしれないではないか! ふふ、これはコンビニに寄らねば……」

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