アカネの里帰り 6

 「つまり、俺の動きが気になって、散歩と偽って二人を連れ出し、俺を探していたと?」

 「…………」コクリ


 さて、一緒に家に帰り、ソファーに座る我に、源はそう言って確認をする。

 あの後、我はため息をつかれながら源に問いかけられ、遂にすべてを打ち明けた。

 だって我、源に嫌われたくないんだもん!

 何歳になったって我、嫌われたくないんだもん!


 「ぼ、僕はそんなドッキリ、ズルいと思うよ! ちょっとその、反則だ!」

 「アカネ、俺だってこういう事をお義姉さんが企んでいるって知らなかったんだぞ……」

 「ま、まぁただ……。 その、僕に悪いと言う気持ちがあるのなら、その、何かお詫びを受け取らない事もないんだけど?」


 そんな我の気も知らず、リビングのドアの前では頬を膨らませたアカネがコータローに文句を言っている。

 まったく、我が娘ながら世話が焼ける……。


 「ええい、アカネ、コータロー! おぬし達うるさいわ! 喧嘩するなら外で散歩でもしながらしてくるがよいわ!」

 「!? へん、言われなくたって散歩してきてやるんだ僕は! コータロー、行くよ!」

 「お、おいちょっと待てって!」


 そしてアカネに手を引っ張られ、コータローは部屋から出て行った。

 全くあのバカモノが、我に手をかけさせおって……。


 「まったく、あの子はやっぱりお前の子だな。 性格がよく似ている」

 「な!? ど、どこが似ておるのだ! わ、我の様に天才では無いぞ!」

 「そんな所だよ、まったく……」

 「な!?」


 わ、我に似ておるものか!?

 そ、その、我は少なくとも源には素直じゃし、あ、あ奴ほどはないつもりじゃけどのう!


 「ったく、アカ姉ちゃんの子供が出来た時、あの性格をした子供が生まれてくるだろうな」

 「ミオ〜アナタもその血を明らかに引いているからね~。 猫かぶりの血筋〜」

 「な!? あ、あたいの場合は先生から良い評価も貰う為にやっているからセーフだっての!」

 「でもミオ、お母さん知ってるからね~。 アナタ、同学年の松風君に好かれようとやっているって事を〜……」

 「うわわわわわわ! な、な、な、何で知って……、い、いや、一体何のことだか、アタシ分かんねぇんだけど!?」


 な!? に、似ておらんぞ、決してミオには似ておらぬぞ!

 だ、誰がどう見ても似ている訳が……。


 「血筋だな、みすゞ……」

 「そ、そ、そ、そんな訳……!? い、いや、一体何の事だか、我は分からぬぞ!?」

 「分かっているだろう、その様子だと……」

 「むぐぐ……」


 け、決して認めぬからな! 我は決して!


 「あ、お母さん。 もうすぐ強い雨が降るらしいんだけど、このままだとコーちゃんとアカネちゃん、びしょ濡れになっちゃうけど?」

 「……まぁ風邪をひかぬ事を願うしかないじゃろ、イツカ……」


 …………。


 そして次の日、偉大なる我の誕生日の日!


 「「「ハッピーバースデー」」」


 我を崇め、祝う者達の姿を見て、我は超ご機嫌じゃ!

 まぁそれ以上に嬉しいのは。


 「みすゞ、プレゼントだ」


 愛する夫からのプレゼントなのじゃが……。

 ま、まぁ大変嬉しいのじゃが、ここで笑みを浮かべたら我の威厳にかかわるし、まぁここは子供達の前でもあるし。


 「ふ、ふん! し、仕方ないから受け取ってやる!」


 こうやって威厳を保たなければならぬ!

 や、やっぱり甘えるのは夫の前だけじゃし〜、ふ、ふふふ、ふふふふふ……。

 し、しかし一体何をくれたのじゃろう?

 我は楽しみにしながら、夫から渡された細長い箱を開ける。

 すると。


 「な、なんじゃと!?」


 その中には、サファイアが付いた、シンプルながら素敵な銀のネックレス。

 そして、源の奴は。


 「相談したり考えたりした結果、お前に似合うモノと思って買ったんだ、昔から変わらず綺麗で、自慢の妻であるお前にはこれが良いだろうかと考えた末にだな……。 気に入らなかったらすまん……」


 珍しく少し申し訳なさそうな表情を浮かべて、我に言った。

 ……まったく昔から不器用な奴め……。


 「ま、まぁ良い物じゃし、受け取っておくことにしよう!」


 ふん、まぁたまには気を使って、己を抑えてやるのも良いものじゃろう。

 ま、まぁでも、口では言わぬが感謝はするぞ、源よ!


 「あ、母さんが、プレゼントのネックレスがとても嬉しかったのか、口が笑っている……。 コータロー大変だ。 僕の経験からすると、天変地異の前触れだよ、コレは……」

 「な!? わ、笑っておらぬわ、バカモノ! ふ、ふんだ!」

 「「「あははははははは……」」」


 ええい、アカネめ……、余計な事を言いおってからに……。

 ええい、まったく、まったく……。

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