アカネの里帰り C
アカネの里帰り 5
たまに我は思う。
ゲンの奴は我と結婚して良かったと思っておるのだろうか?と。
確かにゲンは我の誕生日を仕事という事で祝わず、ずっと過ごしてきたが、何だかんだ我を気遣ってくれているのは分かるのだ。
だって我、天才じゃもの!
いくらポーカーフェイスを気取っておいても夫の考え位読める!
じゃけど……。
「我……寂しい……」
その、娘たちが小さかった頃は良かったんじゃよ……。
素直で可愛らしくて『お母さま、天才!』『お母さま、素敵!』っと言ってくれておったのじゃから……。
なのに、最近の娘たちときたら……。
『コータロー大好き! あ、母さんどうでもいい』
アカネはそう言って、我を尊敬してくれないし。
『いやー母さん。 肉の入ってないチンジャオロースってチンジャオロースって言うのかな? 金がない時はいうのだろうけどさ~』
等とよく分からない事を言ってくるし……。
それでもって、孫のミオに至っては。
『ばーちゃんの孫らしく、猫被っていただけ!』
なんていう始末じゃし……。
もう、そろいも揃って可愛げがないのう!
……こういう時は、夫の胸に飛び込んで甘えてみるかのう!
…………。
「な、何じゃと!? 源の奴は出かけておるじゃと!?」
「へえ、ボスは今、奥様のプレゼントを買いに……」
「な、何と!? あ! べ、別に今更プレゼントだなんて嬉しくなんてないからのう!」
「いえ、あっしは何も言ってませんが……」
「ま、まぁ良いわ! 労働に励むのじゃぞ!」
「へい!」
我は、従業員のマモルにの事実を聞くと、レストランのキッチンから歓談を上がり、3階のリビングのソファーに座った。
何という事じゃ……。
結婚して初めて、源の奴が我にプレゼントを渡そうとしているじゃと……。
こ、これは夢ではないのか!?
だってあの、仕事第一の源の奴がじゃぞ、仕事の時間に我への買い物へ行くのだから、へ!?
い、いかんぞ! 年甲斐もなく、我は体はムズムズ、顔はニヤニヤ、それを抑えきれぬ様になってきておるぞ~。
ええい、我慢は毒じゃ! ここは素直に、右手を伸ばして、ジャンプして、そして。
「いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」グキッ!
「ぎゃあぁぁぁ腰があぁぁぁぁぁ!」
我の腰が、腰があぁぁぁぁぁぁぁぁ!
…………。
「何で僕たちが母さんを支えて、散歩に行かなきゃいけないんだい……」
「そりゃあたいも納得。 まったく、ばあちゃんも年甲斐もなくはしゃぐから……。 そんな喜ぶことがあったのか?」
「べ、別に嬉しい事など無かったわい! た、ただ単純に運動したくなったからというかのう……」
「僕は思うんだ。 いやっほぉぉぉぉぉぉ!って言う運動なんかあったかなって?」
「あたいも知りたいね、いやっほぉぉぉぉぉ!なんて言う運動を……」
「あ、あるものはあるんじゃ! それより、ちゃんと我の体を支えぬか!」
まったく、我に対する思いやりがホントに無い連中じゃな!
我は散歩と言う名目で源の奴を探してやろうとしておるのに、この連中ときたら失礼な事ばかり言いおって!
まぁしかし、何だかんだ我が孫はいい奴じゃな、我の左腕を首を通して優しく支えておるからのう。
それに比べアカネの奴はダメじゃな。
何と言うか、身長が足りないから、支えてもらっていると言うか右腕でアカネを掴んでいると言う気分になってしまっておるし、まったく……。
「あら、ご家族でお出かけですか?」
い、いかん! 近所に住む主婦の松本さんじゃ!
これは急いで誤魔化さねば!
「お、お出かけと言うよりその……!」
「あ、あの! うちの母が散策がてらに出たいと言いまして」
「そ、そうです! なのでアカネお姉さんとみすゞおばあちゃんの3人で散歩に出た訳です!」
「あらまぁ〜、3家族仲睦まじくて羨ましい事ですね~」
「「「いえいえ〜」」」
「ふふ、では私は急ぎの用事があるのでこれで。 いすゞさん、それではまた〜」
そして我は、笑顔で手を振りながら去っていく松本さんに向け、我は笑顔で首をコクリと下げ、見送った。
ふぅ、何とか誤魔化せたのう……しかし。
「お主らバカじゃろ! どこの世界に体を支えられて散歩するバカがどこにいると言うんじゃ!?」
「ここにいるじゃないか、僕の隣に! 僕の母親が!」
「まぁでも、あたいも無いと思うわ。 アカねーちゃんの散歩って言い訳は……」
「そう言うならミオも、先にまともなフォローをしても良いじゃろうが……」
「それは、あたいが考えるより先にアカねーちゃんが言ったからじゃん!」
「でも、時間をかけたら不振に思われるでしょ、僕らが!」
全くこ奴らときたら……。
でも、こういう時間も久々かもしれんのう……。
いや、贅沢な願いじゃが、こんな時間が永遠に続いてくれれば……。
「ん、お前たち。 一体何をやってるんだ?」
「な? 源! それに主たちどうして!?」
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