休日に幼馴染とデートを! 4

 俺は今、自分の精神の中で激戦を繰り広げている。

 その、正直、アカネの傍にいるだけで何故かドキドキが止まらない。

 それは近寄るごとに激しくなる不思議な感覚。


 と言うかヤバいんだよ理性が……。

 始めは我慢できたのに、何か時間を追うごとにドンドンヤバくなっていっているんだよ、もう理性が爆発しそうなんだよ、何故だか今日は……。


 ただ、アカネがトイレに行ったこの時間に、すり減らされた理性を回復しなければ、己に負けてしまう。

 その、欲望に任せてアイツを傷つけたくないし、それにまぁ、アレでも俺の妻である訳だし、その、俺は……あぁぁぁぁぁクソ!

 とにかく、口にしたくないが

 だから、どうにかして……ん? つまようじ? そうか!

 俺は、起死回生の手を思いつき、俺はつまようじと言う聖剣を右手に取り、戦いへと赴く準備を済ませた。


 …………。


 「戻ったよコータロー。 寂しくはなかったかい?」

 「誰が寂しいものか、誰が……あ!」


 アカネが扉を開けて戻ってきた瞬間、突如俺の心臓を鷲掴みされたような感覚が俺を襲った。

 顔が勝手に火照る、胸の鼓動が熱くなる、そしてそれが全身に伝わって体の熱が暴走している!

 まずい、このままでは俺の理性は壊れてしまう、こうなったら……こうだ!


 「……う!」

 「ん? どうしたんだい、コータロー?」

 「……いや、何でもない!」

 「な、何だが辛そうに見え……」

 「何でもない!」

 「そ、そうか……そうならいいんだ、僕は……」


 俺はつまようじを自身の太ももに思いっきり刺した。

 残念だったな俺の中の獣よ……。

 俺はこの目の前に座るコイツアカネが大切なんだ、だからお前が表にでる暇は絶対与えねぇ!


 「と、ところで僕はまた飲み物を注文しようと思っているのだが?」

 「お前、ウーロン茶が残っているだろう? 気分が変わったのか?」

 「いや、喉も乾いているからウーロン茶は直ぐに飲み干すさ、だから早めにと思ってね」

 「なるほど……」


 よし、気持ちも落ち着いた、だがまた体温が高まろうとしているのは分かる。

 このまま警戒して、危なくなったらつまようじを刺す、そしてなるべくアカネに近づかない、これで一日なんとか……。


 「なら僕は、スクリュードライバーっと……」

 「!?」


 これは緊急事態だと俺の脳が警告を鳴らす。

 急いで注文を止めねば!


 「あ、アカネ! 注文を待て!」

 「え? 僕注文しちゃったけど、何か追加注文をするのかい?」

 「い、いや……それなら良いんだ……」


 俺はこの予想外の事態に、伸ばした右手がゆっくりと足元に止まる。

 マズい、非常にまずい……。

 アカネは酒に弱く、辛み酒、しかもその記憶をしっかり覚えているタイプだから非常にマズい……。

 そう、特にマズいのは辛み酒、今の状況で近くに寄られたら理性が勝るとは断言できない。

 となれば……。


 「ん、アカネ、左肩にホコリが……」

 「へ、僕のにかい? えーっと、取れた?」

 「あぁ取れたぞ」


 俺はそんな嘘をつき、アカネが肩を手で祓う動作をする間に、俺はつまようじを二刀流にした。

 こうでもしないと体がもたないだろう、また体が熱くなってきたし……。

 そう思った時だった。


 「お待たせしました〜スクリュードライバーです」

 「ふふ、ありがとう!」


 悪魔の飲み物が俺の目の前に置かれ、アカネはご機嫌な顔で店員へ言葉をかける。

 さて、ここからが勝負だ。

 そう、それは自分の理性との最後の戦いなのだから……。


 …………。


 「ふふ……コータロー……、寂しいんだ……」

 「そ、そうか……」

 「だから僕は、君の妻なのだからさ、ふふ……」

 「あぁ……」

 「分かるだろ? ねぇ……」

 「…………」


 俺の左手が激しく上下する。

 それは俺の左太ももにつまようじを突き刺すため。

 この酔って妖艶さを纏ったアカネは隣に座って、俺の肩にうっかかり、子猫のように甘えた声で、俺を見上げる。

 正直マズい、これ以上はマズい……。

 この16連打に負けない程の速度の突き刺しが無ければ、俺の理性がヤバい!

 絶対に負けられない、コイツの為にも!

 そして……。


 「僕……少し……スーー……」


 やっと脅威は去った。

 アカネはアルコールが体中に回ったらしく、遂に眠ったらしい。

 後は会計まで……まで? コイツを運ばねばいけないじゃないか!?

 ええいクソ! 仕方ない!

 俺は覚悟を決め、アカネをおぶると室内を出て行った。

 絶対にアカネを襲わない為、歯で頬を強く噛みながら……。

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