休日に幼馴染とデートを! C

休日に幼馴染とデートを! 5

 僕は今、大変不機嫌だ……。

 せっかく眠ったふりまでをしたのに、結局コータローに全く効果が無く、コータローの背中におぶられると言う物足りない結果に終わった。

 あぁきっと、あの『獣たちの挽歌』と言う香水はインチキで、僕は騙されたに違いない!

 ホント、一体何なんだい!

 何が婚活必須アイテムなんだ、インターネットの嘘つき!


 「あらあら、こんな時間から寝てしまっているなんて、お子様ですわね~?」

 「あ!?」


 実に不愉快な声が僕の耳に入る。

 あぁ聞き間違えないさ、間違いなくあの女だ……。

 だが、だが……ホントに飲みすぎたかな……、眠気が……ちょっと……。


 …………。


 何だか、お腹が減った感じだが、どこか胸が思い……不思議な感覚……。

 あぁきっと、空腹と酔いによる気持ち悪さが体中を駆け巡っているのだろうか?

 まぁそう言う前にだ……。


 「うぅ……」


 僕は急いで起き上がると、口を押えてトイレに駆け込む、そして……。


 「おえぇぇぇぇぇぇ……」


 僕はトイレに吐き出した。

 あぁ酒が残っているのか、ちょっと、ぐあい、わるいよ……うぅ……。


 「ん? 起きたのか? と言うか大丈夫か、お前? ウコンを買ってあるから持ってくるぞ?」


 僕の足音で気が付いたのかコータローがいつの間にか僕の後ろから声をかける。

 だ、だけど出来れば僕に構ってくれたら……、そうだ!


 「大丈夫な訳が無いだろう僕が! それにこれはきっとアレだ、なんだ!」

 「お、お前! ま、ま、ま、まだ妊娠してないのだから、つ、つ、つ、つわりな訳が無いだろう!」

 「な、な、な、何で動揺しているんだい!? ま、ま、ま、まさか、心当たりでも、あ、あ、あるのかい!?」

 「お、お、お、お前がいきなりとんでもない事を口づさむからだ! こ、このバカ!?」

 「ぼ、ぼ、ぼ、僕のお茶目に決まっているじゃないか! 動揺することないじゃないか!?」

 「う、うるさいぞお前!」


 結果互いに動揺し合う僕ら。

 ……冷静に考えたら、今の僕って結構幸せだよね。

 何だかんだ、コータローに構ってもらえているのだから。

 まぁ、それなら僕は次の段階へと進んでくれても良いと思うのだけどさ、それはテレパシーとして届くことを願う!

 その前に。


 「ゴメン、やっぱりウコンを持ってきてくれないかい……?」

 「わ、分かった! ちょ、ちょっと待ってろ!」


 僕がそうお願いすると、コータローは急いでウコンを取りに行ってくれた。

 コータロー、口には出さないけどいつもありがとう、君はホント素敵な……あ、また吐きそう……。


 …………。


 「や、やっと落ち着いた……」


 さて、やっと吐き気が収まり、下のリビングへ降りてきた僕を。


 「ほら、晩ご飯だ!」


 コータローのご飯が出迎えてくれた。

 しかもコレは。


 「鶏ガラスープのお粥じゃないか、僕の為に作ってくれたのかい?」


 そう、最近の僕のお気に入り料理の鶏がら卵がゆ!

 も、もしやコータロー、僕をそんなに……。


 「まぁ何だ、そんな状態だし消化にいいものをと思って作ってみたんだ、あと昼間は肉だったから、夜はヘルシーに行くべきかな?と思ってな。 ついでに食欲増進を含めて、ニンニクも細かくして入れておいたぞ! なに、その後の匂いケアに牛乳なども用意してある、安心しろ!」

 「あはは。 そうなんだね、嬉しいよ僕は……」


 僕を労わってくれているのは嬉しいけど、何か思ってたのと違う……。

 その、嬉しいは嬉しいのだけど、出来るのならもう少し僕に愛情ある感じの雰囲気を匂わせてほしいと言うか……。

 僕は贅沢を想像しすぎだな、ちょっと。


 さてと、それはそうと、お粥はとても美味しそうだ!

 早速食べるとしよう!


 「いただきま〜す!」


 ……普通に美味しい!

 口の中に広がるスープの濃厚さ、そしてじっくりコトコト煮込んだ事によって、スッと口に入っていくお米、たまらなく美味しい!

 しかも、よく見れば半口サイズの鳥ムネ肉が入っているではないか、しかもとても柔らかい!

 あぁ僕は幸せだ、昼は大好きな焼き肉を食べ、夜は大好きな鶏ガラスープのお粥を食べれたのだから……。


 「美味しいか?」

 「モグモグ……僕が美味しくなさそうに食べているかい?」

 「いや、聞く必要も無かったな、その表情を見れば……」


 いや、僕は贅沢だな、こんな素敵な旦那がいるのだから……。


 


 ふふ、流石にそれは恥ずかしいから口にできないけどね、僕は……。

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