休日に幼馴染とデートを!

休日に幼馴染とデートを! A

休日に幼馴染とデートを! 1

 「土日が休みになったんだが、どこか行くか?」

 「なら僕は、いつもの店の焼き肉を食べに行きたい!」


 そんな言葉を交わしたのが、ほんの一週間前の事。

 そして曇りによってやや熱さが抑えられた今日、僕はデートの為にそろえた物を纏っている。

 服装は紺色のデニムに、白のシャツと見た目はシンプル、ただし服が透ける事を計算して、あえてセクシーな下着を来てアピールしている。

 そして今回『獣たちの挽歌』と言う香水をインターネットにて2万円で購入し、体中に振りかけている。


 一見、細長い形で頼りなく感じる量だが、効果は抜群だ。

 この香水に使われる、エストラマリスと言う成分が女性の微弱な汗と結びつき、特殊なフェロモンへと変質、そしてそれを嗅いだ異性は、ムラムラと興奮してしまう。

 その為、別名とも呼ばれ、今時の婚活必見アイテムと言われる今時女子の秘密兵器なのだ。


 つまり僕の思惑は、この異性をムラムラさせる効果がある香水の匂いを使って、コータローが僕を襲うように仕向け、後はホテルでピンクの高い声と初心な演技でコータローを興奮させて……ふっふっふ……。

 あぁ僕の計画は完璧だ……。

 これで今日、僕はコータローからの熱い熱い愛を、この身体に受け取ることになるのだろうなぁ……。

 さぁそろそろ出発の10時、早くコータローの元へ行かなければ!


 …………。


 「コータローさん、ホントありがとうございます! せっかくの休日なのにご一緒させてもらって……」

 「ホント、申し訳ないですわコータロー……、車が壊れなければこの様なご迷惑をおかけする事はなかったのですが……」

 「まぁ、感謝は仕事で返せよ、タツヤ。 モミジ、タツヤを大切にしろよ!」

 「い、言われるまでもありませんの! タツヤ、私の為に、感謝いたしますわよ……」

 「いいですよ、モミジさん……。 大好きなモミジさんの為なら当然……」

 「タツヤ……あなたったら……」

 「モミジさん……」


 どうしてこうなった……。

 何で牛乳女のモミジとそのオマケのタツヤが車の後ろに二人仲良くイチャイチャして座っているんだい?

 とても不愉快なんだけどさ、僕にイチャイチャ見せつけないでくれないかな?

 ホントに、ホントに……。


 「あら、胸の小さなアカネさんは、不機嫌そうな顔だ事……。 怒ると茜色に染まるから、アカネって名前なのかしら〜」


 ムカッ!

 牛乳女のくせに、僕の後ろから挑発するなんて……。

 しかも、なんかイチャイチャしちゃってたしさ……許されないよね、絶対コレは……。


 「おやおや、下品な牛乳のモミジ君は牧場へ行くのかい? ならば、君の為に歌を歌おうではないか! ドナドナドーナードーナ〜……」


 ふん、僕とコータローの二人の時間をぶち壊した罰だ!

 全くこの牛乳女め、ホント空気が読めない奴……。

 その時だった。

 コータローが人気の無い道に入って車を止め。


 「アカネ……」


 頬を赤く染めたコータローが僕の顔を覗き込む。

 も、もしやココで!? ここでなのかい!?

 い、いやその……流石に屋外は恥ずかしいって言うか、その茂みの中でどうかと言うか……だけどこの牛乳女達に、僕らの愛を見せつけられると言うか……。

 でもでも、コータローがそうしたいなら、僕は妻として背中を押してあげるべきなのだろうか? いや、羞恥心を捨てて。

 だから僕はコータローに囁くように言ってあげるのだった。


 「ふふ……君のしたい様にすればいいさ……。 僕は君の思いを受け入れてみせる……」

 「アカネ、良いのか?」

 「だって、僕らは夫婦だろう? そ、それに僕だって……」

 「そうか……、すまないアカネ。 ではドビラを開けて……」


 そして、コータローは微笑み、僕にそう告げる。

 あぁ、僕は覚悟が出来た。

 恥を捨て、君の全てを受け入れ、そして完全に君の女になる事を……。

 ふふ、コータロー……、君色の染まるのが僕は楽しみだよ……。


 …………。


 「悪いな、タツヤ。 左側で喧嘩されると車が揺れるからな」

 「いえいえ、コータローさん。 揺れると運転しずらいですからね、分かりますよ」

 「「…………」」


 どうしてこうなった……。

 何で僕、後ろの席なんだい?

 何で僕、牛乳女と隣り合わせなんだい?

 何で僕、助手席の後ろなんだい?

 さっきまで隣り合って座っていたのに何で……。


 「……何でワタクシがあなたと隣同士で座らなければいけないのかしら? しかもタツヤと対角線上だなんて、ホント我慢なりませんわ……」

 「……それは僕もだよ。 何で僕は君みたいな女と仲良く隣通しに座らなきゃいけないんだい? 全く君の下品さがうつってしまいそうだ……」

 「あら、ワタクシに喧嘩売ってらっしゃるかしら……」

 「それは僕ではなく君だろう……」


 そして僕らは当然、互いの頬や胸を引っ張って喧嘩するハメになった。

 全く、この下品な乳の疫病神め……。


 「コータローさん、後ろが喧嘩を……」

 「ほっとけ、昔からこうだからな……」

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