愛と言う名の下に…… 10
「何……?」
「ね、姐さん! 俺、浮気してないって! 悪い事してないって! それはマジだからさ、だから俺を引きずらないで! ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「処刑は……話を聞いた後……」
「だ、だから誤解だぁぁぁぁぁぁぁ! 俺は姐さんの目を盗んでは、仲間達と一緒にキャバクラのお姉ちゃんたちと定期的に、あ……。 そ、その、お姉さんたちと情報交換を……ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ頭が割れるぅぅぅぅぅぅぅ!」
さて、数十分してタツヤ達の家に到着した氷菓先輩は、非常に不機嫌そうな顔でシンの頭を鷲掴みしてやって来た。
まったくコイツめ……。
「先輩、手短に説明しますと、アカネが誤解から家出したのですわ。 それでその行方を捜すために、その男の力が必要なのです」
「理由……」
「その男は、キャバクラに行ったりと無駄に顔が広いですから、ここはその顔の広さを生かしてアカネを探す方が一番ですわよ!」
「納得……」
そうか! コイツ色々飲みに行って顔も広いだろうし、もしかしたら!
「ふっふっふ……やっと俺ちゃんの時代が来たわけだね! 泥船に乗ったつもりでまっかせなさーい!」
そして、シンは俺に向けて右手を伸ばす!
……ん? いったい何なんだ? 何を考えているんだ?
俺が首を傾げてシンを見ていると。
「YOU、アカネちゃんの顔写真を送っちゃいなYO!」
と言ってきた。
なるほど、確かにアカネの顔が分からなければ、情報を集められないよな。
……でも、それは非常に困った……。
だって、その……。
「……持ってない」
「「「「は!?」」」」
「その……俺は、だな……、アカネの写真、取ってないんだ……」
「「「「はい!?」」」」
そんな俺のカミングアウトが、他の四人の呆れた目線を集め、そして。
「こ、コータローさん、それは嘘でしょ!? 流石に写真の一枚くらい……」
「そ、そうですわコータロー! ワタクシなんて、タツヤとイチャイチャしている写真だけでも、もう数えきれないほどで……」
「夫婦の写真、持ってるの、普通」
「いや姐さん、それは俺ちゃんを観覧車してる時の写真……って言うか、いつ取ったのよ?」
そんな言葉を俺に向けてきている。
だ、だが俺にだって理由はある!
「だ、だが! ちょっと、その……、無かったんだ、写真を撮るって考えが頭に……」
「「「「…………」」」」
その、恥ずかしながらだが……。
そして、四人は俺に向けてため息をつくと。
「まったく、バカではないのかしら? ワタクシも呆れますわよ?」
「だけど、コータローさんらしいと言えば、コータローさんらしいかも?」
「ふふ、バカ……」
「だから俺ちゃんの様に、可愛い子ちゃんを手当たり次第ナンパする位の男気がないと……く、首が……苦しい、姐さん……」
そんな事を言って俺に微笑みかけた。
だけど、何故だかそれはとても心地の良い不思議なモノで、不思議と俺の心の癒しになった気がした。
「ふふ……」
俺は笑みを零す。
「ふふ! ほら、さっさとあの貧相なアカネを探しますわよ!」
「そうっスよ、コータローさん! 早く探してあげないと!」
「俺ちゃんも力を貸すんだから、カモンカモン!」
そして、そんな笑顔を見たからなのか、三人は俺にそんな言葉をかけてきてくれた。
俺は改めて思う。
友達や仲間の大切さと言うか、ありがたみと言うか……。
「探す前に、写真……」
「「「「ああ!?」」」」
そ、そう言えばアカネの写真が無いのを忘れてしまっていた!
そ、それが無いとアカネを探す事は……。
「写真があるかもしれない! ちょっとうちに来てくれ!」
俺はある事を思い出し、皆を家へと呼ぶことにした。
…………。
「痴女……」
「うんうん、俺ちゃん痴女は良いと思うよ、だってエロいから! という事で俺はこの写真をお持ち帰りして……いだだだだだだ、姐さん腕を抓らないで!」
「モミジさん、正直アカネさんがこんな人だったと思わなかったですよ……」
「わ、ワタクシも驚いていますわ……。 外では純情派ぶっている癖に、実はこっそり……。 ……いや、あの香水をつけていたりした以上、純情と思い込んでいる痴女だったのかもしれませんわね……」
俺が見つけた写真を見て、四人はそんな感想を漏らす。
その写真と言うのが、以前アカネが俺の為に用意してくれた砂たっぷりの弁当箱に25枚の100円玉と共に入っていたアカネの下着姿の写真。
今考えてみれば、アカネの奴、結構積極的だったんだなぁと考えさせられる。
あ、その前に……。
「シン、お前顔だけ写せよ。 下着は写すなよ!」
「俺ちゃん、常任理事国の権限を利用して断ります!」
「氷菓先輩、こいつ人の妻の下着姿をスマホに保存しようとしてますよ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ! 嘘、嘘だって! 俺ちゃん流石にそこまでしないってばよ~」
シンのバカにアカネの下着姿を取られるわけにはいかないな。
まぁ、その……、何か嫌だから……。
…………。
アカネを見つけるまで意外と時間はかからなかった。
「キャバクラで働いている子が、アカネちゃんらしき子がランディーノってホテルに入っていくのを見たって。 なんか、妙にフラフラした感じだから印象的だったってさ」
「そうか、すまない! いずれ借りは返す!」
俺はそれを聞くと、スマホ片手にホテルへとタクシーで向かった。
そして、ホテルに着いた俺は、受付に。
「すみません、ここに家出した私の妻が止まっているらしいのですけど、あ、妻の名は真島アカネと言いまして……、その私が誤解を生む行動をしてしまったから家出してしまったので、その誤解を解く為お話したいのです」
と言うと、受付は「少々お待ちください」と言って何かを確認した後。
「す、少しお待ちください! ……もしもし、あの、どう対応すれば分からない事がありまして……」
と若い男性は言って、電話をかける。
そして数分後、その上司らしき初老の男がやってきて。
「お話は伺いました。 ですが、セキュリティ上の理由もありまして、お部屋まで案内する事が出来ません。 なので、お部屋の方にお電話して、こちらにお呼びする形を取りますが、それでよろしいですか?」
と言ってきた。
確かに相手の言い分も分かるし、向こうが譲歩してくれているのも分かる。
だから相手の提案に乗る方が良いだろう。
そう思った俺は、その初老の男性に。
「すみませんが、お願いします!」
とお願いしたところ。
「少々お待ちください」
と言って電話をかけ始めた。
そして、俺はそんな受付の電話をかける姿を見ながら、心の中で叫ぶ。
アカネ……頼む、来てくれ……!
俺は……お前を……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます