第3話
「これより鑑定の儀を執り行います。陛下、御準備は宜しかったですか?」
鑑定の儀とは産まれてから1年後に行う儀式だ。
ただ単に能力やスキルを見るだけだったら、産まれたときに行えばよいが、ここミルフェルト国の王家では、1年後の鑑定の儀までの間の能力調査はしてはならないこととなっている。
で、鑑定の儀の内容は何故産まれてから1年後に行うか?
それは一般常識の本に載っていた。
今のところアルトが知りたい内容はすべて記載されていた。
正に俺が神書と名前を改めて付けただけの事はある。
で、俺はまだ産まれて本日で一年だ。
まだ一歳だ。まだ赤ちゃんだ。
そんな俺に対し…いや、仕来たりなら王族は皆通った道か……。
まぢかぁ~!どうやらこの世界は王族の赤ん坊に世知辛いようだ。
「うむ」
カインド王は進行役の宰相に言われ返事をするが、その様子は不安だと回りが分かるような状態だ。
(カインド王、シャキッとしてくださいな。下の者に示しがつきませんわ)
隣で鑑定の儀で進行役の宰相の女性が小声でカインド王に言う。
(うっ…だが、大丈夫なのか?本当に?)
カインド王も宰相に自信なさげに答える。
(大丈夫ですわ!ちゃんと下処理は確認済みですわ。ほら自信を持って!)
(うむ)
宰相の言葉でカインド王は姿勢を正し玉座に座り直す。
「こほん!では、騎士団総括長ご準備を!」
「はっ!各団長は配置につけ!各福団長は準備に取り掛かれ!」
「「「「「はっ!」」」」」
おぉ、絶対何度か訓練してたな。
皆の行動が全然乱れてないじゃないか。
……。
で、あれが神書に書かれていた生け贄の魔物か。
種族 スパロー
鳥類種の中で最も数が多い魔物。
主に群れで生活をし臆病な性格で、他の魔物が近付いてくると、騒ぎだし逃げ出す程だ。
主食は小さな昆虫に穀物や果実だが、餌が少ないと同族も食べてしまう。
……ただの雀じゃないか?
って、この世界は雀までが魔物なんだな。
てっきり鑑定の儀で出てくる魔物はもっと凶悪なものを想像してたんだが、雀の魔物で良かったよ。
で、この魔物を俺にどうしろと?
「陛下、御準備が整いました」
「ご苦労。では、騎士団総括よアルトの身体を使い、生け贄を捧げるのだ!」
「はっ!」
ちょい待ち!今変な言葉が聞こえたぞ!聞き間違いじゃないなら、俺の身体を使い生け贄を捧げる?
それはつまり、あの雀の魔物相手にボディプレスですか?……そうらしい。
だから、金属が仕込まれた服を着せられたのか…てっきり、これが正装かと思ったぞ!
「っつ!アルト王子!」
「むっ、どうした騎士団総括?」
「はっ!陛下、急にアルト王子が暴れだしまして…」
ふっふっふ。
全力で暴れてやったぜ!一歳になった俺は、あのステータスの封印が解かれていた。
封印が解かれた意味は分からないが、赤ちゃんにして、大人だった時の力が出せる。
そんな俺が全力で駄々をこねてやったら、騎士団総括も鑑定の儀を進行出来ないでやんの。
そもそもだ、俺の身体であの雀を潰すのは気持ち悪すぎる!絶対トラウマもんだよ!
「なら、取り押さえればよかろう」
父よ出来るものならやってみなさい!
全力で駄々をこねるから。
「で、ですが!…いえ、すみません。その…王子の力がお強く、安全に生け贄を捧げるには一人では厳しいかと…申し訳ございません。騎士団長も参加をよろしかったですか?」
はっ?騎士団長も参加されるので?
「安全にか…うむ、良かろう」
されるらしい。
「はっ!有難う御座います。」
「第一から第三の団長はこちらへ」
「えっ?は、はっ!」
ちょ!ズルくないか?こっちはか弱い赤ん坊だぞ?
「むっ!」「こ、これは…」「まさか…」
俺に触れた3人は表情が変わり、俺を落とさないようにガッシリと掴み固定する。
おい、本気で四人で来るとは……。
鑑定の儀を回避するには何か無いか?
駄目だ、この状況全く思い付かないぞ!
「今だ、アルト王子の力が緩んだぞ!」
「「「はっ!」」」
そうやってスパロー…雀の魔物に向かって振り下ろされる俺。
こうなれば自棄だ!
「むっ!待たれよ!」
俺が雀の魔物に振り下ろされる直前になり、カインド王の静止が急に入った。
それはそうだろう。
急にスパローに異変か起きたからだ。
異変とはスパローの回りには魔方陣が出現したからだ。
「こ、これは?」
そう騎士団総括も流石に驚いている。
「この魔方陣は確か…」
それを呟いたローブを着た男性。
カインド王はその呟きを逃さなかった。
「ゼルゲ、あの魔方陣を知っているのか?」
ローブを着た男性はゼルゲと言うらしい、こっそり鑑定をして確認したら、この国の宮廷魔術師団の団長総括だった。
「ん?今のは…」
あれ?あの人こっちを凝視してるんだが……鑑定したのバレたか?
そもそも鑑定したらバレるものなのか?
「どうしたゼルゲ?」
「い、いえ、何でもありません。あの魔方陣は魔物専用の従属魔法です……」
「従属魔法だ……と?誰だ!鑑定の儀という神聖な儀式の最中に無粋な真似をするものは!」
カインド王の怒号がここに集まった皆に対して放たれるがゼルゲが勇気を出し報告する。
「カインド王!配下一同誰も従属魔法を使用していません……」
「ほぅ、なら誰が従属魔法を使用したと言うのだ!」
カインド王は鑑定の儀を邪魔されたことにかなりご立腹のようだ。
俺はスパローに対してもう一度鑑定を使ってみた。
その時、歯切れが悪そうにゼルゲはカインド王に言う。
「従属魔法を使用した方は……アルト第11王子様です……」
ですよね~!俺も鑑定した時はビックリしたよ!お漏らししそうになるくらいな!
名前 無し レベル 1
年齢 3 種族 スパロー
職業 無し
犯罪履歴 無し
スキル
雀の目 Ⅱ
体力G 魔力G スタミナG 力G
防御力G 器用G 素早さF
運G 精神力G 魅力G
称号
従魔契約
(アルト・ディオング・ミルフェルト)
と、鑑定で表示されたからな。
称号のとこに従魔契約と出てその次に俺の名前があるからな……さっきの魔方陣は俺が犯人か?もしかして、職業の魔物使いのスキルか?それくらいしか思い当たる節はないからな。
「なっ、アルトが?そんな馬鹿な?か、鑑定官!」
「はっ!……か、カインド王…間違いありません。スパローはアルト第11王子と契約が繋がっています」
「ま、まさか…アルトが…」
◇◇◇
それから数日が経ち、鑑定の儀を無事に終わらせたアルト……。
あの後も違うスパローが生け贄で出されるが、従属魔法の発動を覚えた俺は、その都度魔法を使っては対抗していた。
まあ、最後は薬で痺れさせられるという強引に行われた。
それで、無事に?レベルが上がった俺は、急いで能力値の隠蔽を行った。
だって、レベルが上がったら、いきなり今までのステータスに載ってなかったスキルや、かなり上がった能力値が現れるんだぜ?一歳児にはあり得ないような能力だぞ?
名前 アルト・ディオング・ミルフェルト
年齢 1 種族 人間 レベル 2
職業 魔物使い 2 見習い魔法使い 3
見習い僧侶 3 見習い戦士 4 料理人 4
錬金術師 1 鍛冶師 1 農家 1 調教師 1
遊び人 4 王子1
犯罪履歴 無し
スキル
農業 X 料理 Ⅸ 建築 X
設計 X 裁縫 Ⅴ 調教X
剣術 Ⅱ 光魔法 Ⅳ 火魔法 Ⅱ
土魔法 Ⅰ 水魔法 Ⅲ 風魔法 Ⅲ
耐性
属性耐性 Ⅷ 状態異常耐性 Ⅵ
魔法耐性 Ⅴ 物理耐性 Ⅲ
加護
運命神 製作神 創造神
体力 C 魔力 C スタミナB 力 B
防御力 D 器用 EX 素早さ C
運 EX 精神力 C 魅力 E
こんな感じ……で、急遽ステータスを隠蔽を行った。
名前 アルト・ディオング・ミルフェルト
年齢 1 種族 人間 レベル 2
職業 王子 1
犯罪履歴 無し
スキル
従属魔法 Ⅰ
加護
運命神 製作神
体力 G 魔力 F スタミナG 力 F
防御力 G 器用 C 素早さ G
運 C 精神力 G 魅力 E
うむ、スッキリした。
従属魔法は魔物使いの職業から引っ張ってきてスキルに張り付け、スキルに能力を落としまくった。
これで無事に?鑑定の儀を乗り越えたのだが、本当にスパローに対してボディプレスさせられるとは……。
で、当日に従属魔法により、めでたく従属させられたスパローは、鳥籠で今は羽休めをしているみたいだ。
俺の部屋のバルコニーに鳥籠を設置し、今や王城の敷地分だけは自由に飛び回らせていた。
時たまメイドや執事の目を盗み、魔法や魔力を上げる訓練に付き合わせている。
◇◇◇
時は遡り、鑑定の儀終了後。
「カインド王、鑑定の儀お疲れ様でした」
鑑定の儀が終わり職務室に移動してきた、各大臣と騎士団と魔法師団の両総括達。
「うむ…ゼルゲよ、宮廷魔術師師団長総括に聞くが、アルトの事はどう思うか?」
「……どうと言われましても、今回の事に対して前例がなく、正直驚いています」
そうゼルゲら苦笑いしてくるが、俺もそうは思う。だが、無視は出来んのだよ。
何せ俺の息子のアルトの事だからな。
「カインド王、ですが、儀式の時の物凄い力もあの魔法も素晴らしいものでした」
騎士団総括はそうは言うが…な?鑑定の結果を見たが、確かに他の一歳よりはステータスか良いものだった。
だが、気になるとこもあるのだ。
それは加護の所に運命神様と製作神様から加護を貰っているみたいなんだが、俺も妻も加護を頂けるような行いはしていないのだ。
これは神達の気まぐれか何かなのか?
「ギルツよ、じゃがアルトは一歳児だぞ?」
「そうです、だからなのです。私はあの鑑定結果が出た時には、運命神様もしくは、製作神様が乗り移ってらっしゃったか、力を貸して頂いたんだと思いました」
そう騎士団総括言ってきたが、以外にも魔法師団の総括も話に割り込む。
「成る程…それはあり得ますな」
何?有り得るのか?
「実はあの時アルト様から、鑑定の魔法が私に飛んできましたからな」
「鑑定の魔法が?だが、アルトには鑑定のスキルは無かったぞ?そもそもだ、一歳児にそんな高度な魔法が使えるのか?」
「普通は有り得ません。使えても、未熟に成長した脳は焼ききれて亡くなってしまうでしょうから」
「なっ、下手をすると亡くなると!」
成る程、神が乗り移ってらっしゃった……それなら鑑定の儀のアルトの様子は理解できる。
鑑定の儀と言っても内容はかなり荒々しい内容だからな。
薬で動けない、弱小のスパローとは言え相手は魔物だ。
そのスパローに対して一歳児のアルトは、身体に幼児用の防具でガチガチに固め、押し潰し強制的にレベルを上げ、上がったばかりの能力を鑑定で調べる内容だからな。
今までの経験上俺の子達…まぁ、アルト以外だが、その儀式を行ったら必ず泣き叫ぶ…そう、いくら防具でガチガチに固めたと言っても身体にかかる衝撃やダメージは免れないから、結果、皆泣き叫ぶ。
のだが、アルトはそうではなかった……何処か諦めたような顔をして、ボーッとしていたように思えた。
いざ鑑定を行うと、オドオドとした様子も見られた……一歳児がだぞ?
だが、神が乗り移ってらっしゃったのなら少しは分かる気がする。
「……で、今アルトはどんな様子なのだ?」
「普段と変わりません。御食事をされて今は寝てらっしゃいます」
「ふむ…そうか……メイドの監視体制の強化をしなければな…」
何があってからでは遅い、少しでも監視はさせるべきだな。
「で、陛下一つ古い書記を見たことあって、その中に気になる文があったのを思い出しました」
「古い書記にか?それはどんな文だったのだセルゲよ」
「はい、《産まれながら神の加護を授かりし者は神の期待が故に、加護と力を授かりし者は神の使徒として世界に産まれる》と……その書記を見た後は、どうにかうちの子も加護を授かるように教会にお祈りに行ったほど、信じました」
「確か……山奥に住んでいた老人が書き記した書記で、先先代の更に前からあった書記だったか……」
「陛下も読まれたことがあったので?」
「うむ、先代のに読むように言われて読まされたのを思い出したわ……にしても神の使徒とは……まさかな?」
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