第18話
「では次は私の報告を、開発中の警備では開発途中に町中に入ってくる魔物も、全くいなく町の周囲にちらほらと現れるのみで、警備についている兵も暇なのでしょうな。開発の簡単な手伝いをしている状況でした」
うん、その報告は初期に警備担当の兵から聞いていたけど、あまりにも暇すぎて申し訳ないって言われ建設の作業を手伝ってくれているんだよな。
まぁ、それは、領地の回りや町の城壁に組み込んだ、結界の要石が効いているみたいだな。
「そうか、それは良いことじゃないか。だが、良いことには変わらないが町中に魔物が入ってきていないのか?」
「……みたいです。また、町中に時たま生えている雑草にしても、ただの草でウィード一匹も居ないとか……。それには思うこともあり、私も草を調べてみましたが、間違いなくただの草でありました」
ウィードは区画を決める時に駆除したから、逆に居たら困るもんな……作業中に怪我したら大変だし。
「……それは有り得え無いだろ?普通……」
いや、父上?駆除頑張りましたよ?
「それと思ったんですが、この領地に入ってから魔物との遭遇も少なかった用に思えました。実際に町の周囲も魔物の数が少ないみたいで……」
そうギルツが報告したのを聞いたカインドは、ゆっくりと顔をこちらに向ける。
「なぁ、アルト……もしかしてだが、スタンピードーの予兆かもしれないぞ……」
カインドの顔は少し悪くそう言ってくる。
「あぁー、それは大丈夫かと……領地周辺と町の城壁に魔物避けの結界を施しているので、その効果みたいですね」
「「「「「…………」」」」」
その言葉で、カインド、フィリップ、ギルツの3人処かメイドやゼロスを含め全員固まる。
「……すまない、聞き間違いたようだ。今なんて言ったんだ?」
あれ?聞こえる声で言ったとは思ったけどな?
「えっと、領地周辺と町の城壁に魔物避けの結界を施しているので、その効果です…と」
「……そうか。聞き間違いではなかったようだ……よし、先に昼食を食べて考えようか」
?、聞こえていたんですよね?
まぁ、料理も冷めない方がいいしそうしましょう。
お腹、空いていたんですよ。
そして、どこか上の空の様子なカインド、フィリップ、ギルツの3人は無言で食事を食べ、今は食後の紅茶を飲んで一息入れている所だ。
「さて……あれだ、結界だとぉ!!」
昼飯も食べ、紅茶を飲んでいた俺は父上の急な叫び声で危うく、口に含んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
「ブフッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!……父上…急に叫ばないで下さいよ……」
「それどころじゃない!結界だ!結界を施しているだと!」
今は俺も咳き込んでて大変なんだけど?
父上…僕よりも結界が気になりますか?
「結界ですか?領地周辺と城壁に設置してますが?」
「……アルトよ…因みにどんな形の結界なんだ?」
形かぁ、形と言っても沢山種類があるんだよなぁ……まぁでも、今回使ったのは二種類だから……これと、これだったよな?
「そうですね、形は色々と有りますが領地周辺に設置したのがこちらで、城壁に設置したのはこちらですね」
「……普通にまだ持っていたんだな……見てもいいか?」
見てもいいけど、重いので流石にテーブルの下に置くしかないか。
「はい、構いませんよ?」
「……ううむ、鑑定官が居ないと詳しくは分からないが、伝説級か国宝級のマジックアイテムだな……これをどこで……いや、よい。そうか分かった。これが領内に魔物が少ない理由か……なぁ、アルトよ因みに魔物避けの結界はまだあるのか?」
伝説級に国宝級?いっぱいアイテムボックスに有りますが?……まさかね。
「……まだ、あります」
「ふむ…王都にも設置したいのだが、購入は可能か?」
んっ?買ってくれるのか?流石に伝説級や国宝級って聞いて、俺一人で保管しておくのは怖いから、少しでも在庫は減らした方が良さそうだ。
「購入していただけるんで?それは助かります!これで建設費がまかなえます!良かったら、王都の分以外にも主要都市や町に村の分はどうですか?」
建設費?私財で何とかなるので建前だよ?
取り敢えず、結界の在庫を減らしたいからね?
「……そんなに有るのか?」
「ランクを下げれば、まだ有りますよ?」
「……そうか、それについては各代表者の確認を取って後日話そう……」
ん、なんとかなりそうだ。
「分かりました!」
「で、この領内には魔物が少ないのだよな?」
「そうですね。結界を設置しましたので」
「それでは魔物由来の素材は手に入りづらいのではないのか?」
「……そうですね」
「魔物が居ないなら、冒険者ギルドがこのままでは出来ないんじゃ無いのか?」
「……失念してました」
「ふむ、冒険者が居ないとなると、働き手が居なくなるな……大丈夫なのか?」
「……対策を考えておきます」
その後の視察は順調に進んで行ったが、カインド達は領主ビルの作りに一つ一つ驚いていて、最後には王城でも取り入れないか相談されたが、町の開発がある今は王城まで手を出していたら、完成予定が遠退いてしまうし、せっかく仕込んだ職人が居なくなるのが痛い。
父上もそれは分かっていたのか、途中でから褒賞金に免税期間延長の囁きが聞こえ始めていた。
まぁ、7歳にはなったがまだまだ子供の俺でも流石に自分の町を放置して行くのもあれなんで答えは決まっている。
「エレベータと照明なら直ぐに取り掛かるように手配しますね」
うむ?いや、褒賞金欲しさじゃないよ?
ほら、帰って王城に無いと不便だし免税の延長は大事だよ?
ゼロス、そんな目で見ない。
ほら、褒賞金だよ?違った…免税だよ?
パッと行ってパッと帰ってくるからさ?ねっ?職人達も10人連れていくね?
あ、良いみたい、許可出ました。
では、明後日父上と王都に行きますね?
それから、王城にエレベータや照明に水道、水洗トイレが設置されたのは2年の月日が掛かる見通しだが、職人には作業を教え俺が自分の町に戻ってきたのは、半年と直ぐに戻ってこれた。
何気にこの世界の職人って、物覚えも腕も物凄く良く、教えるのも楽しくなっていた。
これもスキルのおかげかな?まぁ、それは分からないが、ただの奴隷も半年経ったら立派に職業も就いている。
まぁ、職業選択の宝珠を使って、本人達の職業も変えているから、職業が職人の数は今は多い。
ただ、奴隷達本人の意思によって職業を変更するかしないかは自由にしているが、8割の奴隷は変更している。
残りの2割は、建築関係ではなく錬金術師等の職業に就いている者もいる。
そういった人は開発で使う薬品等を作ったり、コンクリートを作ったり様々な事をしているので、それにあった職業に変更していった。
警備兵や世話係の部下達も途中で、職業選択の宝珠を使い、其々の職業に就き直している人が多かった。
で、最初の視察から一年後、作業も粗方皆で出来るようになり、少しは俺も時間が作れるようになった。
それを見越してゼロスから、作業員の増員はどうするかの話があった。
少し考え、500人の奴隷の追加を行った。
6年と5ヶ月。
これは、国からもらえる支度金の貰える年数だ。そう、6年と5ヶ月しか貰えないのだ。
それまでにどうにかして自分達でお金を稼がないと行けない。
こう言ってはなんだが、この町に現在商人は居らず、物を作っても販売する商会はいないし、住民と言ったら作業員達しかいないので、余り稼ぐ事は出来ない。
そして、この町で使っている資材や食料に備品は現在は他所の村や町に王都から、職業ギルドにより集めてもらい購入している現状だ。
という事で、そろそろ第二計画に移る時期だろう。
「アルト様、生産商業施設が完成し、手が空いた職人奴隷の振り分けと、厳選した200名のリストで御座います」
ふむ、流石はゼロス。
仕事はかなり早く助かるな。
ん、コイツらなら問題なさそうだな。
「ん、問題なさげだね。これが計画書だよ、機械類は取り敢えず2台ずつ完成しているから、それも持っていってもらっていいかな?魔石燃料は今在庫は12樽有るけど持っていくのは10樽で……後は、機械の整備の指針書と予備パーツは地下三階の倉庫からだね」
因みに元々、コンクリートや鉄骨にガラスを作るための工場を改良した。
ここは国から商業ギルドに委託出来ない様々なオーバーテクノロジーの品を製造している。
今回の第二計画で使う機械もここで製造し、まだ台数が少ないので、今も製造中だ。
「畏まりました。現地には早急に出発致します。食料はどの様な段取りになっていますか?」
「食料は警備兵の30名で取り敢えず一ヶ月分は配達済みで、現地には警備兵50名、世話係20名はもう待機しているよ。今はプレハブ小屋を設置中じゃないかな?」
本当なら一人でも持っていけるが、どうしてもこの数が妥当と譲らないゼロスに押し負け、先日出発させた。
「畏まりました。では、行ってきます」
「あっ、ゼロス!バッグ!バッグを渡すの忘れていたよ!」
そう、食料も備品も機材に機械さえこの沢山入るバッグに入れ持ち運びが出来て楽だわー。
本当に沢山確保してて良かったよ。
「……すみません、お借り致します」
第二計画……町の名前はまだ決まっていないが、この開発中の町の近く……距離的には1㎞離れた場所に村を作る計画で、この村では農業に特化した村を作る。
それによって、農作物を領地内で生産し他所からの購入を減らすのが目的で、町や村に住むであろう住民の就職先を作るのも目的の1つだ。
あわよくば、農作物の備蓄もしたいし余剰分は逆に販売もできるようになりたい。
この、第二計画が進んで次なる計画に移る頃には城壁も完成し、住民の受け入れや、各商会にギルドとの話し合いも予定している。
その為には、下準備を念入りに行わないとな。
ふむ……その為には一度王都に出掛ける必要があるな。
「アルト様!」
「んっ?どうしたんだ?そんなに慌てて?」
メイドの一人が血相をかいて慌てて近付いてきた。
「すみません、アルト様にどうしても会わせろと言われている方が今して……」
「えっ?面会?商談?それなら、事前に予約をしていないと会えないようにしてたよね?一体誰なの?」
もぉ、そんな飛び入りは断らないと!こっちだって、忙しいんだから……。
「だ、第1王子のオーウェン様です!」
「ぶっ!オーウェン兄様が!案内して!すぐに行くから」
オーウェン兄様が?珍しいな……何があったんだ?
「は、はぃ~っ!」
メイドと急ぎながら、オーウェン兄様のとこへ向かう。
オーウェン兄様はどうやら一階のロビーで待っているらしい。
「あ、すまないアルト!」
「オーウェン兄様どうされたんです?」
ふむ……あの冷静なオーウェン兄様が取り乱している?本当にどうしたんだ?
「アルトは聞いているか?」
「えっと……何がです?」
うむ。全く分からない。
「……そうか、すまない。俺達兄弟の件でな、父上が今朝5歳から15歳未満と、学園を卒業した王子に王女はアルトの元にて、開発の手伝いをし、領地経営等を学んでくるようにと、言われたんだが……」
えっ?何だ……それは……聞いてないぞ?
俺は仕事が忙しいのに、そんなことまでやったら大変になるじゃないか……。
まぁ、
「いえ、初めて伺いましたよ…その事は……」
「そうか……毎日あっていた勉強は二日に一度に変更になったのは嬉いんけどな」
「取り敢えず、父上にそれが本当か伺いに行きましょう」
「ああ」
丁度王都に行く用事があったから向かうが……オーウェン兄様が居なかったら転移で飛んでいくんだけど、仕方ない。
馬車で行くか……。
で、王都に着いたのは夜になっていた頃で、家族との夕食を食べ逃した俺達は、先に父上に会おうとしていたら、仕事が終わっていないようで先に夕食を食べるように言われ、二人で夕食を食べた後父上の書斎へと伺う。
父上に俺のとこに兄様達兄弟が来るって聞いたんだがと伺うと、どうやら座学では学べない貴重な体験をさせるためにそう決めたらしいんだが、あの……兄様や姉様方を使うのは気が引けるのですが……?
えっ?俺の場合は年配者相手、しかも格上相手に的確に指示が出来る訓練……?
い、いやそれは流石に……それは……年配者って言ったら町の全員がそうなんですが……。
僕、7歳児ですから……。
……確かに、格上は居ませんが……。
え……教育依頼料?白金貨1枚?
え~っ、お金には困っていないんですが……僕は……。
だが、やらせていただきます!
オーウェン兄様、そんな目で見つめないで下さい。
お金ではなく、兄様や姉様方のスキルアップの方が大事なんです!
本当です!頑張って行きましょうね?兄様?
その次の日には兄弟全員にその話が伝えられ、一ヶ月後にはアルトの町に王子や王女がやって来ることになる。
そして昼は過ぎ、アルトは商業ギルドへと来ていた。
「すみません、クルオラさんに引き継ぎをお願い致します」
そう、いつもの店員さんに声を掛ける。
「……すみません。紹介状がないと引き継ぎ出来ないんです。紹介状はお持ちですか?」
ふっ、その言葉を待っていた。
前回はクルオラさんに貰ったアクセサリーで、言葉が足りないのか失敗してしまったが、今度こそ、アクセサリーでリベンジだ!せっかく貰ったから使わないとね!
「この、アクセサ…リ……が……」
あれ?あれれれ?アクセサリー…無いぞ!まさか、アイテムボックスは長時間入れておくと中の物が消失するんじゃ!
「どうされました?」
「いえ、アクセサリー…が……」
「アクセサリー?あぁ、はい!先日はアクセサリーを拾ってもらい、ありがとうございました。あの副ギルドマスター証は、私が責任を持って副ギルドマスターに御返し致しました!」
あっ……そういえば、あの時持って行かれたんだった……。
「あの…そのアクセサリーは僕がクルオラさんからもら……」
「いらっしゃいませ!本日は当商業ギルドにお越しくださいまして、誠にありがとうございます!本日はどうされましたか?」
あ……行っちゃった……。
俺とあの店員相当相性が悪いな!
次もリベンジしてやる!
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