第40話

 ゲーラ伯爵の情報を集めに、少しの時間を要したが、ゲーラ伯爵に対して決まった対策は〈何もしない〉だった。


そうゲーラ伯爵に動きがあり、こちらが動くタイミングまで何もしないに決まった。

それにより、この街からゲーラ伯爵が居る町

バルムにこの領から人員を送り出した。



 でも現状は、ゲーラ伯爵領から塩を購入することが難しいので、ゲーラ伯爵領の隣の領他の領主達にお願いするとあっさりと承認され、この領地の分と王都の領地分の塩を定期購入することが約束された。


 んっ?何故、王都の領地分の塩を何故この領地が交渉しているかは、そうした方が輸送費が押さえれるからだ。

 領地分の塩と言っているが、勘違いはしないでほしい。

 こう言った物は本来、商人達やそのギルドが取り仕切り、領主達はそこから買っているにすぎないのだ。

 ……本来はだが、この開拓町では領主陣営も各ギルドも助け合いながら発展するといった体制をしているだけだ。

 では何故王都の分の塩も?となるが、王都からゲーラ伯爵領の間に出来たこの町を経由し、王都の商業ギルドは手に入れていた。


 で、開拓が落ち着きアルトは各ギルドにこう提案をだした。


 王都の領地からこの町を経由するぐらいなら、この町の人員で王都の領地分も購入し、輸送し貯蓄し、その後に王都の領地からこの町に取りに来た方が、王都の領地からの経費は押さえれないかな?と……。


 初めは誰もが意味がわからなかった。

 だってそうすればこの町の商人等が輸送費や冒険者を護衛として雇う護衛費等の経費が莫大にかかってしまうのだから。


 だが、アルトはそれは個人で行くからじゃない?こちらから行く分には、キャラバンを組んで行ったら?

 今まで荷馬車で何台も個別に行くよりは安くなるよ?何なら輸送が楽になるために新しい道具もあるけど?どうかな?ゼロス、皆に書類を。


 はっ!こちらが書類です。


 という流れがあり、新しい輸送道具としてキャタピラー式輸送トラックを導入した。

 町や村の近くに輸送トラックをキャラバン方式で10台出し、その中の一台に荷馬車を乗せトラックから町まではその荷馬車で仕入れする。馬は冒険者や護衛兵が使っていた馬を使うという流れだ。

 馬に乗れない護衛達はトラックに載って移動するようにした。


 これにより、護衛や御者として雇う人件費がかなり押さえられた。

 商業ギルドのクルオラさんは輸送トラックを王都の商業ギルドにも!と、言ってきたが、断りを入れた。

 もし王都にも輸送トラックを出すなら、輸送トラックを整備する事が出来ないと難しいからだ。

 残念な事に、この輸送トラックの技術はまだこの町以外には難しく、この町のキャラバンが空いた時に輸送する分は問題ないと告げる。


 で、誰が輸送トラックの運転を?と言えば領主陣営から人員を割き運転させる。

 1台の人の割合として、2人の運転手だ。

 護衛兵と冒険者は2台の輸送トラックに対して2人づつ。

 それにキャラバンを指揮する商人が1人。

 結果、輸送トラックが10台で人員は41人と少なくなり、経費や人件費は最大にして約27分の1となる。

 因みにだが、輸送トラックの積載量は荷馬車の8倍はある。

 輸送トラックのコンテナ内部に棚を設置すれば更に16倍以上は可能になる。

 後は中に積む物次第だということだ。


 一方その巨大な輸送トラックと大きなキャラバンに、会議参加者は度肝を抜かれた。


 で、実際に実用し始め2ヶ月は経つが何も問題はないみたいだ。


 さて、塩の問題はこれで解決っと……後は来年の武術大会か……。

 開催するのは良いが、宿屋を増やさないとな……。

 問題は、武術大会が終わればそこまで宿屋が不必要な件について……だな。

 ふむ……。

 次に武術大会のルール作りに、商品決め、運営方法、一番の問題は予算決めか?

 ……ふむ、闘技場を造ったのはやまったか?

 これは会議でどうするか話し合うしかないな。


 次は……この開拓町の西側に新たに造っているのは生産特化の村だ。

 開拓町よりは堀や城壁はグレードは下がるが、それでも王都の城壁並みというレベルだ。


 この城壁は生産地区の範囲は農業地区と同じく、開拓町の4分の1程の広さしかないので、来年の闘技場大会がある頃には大半が完成するだろう。


 それもそのはずで、住宅等の建物は余りなく、物を生産する工場の方が多く、それよりも生産品を置く倉庫が更に多いのが特徴だ。


 なので、村の美観を考え城門付近は住宅街や商店があり、真ん中は噴水を中心に広い広場で、村の奥に工場や倉庫を予定している。

 この村の村長を元スラムリーダーのセバスチャン・ブイエに選任し、その村長宅は町の中央の広場がある通りに広く建てる予定。


 因みにだが、農業地区の村ではマンションは建設しておらず、農業をイメージしてアルトは村の設計図を書いていった結果、1つの家が木造建築の広い土地に農具をしまえる倉庫や、作物を置いておける倉庫を建設していった。

 農業地区の村では大半が農民であり、その他は農具を修理する鍛冶屋だったり、商人がいる。

 城壁の中にはまだまだ余裕があるとはいえ、実は個人の小さな畑等以外に田や畑はない。

 田や畑は城壁の外に作られており、その規模は毎日拡大中である。

 村からの移動のために、馬車が何台も何十台も使われている。

 更に言えば、作物専用の馬車は百を超えていた。

 そこまでに短期間で作物が実っているのだ。


 アルトはそこで、輸送トラックをここ農業地区に導入をしているが、実は輸送トラックを1台作るのに1ヶ月程掛かる。

 今ある輸送トラックは全て、仕入れに使っているので農業地区には回せなかったのだ。


 で、そこから何ヵ月が過ぎた頃、王都からカインドとローザが調査団と騎士団を連れやって来た。


 今回の調査の内容は町や村の発展状況の確認に、兄弟達王族を含めた皆の仕事内容やその働きぶりの確認と、不正などの実地調査らしい。


 この開拓町も村も王族である俺達兄弟達が行っているが、それは決まりごとであるらしく、そこは厳しく監査が入った。


 その調査は1日では終わらずに、1週間は費やしてだが。


 父上、母上?そんな期間王都を留守にして良いので?と兄弟達皆思っているが、まだ幼い王子に王女達はそんな両親に会えるのを嬉しがっていた。




「ふむ、今回の監査の結果は大丈夫みたいだな。まぁ、心配はしておらぬがな。」


 そう威厳だっぷりに出た裏腹に、ここ談話室には兄弟達が全員居るなかで、カインドは兄のカイル第10王子を始め、ダニエル第12王子や、リベル第5王女にシャート第6王女や、ルルエル第7王女達をローザと一緒になり愛出ている最中だ。


 ふむ、俺にはそんな態度はとったことないのに、どうも昔皆城に居たときもこうだったとシャートが言う。

 まぁ、生前は精神年齢が63歳だった俺にしてもらえれば、それはよかったと思うが、同時に悔しさも少しはわいてくる。


 俺はそんなカインドに対して「兄弟達含め、皆さんが真面目に頑張っているおかげですね」と当たり障りない返事をする。


「でだ、オーウェン王子、ケビン王子、アルベルト王子、シャルラ王女、カエラ王女よ」


 カインドは真面目な顔をして、兄様や姉様を呼ぶ。

 それに対し「「はつ」」っと返事をする兄様達。


「みな、開拓町での任を解き王都に帰還せよ」


 と言ってきた。

 対して兄様達は顔にこそ出してはいなかったが、何処か悔しそうに返事をしていた。


 兄様達が王都に戻る。


 その事を聞いた他の王子、王女達は自然とカインド達とは距離を置き、シャルラ達の方によっていく。

 ずっとこの町で一緒になって働いたり、生活したのだからそれは寂しいだろう。

 実際に王都にいた時より、ここで暮らし働いたお陰で更に兄弟の結束が固まった。

 それは自分も思うし、オーウェン兄様もシャルラ姉様も言っていた。

 そんな態度の兄弟達を見て、カインドは深いため行きを吐く。


「仕方ないのだ。皆良い年齢となってきておる。婚約者達からもそろそろと話を持ちかけられておる。そもそもこの町に就かせたのは、皆町造りの経験させるためぞ?町造りはなかなか経験できるものでもないしな。それに、オーウェン。お前は第1王子でもあるのだ。つまりは俺の後をついで王にならねばならぬ」


 まぁ、皆がこっちに来る話として、町造りの経験させるためだった。

 何時かこういう時が来るだろうなとは思った。

 本当に仕方がない話だった。

 だが、こんなに急に来るのはいささかおかしい。

 せめて、事前通達があっても良いものなのに。


 そこで、俺は執事のゼロスを見ると視線をズラされた。


 へぇ、これには何か訳があるのか……さて、何だろうか?


 そんな風に思っていると、オーウェンはカインドに話をしていた。


「分かりました。婚姻を済ませ、その後またこちらに戻り、作業に戻りたいと思います」

「わたしもですわ」「えっ、それアリなのか?なら私もですね」「わたしもそうしたいと思いますわ」「そう出来るなら、私もそうします」


 と皆が続く。


「ならん。特にオーウェンは戻り、結婚し王になるのだ!それに、シャルラは同じく結婚し、宰相の任に就くのだ!」


 その話しにそう厳しい口調で言うカインド王。

 そこで、俺が何気無しに聞いてみる。


「父上、退陣なさるということでしょうか?なら、父上達は今後どうされるおつもりで?」

「決まっておろう!この開拓町に移り住み、余生を妻と楽しむのよ!……あっ、」


 口の軽いカインドに対し、この国は大丈夫なのか?と思った俺だが、理由は実にくだらないものだった。


「「…………」」


 これには誰も予想してなかったのか、全員無言になる。いや、約1名本人以外知っている者が居たようだ。

 何故か俺と顔を会わせないようにする者が約1名だが。

 こればっかりはカインド達の護衛としてきた騎士も驚き固まっているみたいだが、どうするんだろうか?


「い、いや。早めに王位を引き継ぎ、早い内から慣れさせるためにだな…」

「父上?それは困ります!まだ若輩の身でありながら、何一つ国のことなど分かりません。それに、そんな事をすれば国が混乱致します!」

「それは問題ない。各大臣や総括達、ほかには国のトップ達が全力でオーウェンを鍛えるからな。俺が王位を引き継いだ時みたいにな」

「お父様?それは私に宰相として、王都に戻るのですの?そうですか……もし、このまま私達が戻りそうしたならば、この町で働いた経験を生かし、国を動かすことになるのかしら?アルト」

「はい、姉様」

「もしですが、この町のように建物から家電を王都にも必需項目にするなら作業員は足りるかしら?」

「いえ、全く足りません……」

「そう、ならこの町には作業員を増やせるよう、運営資金を渡さないといけませんね……多額を。そうすれば、更なる経済効果もあるでしょうし、ここみたいに住民登録をキチンとすれば更に国も変わりますねぇ……」

「ま、まて。そんな事をすれば王都の資金が尽きてしまうではないか!」

「お父様?何年かはそうなるでしょう。そう。何年か我慢をすればよろしいのですよ?」

「そ、それでは周りの貴族どもが黙ってはおらぬぞ!」

「まぁ、ふふっ。お父様?私達はここの運営方法しか分かりませんわ。そうなるのは仕方ないかと」

「む、だがしかし……それでは……」


 シャルラに言われカインドは困ってしまう。

 そんな様子を見てアルトはこう思う。

 普通これだけ兄弟が居れば、継承権何だのって揉めるんじゃないのか?

 ……うん、兄弟で争い事なんてしたくないし、うちらが仲が良かったけど……王である父上がオーウェン兄様に譲るのは分かる。

 だが、まだまだ父上は若いし今譲らなくても良いんじゃないかな?


 オーウェン兄様も兄様で、そんなに即位を断るなんて……嫌なのかな?

 あぁ、でも領主でもこの忙しさなら、王となれば……うん、俺は嫌だな。

 もっと自由が欲しい。


「父上?今なのですか?」


 アルトは考えた上で、そうカインドに言った。



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