第11話
ふむ、町に溢れているゴミ達をどうにかしたいが、さてどうやるかが問題だ。
前世みたいにゴミ収集車が有るわけでも無いし、ゴミを出すルールも緩いこの世界にどうしたものか……。
取り敢えず、ゴミ拾いをしている人は道に落ちているゴミを両手で持ち、バケツみたいな物に入れる。
バケツみたいな物が一杯になると何処かに運んでいるが、執事のゼロスに聞くとゴミは王都から離れた所に馬車で運ばれ、捨てられるとのこと。
あのゴミが一杯になったバケツみたいな物は、そのゴミ捨て馬車まで持っていっているそうだ。
で、また空になったバケツを手にゴミを拾い始めるんだそうだ。
何とも非効率なやり方だろうか……機械が存在しないこの世界では、何とも不便なものである。
「いらっしゃいませ」
で、俺は商業ギルドへと来ていた。
入り口で商業ギルドを利用する者に対して、挨拶や接客を担当している人に挨拶される。
「すみません。本日クルオラさんはいらっしゃいますか?」
「すみません、紹介状はございますか?」
ふむ?紹介状?
「いえ、紹介状はありません」
「そうですか…では引き継ぎは出来ません」
「えっと……前回はクルオラさんあっちで受付してましたよね?」
「そうですね。クルオラ副ギルド長は定期的に受付に自ら立たれますが、本日は立たれておりません」
「そうですか…どうやったら紹介状って貰えるんです?」
「紹介状は商業ギルドに加盟されている、商会の各主様から手に入れられます」
うぅむ、商会主ねぇ。
知り合いに誰もいないしなぁ。
「あの…商会では無いんですが、自分もギルドの会員何ですが……」
そう言ってギルドカードを差し出す。
「アルト様ですね。ギルドカードの確認は終わりました。ただ、会員ランクが低いのでやはり引き継ぎは出来かねます。本当に申し訳御座いません」
丁寧な係員でルールに忠実何だろうが、これは困った。
商業ギルドに来たらクルオラさんが、俺の担当になってくれるって言っていたが、こうなったら仕方ないな。
「そうですか、分かりました。有り難うございます」
そう言って俺は住宅関連の受付がある列並ぶ。
そして、並ぶこと一時間くらいが過ぎてやっと俺の番になった。
「いらっしゃいませ、本日はどうされましたか?」
「すみません、土地と建物が欲しくて伺いました」
「はい、先ずは会員証の提示をお願いします」
アルトはギルドカードを出し、簡単な手続きを終える。
で、ここで問題が出たのだが、王城周辺は土地が余っていないそうで、土地を買うことが出来なかった事と、王城周辺で鍛治等の生産活動は王の許可が必要であった。
仕方なく工業地区の生産エリアにある土地を選んでいたが、何処の土地もやけに高かった。
仕方ないな……高い買い物だけと要るものは要るのだから。
その後即金で購入し、次なる受付へ並ぶ。
ああー疲れた……。
土地や道具に素材を購入するのにほぼ一日掛かってしまった。
それにしても、全ては明日取り付けか……。
今日は帰って、ポーション作成だな。
◇◇◇
ふむ、順調、順調!
無事にギルドからの配達に設置も終わったし、必要そうな材料も運んでもらったしな。
昨日はポーションを作った後、神書を読み込み今日やることの予習は完璧だ。
今日やることは顕微鏡の作製の為の設計図から書き始めよう。
ここで、前世の職業が役に立つとは嬉しいものだ。
早速製図道具を使い……まじか、製図セットを購入していたんだが、この中には本当に必要な道具しか入ってないとは……しかも、この定規にはミリもセンチも書いていないしな……これで出来る製図ほど宛にならないだろうな。
そうやって、取り敢えず必要な道具から作っていくアルトだった。
全くこの世界は不思議なことが沢山あるな……。
建物もそうだが、一体どうやって建てたんだ?
そう悩みながら、作業は進められ試作型の顕微鏡が出来たのは1週間後だった。
さて、この顕微鏡でどこまで見えるかだが……もうちょっと倍率を高くし……見えた!
これで、顕微鏡は完成だな。
次は、このゴミに付着していた菌がどんなものか分かればいいんだが……色んなゴミを集めて、菌やウイルスを見つけそれがどんなに驚異か探すのは大変だな……鑑定が効けばいいが……な。
名 無し 種類 細菌
腐食物により生まれる。
体内に入るとお腹を壊す細菌で、生命力が弱く熱に弱い。
煮沸をすれば死滅する。
名 無し 種類 細菌
腐食物により生まれる。
傷口に付着すると、傷口を化膿させ化膿場所を新たな住みかとし、対象物を腐らせ繁殖する。
アルコールに弱く、純度が高いアルコールを掛けると死滅する。
……あぁ、見えたな。
これらの顕微鏡とゴミを父上に見せれば、直ぐに環境整備してくれるだろう。
次は、ゴミ拾い時の道具の作成だな。
◇◇◇
俺専用の製作専用の建物を買って、早二週間が経過した。
今いるのは王城の研究室だ。
そこに今までに作成した一部を持ち込んでいた。
「で、アルトよ。俺に話さなければならない内容があるとは?で、何故に研究室なのだ?」
「はい、陛下。以前王都のゴミ問題の件で見て頂きたいものがございます」
「はい、ゴミにより発生する目には見えない、細菌やウイルスとそれらが惹き起こす、病気等でございます」
そう、ゴミ問題について父上に話すため研究室に来てもらったのだ。
だが、俺の話を聞いていた研究室の職員が話に割り込む。
「目には見えないって…アルト王子…まさかそんな生物は居ませんよ?……まさか精霊の事ではないですよね?」
「……実際に見えないし、見たこともないので信じれない気持ちは分かりますが、実際に居ますし、道具を使えば見ることも出来ます。で、こちらがその道具です」
「ほう、見たことない道具だが…何処でこれを?」
「作りました。それはさておき、実際にゴミに着いているそれらを見ていただきます。ゼロス、お願いします」
「つ、作ったって…」
そう、父上は呟くが俺的にそっちはどうでもいいので、やり方を昨日教えたゼロスに実験の準備をしてもらう。
因みにゴミを今朝用意してくれたのもゼロスだったりもする。
「はっ!」
ゼロスは流れる動作で顕微鏡に、ゴミから採取したものをセットしていく。
そこはこの道具を長年愛用していた如くだ。
流石はゼロス、昨日1日貸しただけで顕微鏡を準備するのに無駄な動きが無くなるとは……。
だが、逆にここまでやるとは俺はビックリしている。
たかが、俺が作った顕微鏡なのにな。
「アルト様御準備が調いました」
「うん、ゼロスありがとう」
「はっ」
「陛下、御準備が出来ました。此方から先程ゼロスが見ていたように見てみて下さい」
父上は初めて使う道具に対して、少し緊張ぎみみたいだ。
「う、うむ。こ、こうか?アルト……よ……なっ!こ、これは!いや、コイツらは一体何なのだ!」
顕微鏡から目を離しそう俺に聞いてくる。
「すみません、陛下確認します……これは細菌ですね。この細菌はまだ名前がないのですが、この細菌が惹き起こすのは嘔吐や下痢で、放置すれば脱水症状になり最悪死に至ります。数が少ないのも細菌で、此方もまだ名前は無いのですが、傷口に付着すると化膿をさせ患部を腐らせていく細菌のようですね」
俺は顕微鏡を見て鑑定を使い、どんな細菌やウイルスが居るか確認していく。
「なっ、なに!こんな小さな生物が……だが、アルトはどうやって細菌を見分けておるのだ?」
「……鑑定の魔法を使用しております」
まぁ、今までは秘密にしていたがこれは仕方がないだろう。
「鑑定とな……そ、そうか。おい、鑑定官を数名呼んでくるのだ!」
父上はそう護衛の騎士に告げる。
「は、はっ!」
暫くして三名の鑑定官が到着し、息も切れた状態で顕微鏡を見ていく。
相当走ってきたんだな……それもそうか、陛下である父上が呼びつけたんだもんな……。
「陛下……これは…だが……」
一番始めに顕微鏡を見た鑑定官が何か言いたそうにしているが、何やら考えにふけっているようにも見える。
「鑑定官よその道具で何が見えた」
「さ、細菌であります……」
「して、その細菌を鑑定したのだな?何と出たのだ?」
「名前がない……すなわち未発見の生物です。……しかも、何種類もです。そして、人に害なす生物だとも出ました。詳しくは嘔吐や下痢に腐食等です。他にも居ましたが、数が多く、全ては鑑定していません」
全て確認するには、細菌やウイルスに合わせてピント調節も必要だからな……。
「ふむ、そうか。よし、次の鑑定官も確認してくれ」
そうして三人の鑑定官は顕微鏡を使い鑑定を終えた。
「アルトよ、お前の言っていたことは正しかった。直ぐにでもゴミに対して対策を練らなくてはな……」
「あっ、陛下。それについてですが、一部ですが対策の道具を御用意致しました。」
「え、えっと……道具をか?」
「はい、道具です。今までは直接手で拾ってきたゴミは小さいものだけしか取れませんが、火バサミと言う道具を、入れ物にはこの背負い籠を、集める道具として一輪車と手押し車を御準備致しました」
「成る程な…鍛治などで使う火バサミと、農村で使う背負い籠、商業ギルドで使う背負い籠か……一輪車なるものは初めて見るみたいだが……」
そうなのだ、一輪車以外はこの世界にも存在していたので、買えばよかったんだが勢いで全部作ってしまった。
「顕微鏡と同じく作成に成功致しました」
「作ったのか……アルトよこの顕微鏡と一輪車やらはまた作るのは可能か?」
「可能です。顕微鏡は試作品も含め、8台現時点で御用意しています。一輪車は3台しかありませんが……」
時間がなくそれ以上は作れなかったんだよな……。
「試作品?その試作品はこれと同じように見ることが出来るのか?」
試作品は倍率が低いんだよな……。
「いえ……精々、植物の繊維を見るくらいにしか見えません」
「……しか?十分ではないのか?それ等を購入出来ないか?」
「え、購入ですか?そんな、お譲り致しますよ?」
買うって……値段も決めていないんだが……。
「普通ならそれで良いのだが、アルトの功績は余りにもデカ過ぎるのだ。この事で、これからの死ぬ確率や怪我や病で現役引退しないで良い者も大分減るであろう。このゴミ拾い道具や顕微鏡も含め、王城で購入といたす。そして、報酬を踏まえ金貨15000を渡す。後程玉座の間に来るのだ」
「は、はっ!」
多すぎでないかい?土地や道具に材料を買ったが、金貨4000もしなかったんだけど?
「して、この一輪車と顕微鏡は作って貰うことは出来ぬか?一輪車1台で銀貨8枚、顕微鏡1台で金貨10枚は出す」
高過ぎなようにも見えるんだけど……良いのか?本当に特に顕微鏡……。
「作るのは可能です。が、設計図があるので、それらを渡しましょうか?」
作るのは良いが、そうすると自分の時間が無くなるんをだよな……。
「設計図もあるのか……なら、商業ギルドと提携し、販売委託する方が良かろう。さすれば、定期的に売れ数に応じお金を稼げるからな。王城は商業ギルドで出来上がりを購入せれば良い」
成る程……そう言ったやり方もあるのか。
それなら早速これが終わったら商業ギルドに行ってみるか。
「畏まりました。そのように致します」
「うむ、おい。商業ギルドの係を呼んでくるのだ」
あっ、行くんじゃなく呼ぶのね。
流石父上だ。
俺なんか担当のクルオラさんと会うのに苦労したんだが……。
その後で、王座の間に行きアルトは予定通りに金貨15000枚をもらった。
この量、流石にアイテムボックスに入れるのも不自然か……かといって、量がかなり入る不思議バックに入れるのもなぁ……。
という事で、お金は部屋に届けてもらうこととなり、自室にてアイテムボックスへ収納する。
昼食のため食卓の間に行き、城に残っている兄弟達と父上に母上達と食事をする。
その最中に商業ギルドの副ギルド長のクルオラが到着したって連絡が入り、何故かクルオラと昼食を取る俺達であった。
そんなクルオラはガチガチに緊張し、食事をしていた。
食事も終わり、研究室に来た俺はクルオラと父上達と一緒に来ていた。
顕微鏡と一輪車の使用説明と、作ったその目的をクルオラに父上が話す。
クルオラさんはガチガチに固まったままだったが、顕微鏡を実際に使用したいと言ってきたため、ゼロスが使用手順を説明しながらゴミから採取したものをセットしていく。
「……これは!?動いている…… 」
「顕微鏡と言う道具は、アルトが町に出た際にゴミが溢れている事に異を唱え、それがいかに危険な事か教えるために作った道具だ。
実際に細菌やウイルスがそこには見えるが、どの生物も、身体に害なす生物ばかりなのだ。その顕微鏡を使えば……」
おぉ、父上が説明してくれるとは……何とも楽で言いな……。
細菌やウイルスを俺が見つけたものだけ、どんな危険性あるか、また病や怪我の対処法を書いた、研究レポートはどうやら必要はないようだ。
顕微鏡を見るだけでは、鑑定の魔法が使えない人はいちいち調べないといけないもんな……。
鑑定マジ便利。
「是非、うちのギルドで扱いたい商品です。こちらの試作品の顕微鏡も素晴らしい品です!これは売れます!他国だけではなく、商業ギルドでも欲しいし、薬屋などでもそうです!」
あっ、どうやら話しは決まったようだ。
「で、商業ギルドに委託販売・生産を頼めないか?」
「是非!やらせて頂きとうございます!」
値段も決まり、販売価格は顕微鏡1台で金貨12枚一輪車は1台で銀貨10枚になった。
で、俺の販売ごとの印税みたいなものがあるらしく、売れれば販売価格の4割ほど貰えるらしい。
で、商業ギルドが管理する口座開設も言われたのでお願いした。
お金は既に十分にあるが、貰えるなら嬉しいものだ。
こうやって手に入れたお金は公で使えるからな。
序でに今月分のポーションの販売も出来ないだろうか?
「クルオラさん、今月分のポーション今納品出来ますか?」
「勿論です!」
クルオラさんは目をキラキラにさせている。
目がお金になっている……凄いな、初めて見たよ。
ここで、取り出すのもどうかと思い一度自室に戻る俺に対して、ゼロスが運搬を手伝ってくれた。
何気に万能だよなゼロス……流石俺専属の執事だな。
で、俺が用意したポーションは10等級から6等級の回復ポーションだ。
内訳は
10等級 20本
9等級 20本
8等級 15本
7等級 10本
6等級 5本 の70本だ。
流石に執事ゼロスだけでは厳しく、メイド達にも運ぶのを手伝ってもらったが、クルオラさんが、ポーションを手に取り見て、いきなり吹き出した。
「ぶっ!ハ、ハイポーション!!これもアルト様が作られたのですか!?」
「はい、何とか作れました。数は少ないんですか……これで今月分のノルマは達成ですかね?」
「ノルマ……そうなります。と、言いますか十分すぎますよ……」
「まぁ、始めにノルマは20個の納品って言われてましたが、ポーションのランクを聞いていなかったので安心しました」
「……成る程でございます。ポーションの納品20個ですから、本来は9等級でよろしかったのですが……すみません、説明不足になりまして」
あっ、一般にポーションと言ったら9等級なのか……知らなかった。
これなら頑張ってハイポーションにチャレンジしなくて良かったのか……。
ま、まぁ、作れたので良しとしよう。
「こちらがポーションの代金になります。そして、こちらが明細書ですね」
そう言われクルオラが出した金額は、金貨5枚に銀貨16枚だった。
ふむふむ、一本辺りのポーションの買い取り価格か……。
えっと、
下級回復ポーション10等級銅貨50枚
ポーション9等級銀貨1枚
ロー回復ポーション8等級銀貨5枚
ミドル回復ポーション7等級銀貨10枚
ハイ回復ポーション6等級銀貨50枚
案外稼げるな。
1ヶ月真面目にポーションを作れば今の五倍は貰えるようになるだろうが、毎日ポーション漬けなのも気が参るし、他のにもチャレンジしてみるか。
「それにアルト様は、顕微鏡と一輪車の委託販売と生産の分が有りますので、これからのノルマは免除になります。……ただ、これからもポーションの納品はして頂けると大変助かります。何分、市場ではポーション不足になっていまして……」
「免除ですか!助かります!ポーションは作れるときに持っていきます。……ただ、商業ギルドに行ってもクルオラさんに会えないので、受付にそのまま販売しても宜しいですか?」
「えっ?会えないとは?」
「先日、用がありクルオラさんを訪ねたのですが、係の者にギルドランクが低く、まして、紹介状が無いと引き継げないと言われまして……」
「ほう?それはどういう意味だ。副ギルド長よ?」
「そ、そんな!す、すみません!もう一度従業員に徹底致します!アルト様こちらをお持ちください」
そう言ってクルオラは服に着いていたアクセサリーを差し出す。
「あの……これはなんですか?」
「こちらのアクセサリーは、副ギルド長の証であると同時に、受付に見せると私に引き継ぐためのアクセサリーでもあります」
おい、クルオラよ。
これを初めから渡してくれれば、良かったんじゃないのか?
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