第12話

「では皆様、他に良い案は無いでしょうか?」


 ここは会議室だ。

 顕微鏡を使い、ゴミに付着している細菌やウイルスが、いつか人的被害をもたらすか分からないため、父上や各大臣達と各部署の責任者達による緊急で対策会議が開かれた。


「一度綺麗に掃除をした方が宜しいんじゃないかしら?それが一番始めにすることよね?」


 うん、それは俺も正解だと思う。

 回りにゴミが散乱している状態で、ゴミ箱を置いても、ゴミをゴミ箱に捨てる人間は何人いるって話だよな。


「……そ、そうですね。まずは掃除が大事なんでしょうが、誰にやらせるかも問題ではないでしょうか?」


 うん、そうだな……騎士団や魔術師団にやってもらったら住民の意識漬けにはなるんじゃないかな?問題は貴族組だよな……。

 一部の貴族の人は絶対文句言うだろう。

 後、雇用を考えてスラム住人や、非戦闘職の冒険者だな。


 だが、それくらいほ父上も考えているだろうな。


「……うむ、それは騎士団や魔術師団にお願いしようと思う。だが、それ以前にゴミが増える事についての危険性を住民に……」


 やっぱり、父上も考えていたみたいだ。

 なら、他に大切なことは何だろうか?

 各露店にゴミ箱を設置義務にし、町の決まった箇所にもゴミ箱を置いた方が良いだろうな。

 後はそれを定期的に回収する人もいるだろう。

 ……案外そう考えるとお金掛かるんだな……。

 後は王都に住む人に周知徹底は出来ても、他所から期間限定で来る、商隊や冒険者に対しては、街門で入る際に伝えてもらえば何とかなるか?

 最悪、完璧にポイ捨ては無くならないが、今よりも減らせる事が重要だから、後は町の巡回兵や警備兵の方達に見つけ次第注意して貰えれば良いんじゃないか?


「「「「………………では、そのように……」」」」

「……うむ。決まったな」


 んっ?いつの間にか会議が終了している?

 しまった、何も聞いていなかったな……取り敢えず、分かったふりをしといた方が良いのかな?


「……で、アルトよ」


 父上が、こちらに話しかけてきた。


 やば、話し聞いていない事がそうそうにバレたのだろうか……怒こられるのですかね?


「は、はっ、陛下……」

「お前は頭の中で考えていることが、どうも口に出るタイプみたいだ。今は良いが気を付けてなさい」

「えっ?……あの…何処から私、独り言を……?」

「……会議が始まって直ぐだな」


 最初からですか?最初からなのですか!やってしまった。

 どうやら無意識に口に出していたようだ……恥ずかし過ぎる!


 そう思いアルトは真っ赤になり、頭を押さえ1人小さい悲鳴を上げていた。



 ◇◇◇


 緊急対策会議から1ヶ月が過ぎ、本日は騎士団・魔術師団・スラム住人や王都住民に冒険者達による、王都清掃当日だ。

 それぞれに区画分け清掃が始まる。


 何故に緊急対策会議が開かれて、ここまでの日にちが掛かったのは、全員のスケジュール調整は勿論の事、掃除道具が足りなすぎたのが原因だ。


 生ゴミが長い期間捨ててあった場所は、腐った液のせいで、地面や壁が変色している事がわかり、アルトはデッキブラシの代わりになる物や、蓋が着いているチリトリを作成していた。


 アルトも一輪車やそれらを作り続け、デッキブラシとチリトリも商業ギルドに委託製造・販売をしてもらい、印税が更に増えた。


 それにより、アルトと商業ギルドの下請けの鍛治職人の悲鳴が作業場には響いていた。

 一方で、商業ギルド自体は作れば作っただけ、国が購入しウハウハだったとか……。


 で、今回参加した騎士団や魔術師団以外には、金額は少ないが報酬が与えられるようだ。

 ここはアルトは関与していないので、どんな報酬体制か分からないが、そのお陰で皆のやる気も高いように見える。



 清掃と言えどここまで来ればもうお祭りに近い、アルトはゼロスに事前に相談しあることが実行された。

 これは父上も了承済みだ。


 それは、王都中の飲食店と露店にお願いをして、参加者のみに昼食と水分の無料提供だ。

 ただ、ただで提供は当たり前だが出来ないので、アルトはこれまでに手に入れたお金を散財した。


 やり方は配布した数を控え申告してもらい、その数に応じた支払いだ。

 それは優秀なゼロスに丸投げをし、ゼロスは部下を使い共に王都中の飲食店と露店を回り、こちらも悲鳴を上げていた。


 ただ、王都の清掃1つで無料配布の食材や掃除道具の素材集め等で、冒険者ギルドの方も大量の依頼が殺到し、冒険者を含めギルド関係者も悲鳴を上げていたし、食材を取り扱う商店には大量の注文が上がり。

 回りの商店も下ろしている農家も含め、王都中が悲鳴を上げていた。


 バタバタした日にちが過ぎ、そのお陰で準備が完璧に調った。


 結果、あまりの忙しさで至るところから悲鳴が上がっていたのは事実だが、全員がそれにより、あり得ないほど臨時収入が上がり皆喜んでいた。


 初めは皆面倒な……誰だよそんな事言った奴は!って、なっていたんだが、それにより得られる収入のおかげで今は殆どの人が、清掃に対し賛同している。


 貴族の反対だった者達も、国王である父上カインド・ディオング・アルベルトには逆らえないので、今は手足のように働き媚を売っているしな。


 だが、順調にも思えたさなか、昼食後の作業中に、ある問題が出始めていた。


「ここにも居たぞ!」

「きゃーっ!こっちにもよ!」

「あらん!やぁだわ!」

「倒すのだ!見つけ次第討伐するのだ!」


 町の至るところからそんな声が聞こえ始めていた。


 名 無し 種族 ラットラット

 町等に住み着く魔物で有名。

 彼らの住みかは主に廃墟や地下室等のひんやりした場所を好むが、数が増えすぎるとゴミ捨て場の食料が豊富なところにも住んでいる。警戒心が強く臆病で、直ぐに逃げ出す。

 常に集団で暮らしているため、一匹見たら百匹は覚悟していた方が良いだろう。


 ラットラットか訳するとネズミネズミか?変な名前だな。

 んー、地球のネズミと比べて魔物なだけに厄介な相手なのか……。


 かなりの数の冒険者が居たのが幸いしたな。

 着実に倒しているみたいだし、こっちに来たら俺も倒してみるか。


 さて、ゴミ拾い、ゴミ拾いっと。


「キュー!」


 うぉ!ビックリした!……ってラットラットの子供か。

 ふむ、ネズミと言うよりはハムスターに近いなコイツ……さっき見かけたラットラットよりは身体も小降りで、真っ白だな。

 ラットラットは小さい時は可愛いのかもしれないな。


 ……って、こんなに可愛いラットラット倒すの躊躇するな……。


「君!何している!早く倒すんだ!」


 そう、考えていると知らない町の人が丁寧にラットラットの子供を倒していった。


「あ……」

「ラットラットは見た目こそ可愛いが魔物なんだ、見掛けたら倒さないとゴミ掃除も終わらないぞ?」

「あぁ、そうですね……ありがとうございます」

「あぁ。ほら早くここを綺麗にしてしまおう」

「は、はい……」


 町の人に流されるまま、ラットラットを倒しながらゴミを回収していくアルトだった。


 それにしても、このラットラット増えすぎじゃないか?

 見た目は可愛いが、魔物でネズミだから変なウイルスも居たら大変だな……。


 何匹か捕まえて、調べてみるか?

 ……でも、至るところに人がいる今は……あぁ、うむ、無理だな。

 清掃が終わってからにするか。


 あ、そう言えば王都で出たゴミは王都の外に持っていって居るんだったか……王都は綺麗になったが、そのゴミ置き場……ヤバくね?

 キチンと処理も出来ず放置されていると聞いていたが、取り敢えず行ってみるか。


 アルトはゴミ置き場が気になり、ゴミ回収している荷車に乗せてもらい人生二回目の門から外へ出た。


 その途中に、何台もゴミ置き場に行き帰りの荷車に会うが、どの荷車も生ゴミ等を積んでいたため、匂いが移り酷いことになっている。


 うわぁ、父上一体何台の荷車を用意したんだ?

 馬で引くタイプの荷車と人力で引くタイプの荷車色々あるんだな……。

 どちらも、道が舗装されていない分大変なんだよな……。


 って!くさっ!うぁ、くさっ!

 まじか!なんだこの匂い!後ろに積んでいるゴミの匂いがまだ可愛いくらいだよ!

 つて、何処から匂ってくるんだ!


「はっはっは!どうだ、臭いだろ?」

「臭すぎですよ!この匂いってゴミ置き場からですか?」


 おっちゃんはもう何往復もしているから慣れたと言ったが、これは慣れるものなのか?


「そうだ、まぁ、お陰と言うのかこの匂いには魔物も寄り付かんようになったな。わっはっはっは!」


 どんだけ臭いんだよ!だが、こんな広範囲に匂う何て……いや、よそう。

 何か、嫌な予感しかしないな。


「いや……笑い事じゃ無いですよ。この匂い用はがないなら俺達も近付きたくないですよ……」

「はっはっは!だが、スライムやネズミ何かはゴミ山に住んでいるがな!」


 スライム?ファンタジーの定番の丸い奴か?それか、ドロドロした奴どっちなんだ?


「えっ、スライム?」

「おぉ?坊主なんだ?スライムを知らないのか?」

「知らない……どんな魔物なの?」

「あぁ、どんな物でも消化してしまう魔物でな、ゴミ置き場に住んでいてそいつらが居なけりゃ等の昔に、ゴミ置き場のゴミは王都まで貯まっていると言われているんだよ」

「……魔物なんですよね?」

「魔物だな」

「……魔物にゴミ処理をお願いをしている情況か……って、それでもゴミが溜まっている理由は、スライムの消化量を遥かに上回る量のゴミが捨てられているんですか?」

「んーっ、坊主は賢いのな。だがな、俺には分からんな」

「そうなんですね」

「おっ、そろそろゴミ捨て場につくぞ……ほら、あれだ」

「うわぁ……」


 おっちゃんに言われ見えてきたゴミ置き場、そこにも人が集まり、荷車からゴミを捨てていくが、問題はそこではない。

 問題はその奥に見えるゴミの山だ。


 そこにあるゴミは、小さな村なら簡単に埋めてしまえる程のゴミの山がいくつもあった。


 これは予想以上の量だよな……よく病気が発生しないもんだな。

 って、あれかスライムは。

 うん、この世界のスライムはドロドロ系だな。


 名 無し 種族 ワクチンスライム

 スライムの進化系の1つで、細菌やウィルス耐性を持ち好んでそれらのみを取り込む。

 スライムは通常丸い形をし、跳ねたり転がりながら移動するが、ワクチンスライムは液状化し、物との間に潜り込み目当ての物まで移動する。

 ただ、進化によって物を消化する能力は低下し、好んでは消化しなくなった。


 あぁ、訂正この世界のスライムは丸いみたいだな。

 しかも進化によってその姿が変わるのか……って、魔物は進化するんだな。

 と言う事は、うちのスパローやウィードにコボルトもいつか進化するのかな?

 それはそれで楽しみだ。


 にしても、進化したことにより病原菌が発生しなくなったのは、コイツらのお陰か……。

 だが、その進化のより進化能力が低下し、ゴミがここまで増えたのか……。


 確かにこう見ると、ワクチンスライムが多くかえってスライムらしき姿は見かけないな。


「ねぇ、おっちゃん。あのスライムはワクチンスライムだよね?普通のスライムは何処に居るの?」

「おっちゃんって、俺はまだ27歳なんだが……って、あれが普通のスライム何じゃないのか?ワクチン?初めて知ったよ。あれはワクチンスライムって言うのな」


 まじか、スライム違いを起こしているみたいだな。

 なんだ?おっちゃんは普通のスライム見たこと無いのか?


「お、じゃあれか?」


 おっちゃんが指差すように違う種類の茶色いスライムが見えた。


 名 無し 種族 ダートスライム

 スライムの進化系の1つ。

 汚れを好んで消化するが、それ以外の物質は消化しないと言う事も出来るが、餌である汚れが少なくなると、空腹を紛らわせるため他の物質も取り込み始める。

 その為、餌場が少ないところでは余り繁殖はしない。


 うーん、アイツもスライムの進化系か。

 スライムの進化系ばかりで肝心のスライム事態は見つからないな……。


「おっちゃん、アイツも違うみたいだよ。あれはダートスライムって言うんだって」

「坊主……もしかして鑑定持ちか?」

「うん、そんなとこ」

「なんだ、なら坊主の将来は商人か王宮勤めってか!将来安泰で良いじゃねぇーか!ワッハッハ!」


 その笑いが、まだ若いのにおっちゃんって言われるんだよ。まぁ、俺にだけどな。


 そうして、おっちゃんのゴミ下ろしの順番が来て、俺は邪魔にならないようにその場を離れる。


「おっ?坊主、帰りはどうするよ?」

「帰りは自分で帰れるんで気にしないでください」

「そうか?まっ、もし荷車が無かったら俺はあと何往復するから、帰るときは声を掛けてくれ」

「はい、ありがとうございます」


 そう言っておっちゃんと別れ、ゴミ山に近付き調べものをする。



 さて、流石にスライムが居るとしても、ゴミ山が全く減っていない現状、このゴミ達をどうにかしなきゃいけないんだよな。


 アルトは人目がつかない奥の方へと急ぎ、暫く走る。

 いくら走ってもゴミ山は相変わらず何処までも続いているように見え、その光景を見て多少顔が引きつるのが自分でも分かった。



 まず始めに、アイテムボックスに収納してみるか。


 普通の収納なら手が触れている物を収納するが、【時空間魔法】がレベルアップした際に、範囲収納も出来るようになっていたアルトは、それを使いゴミ山の収納を開始する。


「アイテムボックス、範囲収納!」


 叫んでみたが、普通は叫ばず魔法の詠唱をしないといけないのだが、不思議な事にアルトは未だ詠唱を唱えたことがなく、魔法をイメージし魔法を発動をしていた。


 ゴミ山の下に魔方陣が現れた瞬間に、魔方陣の範囲内に入ったゴミ山が、次々にアイテムボックスに収納され、早いペースで山が小さくなっている。


 ゴミの山を1つ収納するのに大体掛かった時間は3分位で、その場には魔物のみが取り残された。


 うわぁ、居るは居るは。

 ダートスライムにワクチンスライムにラットラット……あれは……


 名 無し 種族 スライム

 思考回路は有るのか分からないが、触れたものを取り込み消化しようとする。

 魔力と栄養が基準値を越えると分裂し、行動範囲を広める。

 スライムは魔物の中でも進化系統が広く、最も進化しやすいと言われているが、住む環境に応じて進化しているので、未だ全ての進化系統が揃っていない。


 成る程な、中々スライムを育てるのも楽しそうだな。

 だが、流石にこの数は要らないな……。


 倒しても良いが、そうするとゴミ山が更に減らなく、汚くなるからそっとしといた方が良いんだよな?


 そう言いながらもアルトは、其々の魔物達を2匹づつを仲間にし、山奥の洞窟に移動しゴミを取り出し、そいつ等を残しゴミ山に戻る。


 あと、何山か収納してみるか。

 奥にあるの程、古いゴミなんだろうな。


 次々とゴミ山を収納していたアルトは、ここで【時空間魔法】のレベルがアップしたことが分かった。



 それは新たなスキルを覚えたため、レベルアップしたことが分かった。


 えっと……何々?アイテムボックスのフォルダー分けが可能になり。

 其々の時間経過設定が出来るのか……。

 ゲームかよ!……いや、かなり便利だから助かったが。


 さっそくフォルダを作成っと、武器フォルダの大分類フォルダの中に更なるフォルダを作り、片手剣や槍等のフォルダを作って自動振り分け……おぉ、武器フォルダだけでもスッキリしたな。


 それなら次は……防具に洋服にアクセサリーに靴と道具類と俺の作成品に食料とお金に……って、フォルダも一杯あるな。

 まぁ、今までに比べたらアイテムボックスも見やすくなったもんだ。

 と、今入れたゴミか……ゴミを大分類に、生ゴミと金属と布物に木材……宝石も有るのか……割れた〇〇や、ヒビが入った〇〇ってのが名前に入っているが……。

 汚いが、まだ使えそうな物まであるのな。


 案外、金属もそれなりに色んな種類があるのか……このまま溶かして新たな道具か何かにすると質は悪くなるが、使えそうだよな。


 案外宝の山か何かなのかな?

 そうとなれば、頑張ってみるか。

 バレない範囲で。



 そうやって、ゴミを捨てに来た人にバレないように奥のゴミを片付けていくアルト。

 ゴミの山が無くなりその場に取り残されて、まだ仲間にしていない種類の魔物達を仲間にし、山奥の洞窟に居た仲間やスパロー達を集め、魔物達を間引いていく事にした。

 このまま放置すれば、間違いなく王都や近隣の村に被害が出そうだったので、ゴミ山を収納し、現れた何百匹何千もの魔物を蹴散らしていく。


 流石に仲間の数が足りないと思い、追加で仲間にし何とか、今まで収納したゴミ山分を討伐出来たのは、夕方近くになっていた。



「あぁ、疲れた……」


 仲間の魔物は山奥の洞窟に戻そうかと思ったが、コボルトがゴミ山に残り引き続き魔物を狩ると言っていたので、それにならい他の仲間もゴミ山で魔物を狩ると言う意思表示が見えたため、コボルトになにも入っていないバッグと各種回復ポーション入れ渡しておいた。

 夜が苦手な筈のスパローもゴミ山に置いて1人王都に戻ってきたんだが、王都では無事にあらかた掃除が終了していた。

 後は、前みたいにならないように清掃に力を入れて、冒険者ギルド主体で町の清掃をしてもらう事になったらしい。

 清掃の仕事は、ギルド会員だけではなく一般人やスラム住人達も受けることが可能と言う事で、一番にスラム住人が歓喜したらしい。


「ねぇ、そこのボク?良かったら生活魔法はいかがかしら?」

「生活魔法?」

「あら、生活魔法知らないの?まぁ、生活魔法って言っても、百人に一人って言われてるからね」


 百人に一人?それってかなり多いんじゃ?


「そうなの?生活魔法ってなんなの?」

「生活魔法は攻撃魔法みたいに強くなく、回復魔法みたいなのはないけど、生活に役に立つ魔法の事で、飲み水を出したり、火種を出したり、汚れた物を綺麗にしたりって様々なの。どれも属性魔法の劣化番みたいな存在だけど、とっても便利。それが生活魔法よ」

「へぇ、じゃぁ。ゴミの匂いが衣服と身体に着いたからお願いしようかな」

「分かったわ、銅貨10枚になるけど良いかしら?」


 あ、やっぱり料金制なんだな。

 って言うか、5歳児にお金をってよく言えたなこの子。


「何よ?あなた貴族のお子さんよね?だったらお金持ってるんじゃないかな?」


 うん、ここだけ聞けば只の優しいタカりだな。ってか、また心の声が漏れていたか?


 だがそうか、この服装が原因か……次はもっと質素なのを手に入れよう。


「はい、銅貨」

「あらやだ、やっぱり持っているじゃない。いくわよ?」

「クリーン!」


 女の子は生活魔法のクリーンを唱え、魔方陣が足元に出来上がり、俺に着いている匂いや汚れを浄化していった。


「へぇーっ、案外さっぱりするんだね」

「まいど!じゃ、またね」

「あ、はい。ありがとうございます」


 そうして俺は王城へと帰っていった。





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