第58話

「わっはっはっは!すげぇ!ほんとにすげぇぜ!あの魔法に、あの戦闘力、その実力が普通に常時だせれるならCランク上位か?いやー良いもん見れたぜ!」


 ふむ、俺の実力はCランクとな?

 もう少し上位ランクと互角くらいは思っていたんだけど、確かに冒険者歴は先程始まったばかりなので、そういった冒険者ならではの技術がないせいなのか?


「その能力でど新人のGランクったぁ、詐欺だろ詐欺!わっはっはっは!どうだ、受付の嬢ちゃんよ、こいつのランクを適正に持っていけねぇかな?」


 んっ?適正に持っていく?……おっ!ということはランクが上がるのか?

 へぇ~っ、こんなことでもランクが上がるのか……知らなかった。

 だが、ランクが上がるのは嬉しいな。

 意味はないけど……えっ?だって、ランクが上がる意味って?

 他にも色々あるが、大まかには報酬額が増え、以来難易度が高くなり、知名度も上がって、最高ランクになれば王との会談も許可される。

 まぁ、今の俺なら意味がないメリットだ。


「……すみません!規則なのでそれは出来ないんです!」


 出来ないのかよ!


「わっはっはっは!だよな、分かっていたが、いけると思ったんだがなぁ。まっ、残念だったな新人。頑張れよ!いやーっ、良いもん見れたぜ!」


 と、言いながらギルドを出ていくスキンヘッドの冒険者は、ギルドを出ていってもずっと笑い声が聞こえてきて、その声が段々と遠ざかっていっている。


 俺も含め、回りに居た冒険者の人もその出ていった冒険者に釘付けで、出ていった後もその視線は、ギルドの入口に向いている。


「……あ、あれは…サルバ…鮮血のサルバ……」


 ん?鮮血のサルバ?何だ?それ、本名か?


「って、知らないのか?鮮血のサルバを」


 うむ、また考え事が声に出ていたらしい。


「まぁ、変わった名前何ですね、あのスキンヘッ……」

「うぉい!それは禁句だぞ!それを言ったら最後、鮮血のサルバにやられちまうよ!」


 スキンヘッドの冒険者は『鮮血のサルバ』と言う名前らしいが、変な名前だったし、変な人だったしで余りか変わらない方がよさそうだ。

 正直あのノリがずっとなら疲れそうだ。


 さて、依頼依頼っと……。


 そして、アルトはクエストボードのある方へ移動していたら、先程まで傷をおった冒険者と、その冒険者を連れてきた冒険者がアルトの前に出てきた。


「ちょっと待てよ!」


 へっ?何があったの?って、先程の怪我の冒険者達か……?傷も癒し、もう用はないはず。

 あのスキンヘッドの鮮血のサルバ?のせいで印象は薄いだろうが、礼はいらないと二人に言ったはずだが?

 って、そもそも礼どころか少し怒ってらっしゃる?何故に?


「いきなり、何処に行くんだよ!」


 うん、何故か怒ってらっしゃるようだ。


「えっと……クエストを受けにクエストボードのとこに?」


 まぁ、素直に答えたんだが、予想外の事がおきた。


「なに!クエストだと!……よし!俺等も連れてきやがれ!」

「お断りします 」


 ふむ、外で怪我の怪我をしたから二人では外に行きたくないのかな?


「な、何だと……くっ、ころ!」


 いや、何処で学んだし…その言葉はよ……見た目20代だとしてもその言葉はいらないよ!しかも、二人とも男だし!


「いや、待ってくれ!俺等は恩を返してぇんだ!お金は幾らかあるが、何とか高ランクポーションを払えるぐらいで、さっきのアサシンシャドーの分は……その…持ち合わせがねぇんだ……だから、依頼を手伝わせてくれねぇーか?」


 口は悪いが、どうやら良い人のようだ。

 依頼を手伝ってもらうにしても、バルムにどんな依頼があるか分かんない。

 だが確かに先輩である冒険者に、クエスト毎のやり方なり、冒険者の技術を教わるのは確かに嬉しい。


 なら、もう答えは決まっている。



「お断りします」

「「えっ……ってことは……体で返さなきゃなんねぇーのか!!」」


 おい、ちょっとまて!

 言葉!言葉がおかしい!


「いやいやいやいや!そりゃぁ断りますって!確かに怪我は治ったにしても、失った血は戻ってないんです。ポーションを買うお金があったら、体に良い食事をとって、ゆっくり寝てください!」


 そりゃぁ、そうだ。

 アルトにはどのくらい血を失ったのかは分からないが、怪我の具合から見ても相当血が流れていたはずだ。

 いくら怪我が治ったにしてもクエストが出来る状態のはずがない。


「ぼ、坊主……おめぇ、良いやつなんだな……」


 アルトの話を聞いて、二人の冒険者はそう言って涙腺を弱め……


「おっしゃゃゃゃぁ!今日はとことんのむぞぉぉぉお!」

「いや!体に良い食事と睡眠はどこ行った!」


 やばい、バルムの冒険者はこんなノリのやつが多いのか?

 ま、まさかな……。


 ギルドに入っては休まる時間のなかったアルトは、体験したことがない冒険者のノリに冷や汗を流す。


「おっ!怪我の復帰祝いか?それなら俺達も混ぜろや!」


 もう知らん!


 その後は、受付でクエストを登録しそのままギルトを出る。

 受付で魔石を買い取る話があったものの、魔石はアディで魔力電気を作るのに必要なんで、売ることはしない。

 何気に住民が増え、消費魔力電気が上がってきている。


 とは言っても、あのスタンピード騒ぎの時に手に入れた魔石で消費魔力電気が上がっても、何年も持つ計算で定期的に俺の従魔達が 、ダンジョンから魔石を持ってきている。


 ので、売っても問題はないが、念のために持っているようにする。


 冒険者ギルドを出た俺は、受付でもらった地図を片手にバルムの町を散策ついでに、クエストの発行者の元へ向かう。


 俺が受けたクエストは全部で3つで、受付に聞くとそのクエストは同じ場所で行えるみたいだが、同時に行おうとした人は今まで誰もいないとか。


 で今回のクエストは

 ○溝掃除

 排水路に溜まったゴミやヘドロの掃除。

 ○ゴミ拾い

 通りに捨てられたゴミの撤去。

 ○ゴミの運搬

 集められたゴミ等を町の外の所定の処分場に持っていく。


 だった。

 ……まぁ、一人でしたら何日か掛かる仕事みたいだけど、問題はないだろう。

 普段から王都近くのゴミ山の回収をし、アディのダンジョンに捨てに行く作業を定期的にしているから馴れているものだ。


「おや?冒険者……かね?ここに来たのは清掃計の依頼かな?」


 そうこう考えているうちに、依頼主であるこの区画をまとめている区画長の元へたどり着いた。


「はい、受注リストです。クエストの作業場はどちらですか?」

「おや、丁寧だね。まっ、冒険者が丁寧なのも新人の時だけさね。って、3つも受けるのかい?」

「はい」

「……そうかいそうかい。一様依頼期限は受注から1週間はあるから、がんばっておくれ。報酬は仕事量の歩合制。場所はここら一帯の溝や通りさ。地図でいうとこっからここまでで、ゴミ捨て場は城門の衛兵に聞いたら分かるさね」

「なるほど……ここら一帯か、確かに範囲は広そうですね。分かりました、早速始めたいと思います」


 受注リストを渡し、終わったらサインを貰って冒険者ギルドに変える流れか。

 ここの区画は案外拾いが、問題はないだろう。


 そうして区画長の家を出て、早速清掃を開始しようとしたところで、声を掛けられた。


「おっ、おめぇはさっきのどんでも坊主!」


 はぁ、近くに居ることは分かっていたが、まさか声を掛けられるとは思わなかったな。


「えっと、鮮血のサルバ…さん?」

「おっ、冒険者から聞いたか?だが、その異名は気に入ってなくてな、サルバでいい」

「では、サルバさんまた」


 そう挨拶をしこの場を後にしようとした。が、


「おいおいおい!逃げるな逃げるな!せっかく会ったんだ、話をしようじゃないか!」

「いえ、クエスト中ですので失礼します」

「なんだ、クエスト中かよ……あぁ、区画長のとこから出てきたなら、うげぇ、掃除とか か。俺ぁこのクエストは苦手なんだよな……で、坊主は何を受けたんだ?」

「はぁ、こちらですが?」

「はぁ?バカじゃねぇのかおめぇ……こんないっぺんに終る量かよ!……悪いこたぁ言わねぇ、どれか1つに絞った方がいいぞ?まじで……終るわけねぇ……」

「馴れているんで大丈夫ですよ」

「そいかよ、なら無理はすんなよ?またな!」

「はぁ、では」


「改めて見るが、元領主がまったくきに町を見ていないのが分かるな。一時期の王都より酷いぞこれは……」


 排水路にはゴミやヘドロが詰まり、所々溢れていて、道の端にはゴミの山……。される

 確かに普通にしていたら、何日掛かるやら……。

 さてとやっていきますかね。



「ん?坊主さっきぶりだな!」

「えっと……サルバさん、先程ぶりです。……何をされてるんでしょうか?」


 このクエストで区画の清掃をしていた俺だが、この区画の最後のエリアとも言える場所に辿り着いたら、異様で先程あった鮮血のサルバが多きな袋をいつくも道端に溜め何かをしている。


「ん、あぁ、何でもねぇよ、そう、俺の趣味だ、趣味。ここは俺の縄張りなんで、おめぇは他所に行けよな」

「はぁ、ですがここを終わらせないと、僕のクエストは終わらないんですよ?」


 いや、縄張りって言ってもこの区画を片付けないとクエストの完了が出来ないんだよな……それに、スキンヘッドの冒険者の趣味がゴミ拾いなんて不自然なことを本人は気付いていないのか?


「いやいや、他のところも似たように、溢れていただろ?先にそっちをすれば良いって言ってるんだよ!」

「あの……ここの辺りが最後で、他の場所は先程終わったんですが……」


 このエリアは1番端っこになるんだから、他を無視して来るはずないのにな…。


「えっ?まだ半刻も経ってないが?嘘だろ?」

「なら、見て来て下さい」


 まぁ、時間は有限だから少し急いだお陰もあり、確かにそれくらいの時間しか経ってはいないが、早すぎたか?……まっ、問題ないだろ。少なくなったといっても住民も、住んでいる所がキレイになっているんだからな。


「嘘だったら血を見るぞ?」


 そう言いながらサルバはドカトカ歩きながらどこかへ行く。


 はぁ、やっと行った。

 これで作業が出来るな。


 サルバが去ったことによって、スキルをフルに使い、ゴミを察知した瞬間に離れた状態で、アイテムボックスに収納していく。

 溝に溜まったヘドロやゴミも、道に落ちている生活ゴミや糞尿も構わず収納して行った。


「よし、終わり」


 体力は早歩きで歩きながら、ゴミを収納していっただけなので、全く問題は無いがスキルをフルに使いまくったおかげで精神的に少し疲れた所だ。

 そんな時、またスキンヘッドの冒険者で、鮮血のサルバと呼ばれる男が慌てたようにやってきた。


「ぼ、坊主!」


「何ですか、またですか?……サルバさん一体どうされたんですか?」


 今日初めて会ったにしては、物凄くフランクに話してくる冒険者にため息をつきそう言う。


「あの区画のゴミやらがキレイに無くなって……って!ここもキレイになってやがる……」

「はぁ、ゴミ1つ残さないように片付けましたから。まっ、その後で出たゴミは帰りに点検しながら回収していくので、忙しいんですよ?では、僕は区画長の所へ作業の終了を報告して、城門の付近のゴミ出しに向かいますので」

「あ、あぁ…」


 そう強引に別れ、区画長の所へやってきた。


「どうしたのかの、もう切り上げるのかな?思ったより、根を上げるの早かったの……」

「清掃は終わったので集めたゴミを指定された場所に持っていきます。で、こちらの溝掃除と道の清掃の受領のサインをお願いいたします」


 ふむ、区画長は清掃を途中で諦めたと思っているようだ。


「まぁ、歩合制だからの……どれ、作業指した場所に案内しておくれ」

「はい、こちらです」


 作業した場所の案内だから、この区画を全て回るわけで、一番奥のエリアに来てみれば……。


 まだサルバさんさっきのとこにいる……何やってんの?あの人……暇人か?


「…………」


 等のサルバは排水路を見つめながら、立ち尽くし何やらぼーっとしている。


「と、言うことで、作業場所の案内は終わりました。受領のサインをお願いいたします」

「…あぁ、そうじゃの……」


 サインをもらい、この後はゴミ捨てに行き、そこでもサインをもらい、冒険者ギルドに戻ってきた。


「もう戻って来られたのですか?」


 先程受付してくれた方は、何処か不安そうに聞いてきた。


「はい、終わりましたので、こちらがクエストの作業完了書類です」

「確かにサインはありますね。少しお待ち下さい。報酬金をご用意致します」


 そう言って書類を持ったまま、奥へと消えていき、少し待つとトレーにお金を乗せ戻ってきた。


「お待たせ致しました。依頼3つ分の報酬金です 」


 銅貨60枚……少ないな。

 これじゃ、ゴミが溜まるわけだな……歩合制と言いながらほぼ詐欺に近い報酬額だぞこれ?

 あれだけの量の清掃で安い宿に素泊まりで三日分とは……流石に間違いでは無いのか?


「すみません、金額はこちらであってますか?」

「間違いありません。依頼主もその金額欄に記入されてますし」


 間違いでは無いのか……それにしても不思議だ……今は騎士団がこの町を管理人していて、町を維持する経費は通常に戻ってきているはずだが……。

 そうか、住民が減った分の収入が補填されていないからかもしれないが、これでは冒険者も居なくなるぞ?そうなれば、魔物の被害も増え、事態は悪くならないか?


「はぁ、それなら大丈夫です」


 まぁ、いいか。この町を引き継いだら頑張るだけだしな。部下たちが!

 俺としても結果で言うと、ゴミ捨て場のゴミも貰えたし、プラスになったんだから……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る