第7話

 俺は五匹のスパローを連れ、洞窟に姿を表した。

 ここはかつてアルトが拐われ連れられて来られた洞窟だ。


 創造神の加護に《時空間魔法》があるが、その魔法がレベルアップした際に新しく転移の魔法を覚えたアルトは、その魔法でここまで飛んできたのだった。


 洞窟の中は薄暗く、明かりをつけていないが真っ暗で見えないということはない。

 地球じゃ有り得ないが、この世界では魔力があるのでこんな不思議な現象が起こるらしい。


「まさかここに来ることがあるなんてな……」


 辺りを見渡すと長年使ってなかったような生活が見える。


「あれから誰も使ってなかったのか?」


 あれから約四年間ここには誰も入ってきていないみたいだ。

 だが、埃っぽく無くそこまで汚くないようにも見える。


 あの時は篭に入れられこの景色は始めて見たが、何処か違和感もある。

 それは置いとき、出口に向かって歩いていく。

 再奥のこの部屋から入り口まではそれほどなく直ぐに来れた。


「成る程…これは予想外だった。誰も入って来ていないんじゃなく、誰も入れなかったのか……」


 入り口まで来てみても外の明かりが少なかったのは、入り口が土砂か何かで崩れ所々に空気穴が空いているだけで後は入り口が埋まっていた。


「仕方ない」


 俺は洞窟の外まで転移で飛ぶ。

 洞窟の外は木や草が生い茂っていて、手付かずの森を連想させられる。


「素手では流石に厳しいか」


 流石に五歳児の身長と素手ではこの森の探索は無謀か……。


 そこで、アイテムボックスから装備品一式を取り出す。

 ショートソードにローブ、指輪に靴それに、下着など着ているものを全て着替える。


 どれも国宝級の装備を軽く超え、その能力は物凄いことになっていた。

 ふと、スパローを見るアルトは新たに指輪を取り出し足に嵌めようとしたら、指輪はみるみる内にスパローの足にピッタリの大きさになった。


「指輪はめれるのか…なら」


 これを機にスパロー一匹に対して二つの指輪が嵌められた。


「さて、探索始めるか」


 そしてようやく洞窟の前から移動するアルトだったが、そこらに生い茂る草や花を見てみると、薬草だの連勤素材だの沢山生い茂っているのを見て採取し始めていた。


「探索したいが、こんなトラップがあるとは……あっ、あそこにも薬草が群生しているじゃないか!あっちにはキノコが!」


 結局、この日は採取のみをしただけに終わり、着替えて王城に戻るのだった。


 次の日にも朝の勉強や訓練が終了し、昼過ぎには山へ転移してきた。


「今日こそは探索だ!」


 洞窟の周辺は昨日粗方採取したので、薬草や錬金素材は余りない。

 全てを取るようにじゃなく、少しは残すやり方だったので、目にはチラチラつくが全部採取するといつか困る日が来るかもしれないのでそれはやめておく。


「魔物か……何処に居るんだ?」


 アルトは魔物と言ってもスパローにしか出会った事はなく、何処に居るのかも分からない。


「なあ、お前達は魔物の場所分かるか?」


 そうスパローに言うと辺りを見回し、そこら辺の草むらに飛んでいく、五匹のスパローはそれぞれ、草むらで合図を出す。


「いや、草じゃなく探しているのは魔物だぞ?」


 それでも草むらにスパローは目をやり合図を送ってくる。


「参ったな…魔物を探しているのに……って、あの草が魔物なのか?」


 そう思い草むらに向けて鑑定をかける。


 ウィード・ウィード・草・ウィード・草・草・ウィード・草・ウィード・ウィード・・・


 って!魔物!草の魔物かよ!ほとんどウィードっていう魔物じゃないか!

 詳しく鑑定をしてみるか…。


 種族 ウィード

 植物の魔物で、この世界に一番多い魔物。

 自分で動く事が出来ず、地中と空気中の魔力を得て育つ。

 この世で最弱な弱さを誇る魔物で、子供でも討伐は可能。

 根に魔石はあるが、小さく大量に集めないと買取り手が居ない。

 討伐のやり方は引き抜くと1日後には死んでしまうので、引き抜いた後に根を千切るか焼却するのが一般的だ。

 攻撃パターンは通りすがりの人の足に切り傷を皮1枚付けるのみで、ブーツを履いていたらダメージは回避できる。

 そんなウィードだが、踏まれても踏まれても生命力が強いので、数時間経てば元気になる。


 ……雑草の魔物かよ!

 ま、まぁ何にしても魔物なんだな……討伐…除草作業でもするか……。


 結局アルトは昨日と同じくウィードの採取…違う、除草違う…ウィードの討伐を始めた。


 それから数時間後、何百というウィードを討伐し、洞窟周辺にはウィードが残り少しになった。


 じ、地味だ…物凄く地味な作業だ…いくらスパローが手伝ってくれているとは言え、地味すぎる!


 もっとこう、スパローのサポートを受けながら暑いバトルを想像してたんだが……。

 はぁ……。


 それはもう、ウィードを抜いて魔石を千切り、ある程度たまったら洞窟の前に持って行きウィードを積み上げるだけの簡単な作業だった。


 もうかなりウィードも積み上げたから一度焼いておくか……。


「スパロー達、一度ウィードを焼くから今のを最後に集まってくれ!」

「「「「「~~~♪」」」」」


 声を掛けるとウィードをそれぞれが積み上げ、魔石を手に乗せてくれる。

 魔石はアイテムボックス入れ。


「ファイヤーサークル!」


 始めて使った魔法により、ウィード達はは焼却されていった。


 ここで、転移魔法はアルトの中では既に忘れられている。

 魔法はレベルが上がると新しい魔法を覚え、どんな効果なのかは自然と分かる謎のシステムだが。


「うぁ、ちょっと威力大きすぎやしないか?森に燃え広がらないだろうな……」


 その後、燃えるウィードを見ていたが森に燃え広がらなく、自然と火は消えていった。


「この感覚は……レベルアップか?」


 燃やし尽くした後に身体に不思議な感覚があった。



 名前 アルト・ディオング・ミルフェルト

 年齢 5 種族 人間 レベル 4

 職業 魔物使い 5 見習い魔法使い 8

 見習い僧侶 4 見習い戦士 5 料理人 4

 錬金術師 2 鍛冶師 1 農家 2 調教師 1

 遊び人 4 王子2

 犯罪履歴 無し

 スキル

 農業 X 料理 Ⅸ 建築 X

 設計 X 裁縫 Ⅶ 調教X

 剣術 Ⅳ 光魔法 Ⅵ 火魔法 Ⅴ

 土魔法 Ⅳ 水魔法 Ⅴ 風魔法 Ⅵ

 耐性

 属性耐性 Ⅷ 状態異常耐性 Ⅵ

 魔法耐性 Ⅴ 物理耐性 Ⅲ

 加護

 運命神 製作神 創造神

 体力 A 魔力 S スタミナA 力 A

 防御力 B 器用 EX 素早さ B

 運 EX 精神力 A 魅力 C


 ぶふぁ!鍛えすぎたのか!

 力がA?このぷにぷにボディーに何処にそんな力が!?


 おもむろに石を手に取り力を込め……粉々に握り潰した。


 アカン!アカンがな!石ころが粉々やわ!


 もう一度石を拾い力を込め……握り潰す。


 ……もうスーパーマンやがな!

 これで空を飛べたら本物のスーパーマンやがな!


 それから少し石を拾っては潰しの繰り返しを行うアルトだったが、ここで気が付いた事があった。

 何かをする際に無意識に魔力をどんな行動をするのにも微弱ながら使っていたことに……本来なら気が付かない事だが、魔力とは無縁の世界から来たアルトはその事に気付けた。

 試しに魔力を流さないよう、石を持ち握るが握り潰す事は出来なかった。


 成る程…原因は魔力か…なら逆に魔力を込めたらどうなるんだろうか……。


 そう思い石を軽く掴んでみると、そのタイミングで粉々になった。


 こわ!これはよう練習だな……。

 っと、スパローも鑑定してみるか。


 名前 無し レベル 4

 年齢 8 種族 スパロー

 職業 無し

 犯罪履歴 無し

 スキル

 雀の目 Ⅱ

 体力 F 魔力 E スタミナ F 力 F

 防御力 F 器用 E 素早さ E

 運 F 精神力 F 魅力 F

 称号

 従魔契約

(アルト・ディオング・ミルフェルト)


 うん、少し上がってるな。

 何か安心するステータスだよ。

 何気にレベル追い付かれたしな。

 まぁ、今日はスパロー達の方が多く討伐していたからな……。

 スパローか……何気に魔力が上がっているのは、俺の魔力を訓練時に流しているからか?

 魔法覚えれるのかな?

 試してみるか。


「なあ、スパロー達魔法覚えてみないか?」

「「「「「~~~♪」」」」」


 喜んでいるみたいで良かったよ!


 そう言って俺は、魔法のスクロールをそれぞれ取り出す。


「ほら、これが火魔法、こっちが水魔法に、土魔法と、風魔法で、光魔法と…闇魔法があったわ…闇魔法は俺も覚えるの忘れてたから、ここで覚えとくか。ほら、お前達もやるぞ?やり方は簡単、スクロールに魔力を流すだけだ」


 そう言って、闇魔法のスクロールに魔力を流す。

 そうすると、スクロールが光になり身体へと吸い込まれ、無事に闇魔法を覚えた。


「な、簡単だろ?」


 そう言ってやり方を見せ、スパローはスクロールの所に飛んでいき、魔力を流しスクロールは光になりスパローに吸い込まれていった。


「無事に覚える事が出来たな、次のスクロールもどんどん覚えていこう」

「「「「「~~♪」」」」」


 その後すっかり六属性を覚えたスパロー達は嬉しそうにアルトの周りを飛び回っていた。


 やはり魔物使いは良いな楽しい。

 仲間の魔物がこう強くなると嬉しいしな。

 っと……ウィードも魔物だったな……。

 なら……。


 アルトは草村に残っていたウィードに向けて従魔契約の魔法を放つ。

 そして簡単に従魔となったウィードに鑑定をかける。


 名前 無し レベル 1

 年齢 6 種族 ウィード

 職業 無し

 犯罪履歴 無し

 スキル

 雑草魂 Ⅲ

 体力 G 魔力 G スタミナ G 力 G

 防御力 G 器用 G 素早さ G

 運 G 精神力 G 魅力 G

 称号

 従魔契約

(アルト・ディオング・ミルフェルト)


 む、流石は最弱と呼ばれる魔物か全部Gとは…だが、Gの中でも更に能力は低いんだろうな……。

 さて、このウィードどうするかな…流石に部屋には連れていけないしな……取り出す、あの洞窟の前で育てるか。

 にしても一匹だけここに残すのもなぁ……。


 そう思いアルトは更に三匹のウィードと契約し、洞窟前に植え直した。

 その後は魔力が餌になると分かったので、ウィード達に魔力を流し、スパロー達と王城に帰って来た。


 今日のウィード討伐のせいで体は青臭い臭いがしたため、帰って来たそうそうスパローと風呂に入ったアルトだった。


 それから何日も暇なときは洞窟の前に行き、ウィードの様子を見ては、採取に討伐にいそしんでいた。

 最近の悩みはどうやったらウィードの、レベルを上げるかで悩んでいたが、不思議な事に戦闘していないウィードがレベルが上がっていたのには驚いてしまった。


 多分だが、魔物を倒した際は経験値の均等に割り振られているようにも感じれた。


 あーあれだな、戦闘していないにも関わらず、レベルが上がって行くゲームと一緒だな。

 馬車の中や、牧場に預けていた仲間がレベルが上がっていくやつだな?


 因みに今日1日ではスパローと俺のレベルは上がらなかったが、ウィード達はレベル3までは上がった。


 名前 無し レベル 3

 年齢 6 種族 ウィード

 職業 無し

 犯罪履歴 無し

 スキル

 雑草魂 Ⅲ

 体力 G 魔力 F スタミナ F 力 G

 防御力 G 器用 G 素早さ G

 運 G 精神力 G 魅力 G

 称号

 従魔契約

(アルト・ディオング・ミルフェルト)


 ふむ、魔力とスタミナは上がってきてはいるが、他は分からないな……英字表記だと上がったか、上がってないか分からないのが辛いんだよな……。


 って、前から思ったんだが魔物にも職業ってのがあるんだな……。


「なあ皆 、皆のステータスを見させてもらったが、職業が無しになっている。そこで、職業選択の宝珠を使って職業に付けないか見て貰いたいんだ。使い方は魔力を流すだけだ」


 そう言って職業選択の宝珠を取り出しスパローや、ウィード達に渡していく。

 渡してから皆早速使ったみたいで、職業選択の宝珠は消えてなくなる。

 全員鑑定で見直すも無事に職業に付けたみたいだ。


 ここからが問題で、第二職業につけれるのか?だが、職業選択の宝珠を渡し使ってもらったが、第二職業は無事に取得できていた。

 なら第三は?と思い再度行うも第三は付けれなかった。


 結局、本人達が選んだ職業はこうなっていた。

 スパローA:見習い魔法使い 1見習い僧侶 1

 スパローB:見習い魔法使い 1見習い戦士1

 スパローC:見習い魔法使い 1見習い武道家1

 スパローD:見習れい魔法使い 1 見習い戦士1

 スパローE:見習い魔法使い 1見習い戦士1

 ウィードA:見習い戦士 1農家 1

 ウィードB:見習い戦士 1農家 1

 ウィードC:見習い戦士 1農家 1

 ウィードD:見習い盗賊 1農家 1


 となった。

 皆似たような職業になったのは、職業選択の種類が余りなかったのかも知れないが、おい、ウィードDよ盗賊って……まぁ、本人が良いなら良いのだが……そもそもウィードの見習い戦士って……どうやって戦うんだろうか……農家もだが……不思議だ。

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