第38話
町の開発は順調。
少しずつであるが、人口も増えてきている。
そのお陰で、商業モールの品が売れる売れる。
本来なら物が売れた一部の利益が税金として集められるが、今は開店セール中でそんなことしたら、テナント主達が泣くことになるので、今だけ免除している。
しかも、この町の住民なら住民カードを提出したら更に幾らか安くなるのだ。
テナント主達からせれば、利益が出ないのに……と話に上がっていたが、売れた分だけは補助金を出すことになった。
……で、そうなったら人は増えても町の利益は何処から?と思われるが、実は各職人達が商人に販売する際に税金を加算している。
補助金分より少し高く……。
それでも、他の町で同じものが入荷するよりは安いので、同じ物ならこの町の職人から買い上げた方が安いし、商人達は利益が出る。
この値段設定は商業ギルドに決めてもらって、他所の町や村が潰れないように、価格調整をお願いしている。
そうすることで、お互いの町が足りないものを販売しやすく、仲のよい状態でいられるのだ。
……いられるのだが、中にはそうでもないところは少なからずあるみたいだ。
◇◇◇
「なめくさりやがって!あのガキがぁ!」
ここは国から海に面した領地を任されている領主で、アルトとの領地とはほんの僅かだが接している。
それは食事の最中だったみたいで、目の前には豪勢な料理が食べきらないほど並んでいる。
「如何に王子だろうが、俺の領土をぶんどっただけでは足りず、領民まで拉致していくとは!」
どうやらこの領主はアルトに対して、相当におかんむりのようである。
「で、ですがゲーラ伯爵様相手が悪すぎます!相手は王族です!しかも領地に関しては、あの領地は元々王都の領地で、領民にしてもスラム街の税金を納めていなかった者……」
「五月蝿い、黙れ!」
「がっ!」
ゲーラ伯爵の代官はそうも言うが、それが癪にさわりゲーラ伯爵の投げた皿が料理とともに投げられ顔面に当たり床を汚し、代官は当たり所が悪くうずくまる。
「スラム街の連中も、俺の領民だぞ!それを勝手に連れて行きやがって!」
「くっ……ゲ、ゲーラ伯爵、様…そ、それは事前に使者の方が来られて……」
「キサマ!五月蝿いと言っているのだ!黙らぬか!」
諦めずに代官は間違いを正そうとするも、今度は怒声上げられ睨みまれた。
「……わ、分かり、ました……」
ゲーラ伯爵は代官の上司になり、こうなっては言うことを聞くしかなかった。
「で、あの後は何があるのだ?」
「はっ!この領地から、塩の定期購入の増加を言ってきております!」
そう代官以外の人が、ゲーラ伯爵に報告する。
「塩か……ようし、決まったな。この領地で取れた塩は売ってやろうじゃないか!なに、貴重な塩だ無理に無理をして増加するのだ。そうだな‥‥‥増加分は5倍の値段でどうだ!良い考えだろう!良い利益が出るぞ!わっはっはっは!」
代官はその話を聞いて、一人青ざめる。
周りのゲーラ伯爵の部下は彼の良いいいなりだ。
それに塩自体は余るほどにこの町以外にも、海に面した村などで作られ保管されている。
ただ彼…ゲーラ伯爵は自分の領地と、領民を奪っていったアルト王子に対して嫌がらせをしているだけであった。
◇◇◇
「アルト様、ゲーラ伯爵領から購入予定じゃった塩なんですが……他領で買うしかないみたいですじゃ」
ここは領主ビルの会議室だ。
今は各担当者からの報告を聞いていたアルトだったが、財務や経理を任せていた元スラムの管理者だった1人セバスチャン・ブイエがそう言ってきた。
「足下見すぎだね……これじゃゲーラ伯爵領で購入するよりそうした方が良さそうだね。クルオラさん?何か向こうでトラブルでもありましたか?」
商業ギルドのギルドマスターであるクルオラがこの会議に居るのは、町の各部門のトップ以外にも各ギルドのギルドマスターや大手商会主を交えた、この町独自の会議だからだ。
「い、いえ、決してその様なことは……」
「そっか……塩の生産具合から見て、価格を吊り上げられる要素は無い筈なんだけどな……一体何なんだ?」
何故このような会議のやり方をするのか?なのだが、各担当者も、各ギルドも、各商会主も、お互いが得意なことで助け合うことで、手間も経費も抑えれて、尚且つそうすることで仲間意識が出て何かあった際に円滑に事が進めることができる。
まぁ、初めの方はこの会議の意味がわからなく、無駄に喧嘩等あったが今はそれもなく、お互い仲が良い。
「ゲーラ伯爵か……城でパーティーや集まり事があった際に何度か見たことがあるが、余り良い噂は聞いたことがないな……そうだ、シャルラにしつこく話をかけに一時期は行っていたな……」
会議に参加していた第1王子のオーウェンが、ゲーラ伯爵についてそう言うが、オーウェンは一時期第1王女のシャルラにしつこく話をかける所を見たとして、シャルラに向かいそう言う。
「お兄様?ここでその話をするんですの?忘れたい過去だったのに、酷いです」
「え、何か嫌なことがあったのか?」
シャルラは余り思い出したくないようで、表情が暗くなる。
「お兄様、お姉さまはゲーラ伯爵より自身の跡継ぎがどれだけ素晴らしいか話をされていて、しまいには冗談か分かりませんが、跡継ぎをお姉さまの夫にどうかとしつこく言ってきてましたわ……」
第2王女のカエラは当時の事を教えるが、
「カエラ?私は思い出したくないって、言いませんでしたか?」
と、シャルラに言われる。
「あっ……お姉さま……か、過去の話でございますわ!」
「ゲーラ伯爵の跡継ぎと言えば、デーボの奴か……あれは無しだな」
「デーボ?どういった人なんです?」
兄様や姉様にそこまで言われるデーボは、一体どんな人物なのか気になるアルトだった。
その後デーボはどんな人物のか聞いたアルトは一言「うわぁ……」で終わってしまった。
まぁ、それも仕方がないだろう。
その話をまとめてみたらこうなった。
先ずは容姿から、身長は同年代よりも頭二つ小さく、同年代よりも横に2倍は大きいと……。
取り巻き連中に食料を持たせては、四六時中何かを食べているそうで、手や顔は油でギトギトらしい。
……次に性格は、何かあると親の権力を盾に、食料を持った人達から食料を強奪しているとか……。
どんだけ食い意地が張っているんだよ!って性格みたいだ。
他には酷い噂は聞かないが、食い意地が酷い事から、その領地の住民からは意味嫌われているらしい。
「おいおいおい……話し脱線してないか?」
俺達の会話を止めるのは、元スラム管理者だったハンス・ハウテンだ。
「あっ……すみません、皆様……えっと、塩ですよね?ゲーラ伯爵領からは無理みたいなので、他の領から定期購入の契約をしている所にその分を増やしても良いか聞いてください」
ハンスが僕や王族の兄弟達のにも敬語で話さないのはもう誰も注意をするのは居ない。
初めは注意する者達が居たが、僕がそうして欲しいとお願いしたら、兄弟達もそう言ってきたからだ。
ハンスさんって何か皆の頼れる兄貴って感じなんだよな……。
「畏まりました。ですが、それではゲーラ伯爵領からの購入物資が……」
クルオラさんからゲーラ伯爵領の購入物資で気になるところがあるようだ。
「購入物資?えっとどれどれ?……あぁ、ゲーラ伯爵領との購入物資は塩が9割で、残りは干物等だったのか……仕方ないよ。干物等だけでは運送部隊の経費が高くつくから、それも他に回すしかないよ。空いた運送部隊は農業地区との輸送に回ってくれるか、他領に増やした購入物資の所に増やしても良いんじゃないかな?」
う……む、最近この開拓町からは、生産力が上がり他領に販売していた、衣類に生活必需品やらと…ポーションそれから少ないが鉱石等をゲーラ伯爵領にも多少売っていたが、向こうで塩の購入が出来なくなるとしたら、それを持って行く余分な経費がこの町には惜しいので、止めざる得ない。
勿論、他のギルドが個別で行く分はどうこう言えないので、それは今まで通りにだ。
アルトはそう決め、ゲーラ伯爵領との物品の取扱いは終了し、次の議題に移っていった。
アルトはこの町を開拓する上で、回りの領に対してトラブルを回避すると共に、貧しい村や集落等を助ける意味も含め、平均的に物資を購入していたが、ゲーラ伯爵領からの塩の購入を止めた訳だから、ゲーラ伯爵が基本いる町以外の町や村と集落からも、物資の購入は無くさないと行けない。
あの領に行く意味がなくなってしまったから、それは仕方がないよな?とアルトは1人考える。
まぁ、町が開拓する前まで村等はやっていけていたから問題ないだろうと、思うようにした。
「あっ、一様ゲーラ伯爵領にある集落や村には今回一回だけ運送部隊を送り、これからこちらから行くのは無くなる旨を伝えてきてください。では、次に農業地区より議題の提出はありますか?」
そして会議は次の議題に進む。
◇◇◇
そして、あの会議からはや一ヶ月。
ゲーラ伯爵領では、新な問題が発生したようだ。
「……本当に、何を考えているんだ?ゲーラ伯爵は……」
ゲーラ伯爵領での問題に少し頭を悩ませたが、特別にこちらに被害が無いことから余り深く考える様なことはせず、執事のゼロスとの会話をする。
「それは分かりません。ただ、この話は念のため陛下にも報告は致しましたが、宜しかったでしょうか?」
「……ねぇ、ゼロス?普通俺の判断を聞いて報告しないか?」
ゼロスに対して俺が、暗部師団総括だろ?
と言ってからはゼロスも隠すようなことを無くなり、この様なやりとりもしばしばおこる。
「……善処します」
「まぁ、暗部師団総括だから仕方はないが、出来る限りお願いね?」
「……ぜ、善処します」
そんなやりとりはまぁ置いといて、問題はゲーラ伯爵領だ。
何を考えての行動か分からぬがとは先に言っておく。
俺の領地もそうだが、ゲーラ領に隣接する領地には勿論ゲーラ領へと続く街道がある。
で、その街道全ての他領の境目に関所を設けたのだ。
入領税に出領税を払って領へ出入りをしなければならないと……。
で、面倒なのは街道を通らず入領した者は領内全ての食料品や宿泊費等が通常価格より割増になるというらしい。
そんな事を知らない者達には痛い内容だった。
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