第16話

「アルトよ?どうだ?まだ、5歳と幼いが、お前なら出来ると思うが?」

「まだ、5歳児ですよ?早くはありませんか?」

「確かに普通は成人し年相応になった時に考えておったがな」

「なら何故ですか?」

「神託があったのだ……」

「神託……ですか?」

「そうだ神託だ。昨日夢でそうすると良いとお告げがあったのだ!」

「……それはただの夢ではありませんか?」

「そうかもしれん。だが、無視には出来んのだ。何せ俺の夢は高確率で当たるからな」

「……低確率は外れるんですね……」

「まぁ、たまにな。5回に2回は外れるな」

「結構な確率外れてませんか?」

「言うな。俺の自慢なのだから」


 今俺達二人がどんな話をしていたかなのだが、王都から馬車で6時間程進んだ先にある村があった場所だが、家は何軒かまだあるが今は軍事訓練場所になっていて、そこの町開拓をするかと議題で上がり、その後夢を見たカインドは俺を職務室に呼び、そこの領主となり開拓をするように言われた俺は、どうしてこうなったのかと、初めて父上に対しツッコミを入れている最中だ。


「仕度金もだすぞ?必要な人材も用意するぞ?どうだ!凄いだろう!」

「……それは当たり前ではないのですか?」

「むぅ、バレておったか……なら、どうだ?仕度金以外にも必要とあらば何でも言ってくれれば、出来る範囲で用意するが?」

「はぁ……分かりました……引き受けますが、どんな都市にしらたいいんです?」

「んっ?それは任す。商業を中心にするも、農業を中心にするもお前の自由だ」

「……なるほど…それなら開拓も楽しみですね」

「であろう?良かった良かった。これで決まりだな」

「開拓は任されましたが、僕の領地はどれくらいの広さなんですか?」

「む、そうだったな、忘れておった。どれくらいだったらそれも話し合いで決めようかと思ってな」

「領域……決まってなかったんですね……。なら、お願いがございます。」

「ん?どうした?言っていいぞ?」

「その村後から山がありますよね?その山も領域に含め、その村から馬車で半径30分は頂けないでしょうか?」

「山か?あの山は整備に手付かずであれ放題だぞ?」

「良いのです。山はロマンです」

「ロマンか……良いだろ。領域はもうちょい増やし半径1時間でも良いぞ?」

「そんなにですか!分かりました。頑張って町開拓を始めます」

「因みに、領域が決まったんだ。町は領域内だったら好きなとこにするといい」


 そうして決まった町開拓。

 その事をゼロスに伝えると、俺の専属メイドや執事達は全員着いてきてくれるらしいが、町ができた後の自室の維持に1人交代でメイドが残るらしい。

 まぁ、それは住む場所が出来てからだけどな。


 ゼロスを筆頭に開拓をする職人や御世話を人、その間の警備をする者の手配をしていく。

 当然、冒険者や商業各ギルドもその話が届き、各支部を立ち上げる為に開拓を手伝ってくれるらしい。

 それにはゼロスや父上も他の者も盛大に驚いていたが、本当に助かる話だった。


 それから俺は地図を見ながら、一人出掛けては俺の領域となる所に要石を建てに行く。

 この領地は俺の物だって意味もあるが、結界でもある。


 まさかこうも早く使うことになるとは思わなかったな。


 この要石は転生前に手に入れたアイテムで、魔物避けは勿論、豊穣・品質向上の効果がある、アイテムだ。

 まぁ、魔物避けと言っても外から中に入れなくするだけで、中にいた魔物には適応されなく、豊穣に品質向上の効果は極小らしいから余り期待は出来ない。

 また、魔物使いのために仲間の魔物は適応外とは有難い。


 その他にもアイテムボックスのフォルダーには開拓専用フォルダーもあり様々なアイテムが入っている。


 その使い方は簡単で、四隅に設置するだけなのだ。

 ただ、広い領地だから要石はを1約㎞毎に設置した。

 1㎞をキチンと測るために新しく、道具も作成し仲間の魔物に手伝ってもらい1週間で設置が終わった。


 そして、更に1ヶ月が経ちその頃にはゼロスにより開拓に必要な人選が終わる。

 その間に、俺はスパローに手伝ってもらい、上から見た地図を完成させていた。

 また、都市を開拓するスペースにはまた違う要石を設置し、ある程度の区画を分ける。


 あぁ、魔法って便利だ……。

 地均し?土魔法で対応。

 区画線引き?風魔法で対応。

 まぁ、区画線引きは取り敢えず、領主である俺が住む家の回りだけだ。


 この町の中でどこに何の建物が建ち、何処を道にするかは粗方考えてある。

 更には町をぐるりと囲む、塀には鉄骨鉄筋コンクリートを採用した。

 また、重要な建物にも鉄骨鉄筋コンクリートで造り、後は鉄筋コンクリートだったり、木造だったりと建物によって使い分けるようにした。


 ん?勿論この世界にセメント自体無かったが、ガラスやレンガはある不思議な状態立ったため、セメントやコンクリートに鉄筋コンクリートと強化ガラス等の製造法を書き出し、父上に提出。

 結果、これ等の作成は国で秘蔵にし商業ギルドに委託は出来なかった。

 その為、町開拓に置ける人選の再雇用が更にあり、ゼロスは悲鳴を上げていた。


 結局、秘蔵になった箇所の人員には奴隷を使用する事になるが、ここで使う奴隷達は犯罪奴隷として、一生を奴隷として過ごす者達と他の一生奴隷として売られた一般奴隷のみだ。


 因みに、犯罪奴隷と言っても刑期が過ぎれば解放される者、一生奴隷の者二つに分けられる。

 その他の奴隷と言ったら、借金奴隷に一般奴隷等がある。

 借金奴隷も借金が返済できれば、解放される者も入れば、親などから生活苦で泣く泣く売られてしまった一般奴隷がある。

 これ以外に国では違法指定去れている、人拐いによる奴隷化であり、それを違法奴隷と呼ぶ。


 早速、何千人と町開拓するのに集められたが、この中で建築に携わる者はこの中の7割位で、残りはお世話をする者や警備の者たちだった。


 そして、初めは鉄骨鉄筋コンクリートを作る工房から造られた。

 その際も魔法の万能性発揮し、アルトが考えていた期間を大幅に短縮させ、今は町を囲む塀に領主低に重要な建物の建設が始まっていた。


 それまでは塀や建物等の区画毎の設計を行うのに忙しかったアルトだったが、何とか建設を始める前には何とか終わらせていた。


 そうなれば、暫くアルトのやることと言ったら、建設ミスが無いように至るところをチェックするだけとなったが、少しするとゼロスや各現場監督に選んでいる者達が、チェックのやり方を覚え、アルトがやることが次第に無くなっていった。

 だが、ここまで来るのに一年半と時は過ぎていた。


 その間には、問題であったごみ山は全体の10分の3は収納による撤去と魔物討伐が完了していたり、山奥の洞窟での探索も短時間だが行っている。

 そのおかげか、仲間の魔物も大部数が増えていた。

 コボルトやゴブリンにしては共に数が20を超えたり、ラットラットは数はそろそろ50を超える。各スライムは新種で見つける以外仲間にしていないが勝手に増殖している。

 変わらずの数はウィードにスパローだけだったりもする。


 全てが順調に行き始めた頃、ゼロスが何時もよりも慎重な顔付きで近付いてくる。

 こういった時は何か嫌なことが大抵起こった時だ。


「アルト様大変でございます」

「どうしたんだゼロス?」

「カインド王から頂きました、支度金がそろそろ尽きます」

「えっ、支度金が?毎月も支度金貰えているだろう?」


 今度は金欠か……。

 始めに白金貨100枚を支度金として貰って、毎月その100分の1は更に支度金が貰えている筈だけど?

 日本円なら始めに10億円で、毎月1千万円だよな?


「それでも、大幅に足りないのです……最悪は今行っている鉄骨鉄筋コンクリートを止めざる得ません……」


 やっぱり鉄骨鉄筋コンクリートはコストが高いのはこの世界も同じなのかな。

 だけど、途中で止めたくはないし、以前父上から清掃の時に貰ったお金は残ってるよな?


「塀や領主低に重要な建物はもう建設が始まっているから、今更変更は出来ないよ。以前父上から頂いたお金残っているけど、使えないかな?」

「……幾らほど御座いますか?」

「金貨14931枚はあるけど……」


 日本円で14億9千3百10万円……あっ、初めの支度金よりも多かったや……。

 今思うと、あの時すごい金額貰っていたんだな……。


「ぶっ!」

「ちょっ!汚いゼロス!吹き出すなら違う方向見てよ!」

「し、失礼致しました。それほどあればまた更に約1年半は安泰かと……ただ、約1年半後はまた金欠に戻ります。……更に国から頂ける支度金は残り約9年で終了します。其までには、この領地で稼がなければなりません」


 そうなんだよな。

 支度金は10年のみで、それ以降は自分の領地で稼がないと、毎月の王城に納める税金等が払えないからな……。

 それまでに、何とかしないとな。

 そうだ!


「ゼロス今思い出したんだが、これも領地開拓に使って良いよ」

「こ、これは商業ギルドの口座…ですか?」

「そうだよ」


 そう、差し出したのは商業ギルドの口座だ。

 今まで使ったこと無かったから、今まで忘れていたがな。


「因みに幾らほど御預けに?」

「自分では預けたことはないけど、今まで売った商品のリベート分が幾らか貯まっている筈だよ?今まで口座確認したことないけど……ついでに金額の確認お願いして良いかな?」


 確かに幾らほど入っているかは気になるが、少しは開拓の足しに出来たら良い程度だろう。


「か、かしこまりました」


 さてと、金欠は1年半に延びたけどそれまでには何か商売をしないとな……だけど、このままだと商売が出来るのは何時になるか分からないな……。

 この開拓に1番お金が掛かっているのは建築材料費だ。

 これは下げれないし、次は食費かこれも下げることは出来ない。

 次は人件費か。

 奴隷以外は給金をこっちで払わないといけないからこれも削減はもっての他だ。

 で、残るは経費。

 経費は衣服や道具に消耗品に掛かる費用だからこれも無理か。


 早く終わらせるために人材を増やしたら、さらに費用も増えるし難しいな。

 いっそのこと、仲間の魔物達にも手伝わさせるか?

 だが、何が出来るんだ?

 コボルトやゴブリンは肉体労働や魔法建築。

 他の魔物は怪我や疲れの回復魔法に、身体強化魔法のサポート……あれ?案外出来ることがあるな……。


 早速連れてくるか。


 ◇◇◇


 次の日、王都へ口座の残金確認のために出かけていたゼロスが昼頃戻ってきた。


「アルト様、只今戻りました……」

「あっ、 ゼロスお帰りなさい。どうだった?口座のお金開拓の足しになりそうだった?」

「はい、それはもう……って、まず先に聞きたいことが御座います。建設途中ですが、町中至るところ魔物が居たのですが、何か知りませんか?どれも王家の家紋が入った物を身に付けてましたが……スライムまでもです」


 口座の残金を報告をしに来たゼロスだが、それよりも仲間の魔物が気になるようだ。


「えっ?アイツ等?アイツ等は俺が契約した魔物達だよ?ねぇ、聞いてよゼロス!アイツ等中々使えるんだよ!アイツ等のお陰で作業効率も大幅に上がり、怪我等に使うポーションも軽減され。作業員の衣服も身体も道具も生活魔法でピカピカになるし、掛かるのは食費だけで、その他は経費削減出来ているみたいなんだ。王家の家紋入りの装飾品は間違って討伐されないように、肌に離さず持つように言っておいたよ」

「アルト様……如何に私目が今回の作業員の人選に苦労したかお分かりですか?しかもです!これから開拓人員の増員をする時期に……あぁ、また人選のし直しが……。ましてやアルト様?」


 いかん、最近のゼロスはこうなったら話が長いんだよな……。

 仕事を丸投げしすぎたか?


「お、おぅ」

「おぅ。ではありません……まずは従魔です。普通、契約した魔物は主人の言うことしか聞きません。なのにどうですか、職人や皆の指示に従い作業しているではありませんか!次に、それは私が見た範囲になるのですが……スパローにスライム、皆補助系の魔法を操り、作業員のサポートをしていました。魔法を使うスパロー?聞いたことが御座いません。魔法を使うスライム?上位のスライムなら有り得ますが……あのスライムは上位のスライムでしょうか?違いますよね?色も形も違いますから。では何故魔法を使えるのでしょうか?」

「……頑張った?」


 魔法を覚えるのは道具を使っただけとして、魔力は毎日欠かさず、訓練させ俺の魔力を循環させ魔力操作等の訓練はしているからなぁ……忙しいスケジュールの中で頑張ってるよな?


「頑張ったでは説明が出来ませんよ、アルト様……それこそ、頑張れば誰でも魔法が使えるようになるわけではないのですから……。もし、他の者に今回の件が知られれば、アルト様に大勢の人が押し寄せてくるでしょう。何せ、魔法が使えない魔物が使えるようになり、そのやり方をアルト様は知ってらっしゃるのですから……」

「おぉっ……それは嫌だな……」


 ううむ、そこまで考えてなかったな……。


「そうでしょう……でも、もう遅いですな……作業員にバッチリ見られてますから。今からでも喋らないように、言い聞かせなければ……こうなれば全て奴隷で構成すべきでした……さすれば、他言無用の一言で終わりますから……」


 よし、頑張れゼロス!



 結果、その後ゼロスの奮闘のお陰で懸念していたアルトの魔物事情は外には漏れることは無かった。

 ただ、この日からアルトの配下に町開拓の作業員を含めた全員が、配下に加わる事になりその事をゼロスから聞いたアルトは、これからの事に頭を悩ませていた。



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