概要
https://kakuyomu.jp/publication/entry/2020051501
「失恋した。この気持ちは聖良ちゃんにはわからないよね」
高校三年生の秋、聖良の留守電に謎めいたメッセージを残して菜々子は海で死んだ。
事故だった。
――でも、もし本当は自殺したとしたら?
仲違いしていた幼なじみの死の真相を知るために、聖良は恋をしようとする。
同級生の青井を巻き込んだ、つたない恋人ごっこを通して。
理解できない他者と失われた想いを追いかける、青春ライトミステリー。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「いつか必ず」を信じている人へ
目をつむれば目の見えない人の気持ちが理解できるだろうか。
耳をふさげば耳の聞こえない人の気持ちが理解できるだろうか。
まやかしの寄り添いは、瞼を上げることで、耳にあてがった両手をのけることでいとも容易く崩れ去ることを知っているだろうか。
性別を問わず、人はいずれ人に恋するものだと信じていると思う。
好きな人が自分以外の誰かを好きになることが恋の苦しみだとするなら、誰かを好きになる気持ちを理解できないことは何の苦しみと呼べばいいのだろう。
どんな人でもいつか必ず恋をするものだと思っている人こそ、この小説を読んでほしい。
人を好きになる気持ちを理解できない苦しみが、その冷たさや周囲の温か…続きを読む - ★★★ Excellent!!!恋より愛より、大事な感情がある。
恋愛感情の価値観って、本当に人それぞれだと思います。
それがないと生きていけない人と、なくても生きていける人と。
この二つのタイプがわかり合うのは非常に難しい。
「好きだから」という理由で何をしてもいいというわけではありません。
逆に、「好きならば」ある程度のアクションを起こさないと他人に気持ちは伝わりません。
だけど、好きとか嫌いとか男とか女とかそれ以前に、目の前の人物を一人の人間として見て聞いて感じることができたならば、価値観の違う人間同士でも本当の理解が得られるのではないかと思いました。
本作はちょっとしたすれ違いが重なって冒頭の展開になってしまったのですが、そこで挫けず友達のため…続きを読む - ★★★ Excellent!!!たとえ恋を知らなくても
過去に仲違いをしてしまった幼なじみが海で死んでしまい、その直前には謎めいた言葉で残された留守番電話が。
主人公の聖良はその死の真相を知るために、恋を理解できないまま同級生の青井と恋人ごっこをしてゆくのですが、ダイレクトに伝わり響いてくる文章に、展開に、感情に、夢中になっていく自分がいました。
恋愛感情を持たない聖良と三原。(恥ずかしながらアロマンティックということばを、この話を読んではじめて知りました)
恋をしている菜々子と青井。
登場人物たちは等身大の高校生で、10代という感受性豊かな年頃。その中でも聖良はどこか大人でおなじ頃の子とはちがった感性を持ち、けれどもそれはなにひとつだって…続きを読む - ★★★ Excellent!!!多分、この世で一番複雑なもの。
この作品で主題となるテーマは、「他者の思考/想い」だと思った。
「他者の思考/想い」というのは、きっとこの世で一番複雑で、不確定で、あいまいなものの筆頭だ。
人間の一人一人が、毎時毎秒「思考」している。「想い」は移ろい変わりやすいものだから、尚更よくわからないものだ。
「思考/想い」というものは、結果が似かよっても、答えに至るプロセスが全く同じものになることはない。(と、考えている)
さて、前置きが長くなったが「恋を知らぬまま死んでゆく」の主人公は、二つの謎に挑戦することになる。
一つは、他者の思考と想い。
もう一つは、自分の思考と思いだ。
***
「恋を知らぬまま死んでゆく」の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!恋に対する反逆
これは恋に焦点を当てながらも、人が人とどう向き合っていくかを描いたヒューマンドラマだ。
恋、それはある人にとっては崇拝するものであり、麻薬であり、とても大きな感情だ。
特に主人公達のような10代の学生にとっては絶対的な地位にある。
恋に落ちてしまい、自分をコントロール出来ない菜々子ちゃん。
主人公聖良ちゃんに恋して、好意をあけっぴろげに表現する青井。
恋を理解できない故に学校という狭いコミュニティ内で爪はじきにされてしまう三原。
そして聖良ちゃんもまた、三原同様に恋を理解できない為にもがき悩む。
菜々子ちゃんの最期の気持ちが理解できず、青井から貰った好意を持て余して恋人としての「正解」に…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「恋」に、共通認識なんてものはないのかもしれない。
最近疎遠だった幼馴染の菜々子が、海で死んだ。
留守電に「失恋した」とメッセージを残して。
聖良は菜々子を理解し真相を知るため、恋をしてみようとする。
いきなり個人的な話ですが、恋愛小説が苦手です。
恋愛感情そのものはわかるつもりですが、
「告白したらYesであれNoであれ返事をもらえる」
という概念がわからない。
少女漫画などからの学習で、「Noの場合でも誠実な
振り方をしないと、振った側が酷い評価を受ける」
らしいことは認識しましたが、
どうしてそうなのかは未だに納得していない。
そんな人間なので、聖良が、自分の概念と、
世間の共通認識らしい概念との間の差を
理屈っぽく学習していく感じ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!この作品に出会えてよかった
※レビューを書くつもりがこの作品への恋文になってしまったので、そのようにご覧いただければ幸いです。
この作品をまだタイトルしか知らなかったとき、正直に言ってしまえば「恋愛ものかな……ならあまり縁はないなぁ」と思っていました。
私自身、あまり恋愛というものに興味がなく、それを主題とした作品は避ける傾向にあったからです。
そういった要素をエンタテインメントとして楽しむことはできます。
また、話を盛り上げる要素として必要だったり(ときにその必要がなさそうなものもあったりはしますが)、それがあることによってより深いドラマが生み出されたりすることも理解していますし、自身もそのように書いています。
し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ほんとうに知らなかったものは何だったろう?
心から生まれいでた何らかの感情があるとして、それに名を付け、定義するのは誰か、そして、感情を定義するとはいったいどういうことなのか。
これはとても健全でまっとうな「青春小説」であると思う。主人公、聖良は友人のことを理解したくて、けれど「恋がわからない」と言って、懸命に「恋」を知ろうとする、その中で自分は恋ができない人間なのだ、と考えたりもする。結論を急ごうとするところも、明確な答えを知りたがるところも、自分を定義しようとするところも、まさに十代のみずみずしい高校生だ。
だが、結局のところ、他者と自分は違う存在であり、その感情含め究極には理解しあうことができない。
おそらくある年齢に達し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「あなたがすき」、その想いが苦しい。
物語は、死の報せからはじまる。
菜々子という幼馴染を失った聖良は、疎遠だったはずの彼女から、奇しくも最期の言葉を聞くことになった。留守番電話に残された「失恋した」という言葉は、菜々子の死が自殺だったのか、それとも事故死だったのかという疑問を聖良とわたしたちに投げかけた。
読んでいて非常に、心動かされた。
青春小説のジャンルが示す通り、高校生たちの剥き出しの感情がぶつけられるから。
聖良と菜々子、そして青井、三原。
永遠に重なることのない想いが、彼女たちの交わす「好き」という言葉の下で渦巻いている。
「好き」が何を意味するのか、人それぞれにまったく異なる(と思われないかもしれない)その感情…続きを読む