恋に対する反逆

これは恋に焦点を当てながらも、人が人とどう向き合っていくかを描いたヒューマンドラマだ。
恋、それはある人にとっては崇拝するものであり、麻薬であり、とても大きな感情だ。
特に主人公達のような10代の学生にとっては絶対的な地位にある。

恋に落ちてしまい、自分をコントロール出来ない菜々子ちゃん。
主人公聖良ちゃんに恋して、好意をあけっぴろげに表現する青井。
恋を理解できない故に学校という狭いコミュニティ内で爪はじきにされてしまう三原。

そして聖良ちゃんもまた、三原同様に恋を理解できない為にもがき悩む。
菜々子ちゃんの最期の気持ちが理解できず、青井から貰った好意を持て余して恋人としての「正解」に辿り着くことが出来ない。

しかし、この作品は恋に対して反逆を企てている。
好意に名前を付け、差別化を図る必要があるのか?
一般的に言われるような恋で無ければ、人が人を好きになる行為は無意味なのか?

そんなことはない。

これは聖良ちゃんや三原のような恋に冷たくされた人間たちを救いあげる話だ。
人が人を好きになる優しい感情に対して、名前を付けて差別化する必要などない。
好意とは温かい気持ちに他ならない。


終章、だれも知らない物語 にこのお話の全てが集約されている。
彼女は何故亡くなったのか。恋多く、恋に苦しんだ菜々子ちゃんの死因は一体何だったのか。
是非とも全話読んで辿り突いてほしい。

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