わたしとあなたは違う人間だ

疎遠になっていた幼馴染・菜々子の死をきっかけに、主人公・聖良は彼女の足跡を辿り死の真相を確かめるため、自分に好意を寄せる同級生の青井と「恋」をしようとする。

性的マイノリティの苦悩を軸に物語が展開されるかと思いきや、実のところそうではないのだと気付かされる。
自分は性愛の情を持たないのではないかと思い悩む聖良は、だけど「ふつう」の女の子だ。
愛や恋、そういうものに隠された、他人との断絶、分かり合えないけれど分かりたいと思う気持ち。たとえ愛や恋を介したところで、人と人は絶対に分かり合えない。
だから、人と人はこの物語の登場人物のように、もがくのだ。

わたしはこの物語を、菜々子の物語として読んでいた。
聖良たちが想像するしかない菜々子の感情に寄り添い、そして聖良がそうしたように菜々子に近づこうとした。
だけれども結局、それは菜々子が物言わぬ死者であり物語の鍵を握るからなだけで、聖良の気持ちも、青井のほんとうの心も、わたしには押しはかるしか方法がないのである。

性別が、国籍が、性的嗜好が違おうが違わまいが、わたしと、となりにいる人は、聖良は菜々子は、他人なのだ。

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