君のことが「好き」なのに、想いの温度差で息が詰まりそうになる
- ★★★ Excellent!!!
主人公の魚住聖良は、母親に「情緒の発達が遅れてるのかしら……」と心配される、少しばかりドライな女子高生。
幼馴染の菜々子とは”ささいな”喧嘩で疎遠となっていたが、ある日「失恋した」という留守電メッセージを受け取る。久しぶりの会話に緊張しながら折り返すも、彼女が電話に出ることはなかった──
菜々子を死に追いやったものの正体を知るために、聖良は同級生の少年に声をかける。
「私に恋を教えて」
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タグに「アロマンティック」「アセクシャル」とあるように、この物語はセクシャルマイノリティを題材としています。
人によっては少し身構えてしまうかもしれませんが、この作品は、彼女の性質に起因するいじめや家庭不和といった、悪意との戦いを描いたものではありません。
友人が、恋愛を理由に振る舞いを変えてしまって、疎外感を感じたことはありませんか?
一心同体だったはずの人が、全てを理解することはできない「他者」であることに気づいて、戸惑ったことは?
お互い好きで一緒にいるはずなのに、感情の温度差を息苦しく感じたことは?
焦点が当てられているのは、ごく普通の少女の懊悩です。ごく普通の、非恋愛者であり非性愛者である少女の、思春期の悩みです。ままならない感情の動きは、決して特別なものではありません。
胸の詰まるような懐かしさと切なさを流麗に描いた作品世界、どうぞ身構えずに浸ってみてください。