【読者⇔小説⇔動画⇔動画視聴者】新感覚の事故物件配信ホラー!

事故物件に1日だけ住んで動画配信するYouTuberコンビ『ゴーストイーター』。
そのメンバーであるウスバカゲロウ二号(編集担当・三十路・不健康)とウスバカゲロウ三号(動画担当・十代・金髪)が、本作の主人公です。

そんなの絶対やばいでしょ、という第一印象を裏切らず、事故物件には怪異がいっぱい。でも、渦中のウスバカゲロウ三号はそう簡単には動じません。
あっさりと怪奇現象のネタばらしをしてみたり、「うるせえ!!!」と幽霊を怒鳴りつけたり、切り札を惜しまなかったり。
素直にビビるウスバカゲロウ二号と共に、三号の活躍を見守るだけで、手に汗握るエンタテイメントであることは間違いありません。

しかし、本作の真価はそれだけにとどまりません。
まず、読者-小説-動画-動画視聴者という鏡写しの構造がニクい。
私のようにビビりだけどホラーが好きという人間にとっては、動画(作中作)によってワンクッションがあることにより、夜中にトイレに行く権利を失わずにホラーを楽しむことができます。
一方で、動画を見て様々な(時に身勝手な)コメントを残していく動画視聴者たちの姿に、えもいわれぬ不気味さと、鏡写しに自分の醜態を見たような居心地の悪さを見出すのです。
動画があるということは、ゴーストイーターのふたりが無事だったということ。その安心感が、舞台裏の挿話によって瓦解する瞬間の怖さ。恐怖に緩急があることが、ホラー作品としての深度を一段上げているように思います。

そして、なんと言っても、ゴーストイーターのふたりが織りなす人間ドラマが見どころです。
回を追うごとに増していく、失踪したウスバカゲロウ一号の存在感。
それぞれに一号を追い求める二号と三号は、無事に彼に会えるのでしょうか。
愛すべき主人公たちが、生者としてよい結末を掴めるよう、祈らずにはいられません。

ホラーとしての魅力に満ち溢れた本作ですが、怖さばかりの作品でもないように思うのです。
死ぬ前に分からなかったことは、死んでからも分からない──繰り返し語られる幽霊と生者の違い。悪い霊に引きずられないための心構え。恐怖の裏には、どこか生者へのエールが込められているように感じます。

少しでも気になったら、ぜひ、ゴーストイーターのチャンネル登録を!

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