事故物件に1日だけ住んで、YouTubeで動画配信するアルバイトはじめました。

竹原穂

ゴーストイーター編

0本目【新生】僕たち『ゴーストイーター』です!

自己紹介動画 【はじめましてのご挨拶】




「ハイせーのっ、いただきますっ!」


「い、いただきます?」


「どうも〜『ゴーストイーター』です! 僕はウスバカゲロウ二号! 今日も元気にハーフマスク! 目元だけライオン姿で失礼します! 前回の配信からちょっと間が開いてしまいましたかね? 楽しみにしていた方はゴメンナサイ! コレが最初の方はハジメマシテ。えー、今回からはですね、なんと! 新メンバーの加入です! パチパチ〜」


「………」


「ホラ、三号くん挨拶して」


「う、ウスバカゲロウ三号です。はじめまして」


「声、ちっさ!? ゴメンナサイね〜みなさん。彼は動画初心者なんです。この黒いマスクと黒いキャップ、そして帽子からのぞく鮮やかな金髪がトレードマーク! 黒いマスクなんてどこに売ってるの?」


「お店です……」


「そんなことは分かってるよ〜。大丈夫〜? この動画、途中からキミ一人になるんだけど」


「がんばります」


「三号くんはですね、なんとまだ十代なんですよ! いや〜もうすぐ三十路に手が届こうとしている視聴者さんや僕には眩しい存在ですね! 不慣れなところも、なまあたたか〜く見守ってもらえるとありがたいです! ねっ! 彼、根はいいヤツなんで!」



「よろしくお願いします」



「えー、それじゃあ新規さんのためにちょっと僕らのことを説明しておこうかな。僕らはですね、二人組で活動しているYouTuberです。主に依頼を受ければなんでもやるんですけど、最近は事故物件に一日だけ住んでその様子をお届けするっていう企画がメインになってますねぇ。ところで三号くん、事故物件って知ってますか?」


「ハイ」


「ハイじゃなくて! ここは視聴者さんに説明するところでしょ!」


「あ……そうですね。えーっと、事故物件とは殺人、傷害致死、火災、または事故や自殺など何らかの理由で人が亡くなった物件のことです」


「事故物件なんて聞くと、気味が悪いじゃないですか。最近じゃ、事故物件を集めたサイトなんてありますし。でもね、事故物件でも物件は物件なんですよ。お客が入らないとね、不動産屋さんが非常に困る!」


「ハイ」


「事故物件だってことは、次の入居者に伝えないといけないんです! ねっ困りますよね〜。いくら家賃が安くても、気味が悪くて誰も住まない! でもね、ここが抜け道です。事故が起きた次の入居者には事故を伝えないといけない、では、その次の入居者には〜?」


「……本当は、事故があったと知っているのならば全員に告知し続けるべきですけど」


「コラ! 三号くん、シーッ! ……まあ僕は性善説派なんで、こうして僕らみたいな人間を雇って一日だけ事故物件に住まわせて、事故物件であったことを伝える義務を放棄しようとしている人がいるなんて断じて信じてないですよ? もちろん!」


「そもそもこういうアルバイトって、元々は事故事件じゃなくてしゃっ……」


「ハイハイ! その話は長くなるから!」


「浅葱さん、誤魔化さないでください! 不動産業界が誤解されるじゃないですか!」


「ちょっ、いきなりの本名止めて!! マジで!! 僕もう不動産屋さん退職してるけど、名前でバレちゃうから!! ハーフマスクしててよかった〜」


「そういうことを言うから不動産への信頼がですね……」


「わかったわかった。三号くんは真面目だなぁ。もし、事故物件に泊まるアルバイトの真相っていうか、真偽が知りたい人いればコメント欄でコメントしてくださーい!」


「興味あれば、お伝えします」


「とりあえず今日は新生ゴーストイーターっていうことで、自己紹介だけにしておきますね! 明日からはまた事故物件動画配信するんで、チャンネル登録お願いします! 登録して下さると僕たちが投稿するたびに通知が行くので、大変に便利です! 今まで通りリアルな怪奇現象をスレスレまで投稿していきます!」


「ハイ」


「アナタの家、僕らが過ごした事故物件かもしれませんよ〜」


「……新築一戸建てなら問題ないのでは?」


「三号くん! これは決め台詞だから! 突っ込まないで!」


「ハイ」


「それでは! ゴーストイーターのウスバカゲロウ二号と!」


「……三号でした」


「ところで三号くん、前回まで僕の相棒だった一号くんはどうしたのかな?」


「死にました」


「そうか……惜しい人を亡くしたね。でも大丈夫! 彼ならきっと戻ってくるよ! それまで二人で頑張ろうね!」


「幽霊でもいいんで、一号を見かけたらゴーストイーターまで連絡ください」


「概要欄に連絡先貼っておきまーす! 感想や依頼もドシドシどうぞ! それじゃあまたね! ごちそうさまでした!」


「……ごちそうさまです」


「ばいば〜い」






<コメント:新着順5件表示>



アカウント名:なウルト

ゴーストイーター久しぶり!

ライオン姿懐かしい!

一号さんに説教されてた二号が先輩ぶってて笑うww

また毎日投稿してほしいよ〜^^



アカウント名:墨田

新しい相棒になったんですね。

三号くん、声が高くてかわいい!

顔出し希望。

一号さんはお元気ですか?

冗談でも死んだとかやめてください笑

どんどん痩せていくのがこわかったです。

一号さんの蟻マスクも三号くんが引き継げばよかったのに。



アカウント名:kun can

事故物件住みますアルバイトって本当にあるんじゃないの?

真偽ってなに?

知りたい知りたい!



アカウント名:みみ猫

どこで撮ってんの?

背景白すぎ。

いつもの会議室がよかった。

前みたいなガチめの心霊現象に期待。



アカウント名:花園のどか

最近引っ越したんですが、いくら寝ても疲れがとれません。

これって事故物件ですか?

どうやって調べたらいいですか?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る