1本目【誰かいる】一ヶ月以上住めない部屋
1-1 前編 【三号くん事故物件デビュー!】
「……いただきます。こんばんは、ウスバカゲロウ三号です」
「三号くん、コンビ名も言わないと」
「あ、『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ三号です」
「僕は二号! 今日はですね、新生ゴーストイーターとしてはじめての活動です! 僕たちは依頼を受けて、事故物件にアルバイトとして一日だけ住んでその様子をYouTubeで動画配信しているんですが、実際に泊まるのは一人だけなんですね」
「ハイ。三号が泊まります」
「以前のゴーストイーターでもウスバカゲロウ一号だけ泊まってましたし、まあそこは一号が三号に変わっただけだと思ってもらえれば!」
「二号さんは泊まらないんですか?」
「僕は動画編集とか裏方仕事のほうが合ってるの! それに、君たちみたいに霊感もないしさ」
「二号さんにも、霊感ありますけど」
「ちょっと〜こわいこと言うのやめて! 今日は車の中からお届けしているんですけど、見えますかね〜? ちょっとカメラ動かしますね」
「白と黒の六階建てマンションです」
「あれが今回の事故物件です! 一応、プライバシー保護のためにモザイクかけているんですけど、雰囲気だけでも感じ取っていただけたらと思います。今から三号くんがあそこに泊まりまして、その様子をお届けします! どういう物件なんですか?」
「えーっと……通称『一ヶ月以上住めない家』と言われているみたいですね」
「なるほど! その内容は?」
「普通のワンルームマンションなんですが、誰が住んでも一ヶ月以内に出ていってしまうそうです」
「契約一年以内に引っ越すと違約金がかかるのに?」
「ハイ。それで、調べたところ誰もその部屋で亡くなっていないんです」
「えっ!? 誰も死んでないの!? それじゃあ事故物件じゃないじゃん! 初回から企画倒れやめようよ!」
「それなんですけど、前回の動画でコメントがあったのでお答えします」
「事故物件に泊まるアルバイトの真偽ってヤツ?」
「夜逃げなどで持ち主がいなくなった部屋って、借金取りがしばらく訪ねてくるんです。そんな部屋に新しい入居者を入れられないから、アルバイトを雇って『本当に違う人間が住んでる』ってことを印象づけてもらうためにはじまりました」
「短期間だけ問題のある物件に住む、っていうアルバイトは確かにあったわけだね」
「今もあると思いますけど」
「それがどういうわけか、事故物件に泊まるアルバイトって作り話になっちゃったんですよね〜。噂が広がる時って、ほんのちょっと真実を混ぜれば良いって言うからなぁ」
「人が死んだ事実は無くなりませんから、調べれば何代前でも事故物件かどうかは分かりますし、入居者には全て知らせるべきです」
「……ま、それは理想論ってヤツだよ三号くん。キミも大人になれば分かるさ」
「わ……じゃなくて、三号はもう大人です!」
「ハイハイ、未成年さん。前のコメントにあった、自分の家が事故物件か気になる時は借りた不動産屋さんに聞いて下さい! とにかくガンガン! もし否定されたらひとまず安心していいんじゃないかな。たとえ事故物件でも、隠してる不動産屋の方に霊は憑いたりするし」
「あんまり無責任なこと言わないでくださいよ」
「僕はこれでも元・不動産屋さんだよ〜? 信じるか信じないかは、視聴者さんにお任せします! 今は事故物件かどうか調べられる便利なサイトがあるけどね」
「でもアレだって、全てをカバーできているわけではありません」
「あのサイトに載ってないからって、安心するのは早いってことだね」
「ハイ。事故物件として登録されていないのに『何故か人が長く住まない家』というものがあります。今回ゴーストイーターが調査するのはそういう家です」
「ま、大体そういう家は事故物件だったりするけどさ」
「それは今から検証していきます」
「最初から事故物件に行くときもあるよ〜。事故物件と、事故物件「かもしれない」場所で配信していきま〜す」
「よろしくお願いします」
「じゃ、一回カメラ切りますね。場面変わります〜」
***
「はい……えっと、現在ここはすでに物件の中です。普通のワンルームですね。電気は止められているので、懐中電灯で照らします。よくある間取りなので映しますね。……入ってすぐコンロなど水回りと洗濯機があって、トイレとお風呂、細い廊下の先に6畳ほどの部屋があります。前の入居者がでていったばかりのはずなんですけど、とてもきれいです」
『生活臭も残らないくらい短期間しか住めなかったんだね』
「あ。今、出ているかどうか分からないんですけど、一人で喋り続けるのも辛いんで……二号さんの台詞? ってゆーかテロップが下に流れると思います。視聴者さんから見ると、三号と二号が会話しているように見えるらしいです」
『一号くんは喋りが上手かったから一人でも間がもったんだけどね〜』
「……二号さん、もし変なことテロップで流したら怒りますよ」
『まかせろ!』
「時刻は午前二時ですね。真夜中なんですけど、さっきから結構激しく、カンカンって誰かが階段を上る音が聞こえます」
『早速幽霊かな?』
「このマンションには、夜型の人間が多いみたいですね」
『そうくるか笑』
「とりあえず一晩過ごすってことなので、二号さんから寝袋を預かってきました」
『一号くんも使ってた寝袋だよ!』
「三号にはちょっと大きいです」
『彼は背が高かったからね〜』
「荷物は運び終えたので、部屋の紹介でもしましょうか。ワンルームだから特に言うことはないですけど。正方形の部屋で……窓は開きますね。ここは五階です。目の前に別のビルがあって、特に景色は良くないですね」
『六階の住人が夜型なのかな?』
「さっきも説明しましたけど……。玄関と、洗濯機にコンロ。前の住人が置いていったらしいので、お金を節約したい人にはいい物件なんじゃないかと思います」
『そういう問題じゃないでしょw』
「次はトイレと、お風呂ですね。一緒になっているタイプです」
『三号くん!!!』
「え?」
『鏡に誰か映ってる!!!』
「なんでしょう? この白い影……」
『振り返って!』
「誰も……いないですね。……ああ、相変わらず上の住人がバタバタうるさいです」
『鏡の中!!』
「……な、なに?」
『三号くんの後ろを横切った!』
「なにかが……動いたような気がするんですけど」
『追いかけて!』
「眠いし、寝ますね」
『三号く〜〜〜〜〜ん!!!!!』
「おやすみなさい。……あ、ごちそうさまでした。コレ、動画の終わりに言うみたいですね」
『切れたw え〜っと……ハイ、ごちそうさまでした! 後編に続きます! ばいば〜い』
<コメント:新着順5件表示>
アカウント名:ゆーマ
一日だけなんだ!
泊まったその日に何か起きるとかすごくない?
次回に期待!
アカウント名:NAMIKA
なつかしいBGMw
テロップのタイミング、もうちょっと遅い方がいいかも。
あと三号が不慣れなのかカメラの手ぶれがヒドいww
ブレなのか心霊なのかわからんww
もうちょっとがんばってw
アカウント名:カリカリ君
二号もなんか最初より痩せてない?
マスク越しだからよく分からないけど。
三号くんは早く顔出しするべき。
アカウント名:び0
旧・ゴーストイーターの動画にはお世話になりました。
一号さんの喋りはおもしろくてラジオみたいで、作業用によく使っていました。
今の方式もいいけど、また出てきてほしいです。
アカウント名:まこ まこ
その物件、やめたほうがいい。
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