概要
ひとが持っている、たったひとつのほんとうの魔法
人は、愛を言い訳にして嘘をつく。
『あなたは人魚姫の娘だから、人をとりこにする美しい歌声と、ダンスを踊るすてきな足を持っているの』
愛していたから、そんな嘘で捨てられた子を慰めた。
子どもは嘘だなんて知らずに、舞台の上で歌い、踊っていた。
にせものの魔法が作った、にせものの人魚姫。
すべての魔法がとけてしまった日、その何もかもを、許せなくなった。
幼いころから所属していた劇団の、何より目標としていた人魚姫のオーディションに落ちてから、誰ひとり、自分自身までも信じられないまま、ユキは誰も来ない池のほとりで人魚姫を演じ続けていた。この世界の誰も、ほんとうのユキなんて求めていない。ユキ自身も、ほんとうの自分が何かわからない。
そうして世界の何もかもが嫌になって投げ捨てそうになったとき、ユキを「
『あなたは人魚姫の娘だから、人をとりこにする美しい歌声と、ダンスを踊るすてきな足を持っているの』
愛していたから、そんな嘘で捨てられた子を慰めた。
子どもは嘘だなんて知らずに、舞台の上で歌い、踊っていた。
にせものの魔法が作った、にせものの人魚姫。
すべての魔法がとけてしまった日、その何もかもを、許せなくなった。
幼いころから所属していた劇団の、何より目標としていた人魚姫のオーディションに落ちてから、誰ひとり、自分自身までも信じられないまま、ユキは誰も来ない池のほとりで人魚姫を演じ続けていた。この世界の誰も、ほんとうのユキなんて求めていない。ユキ自身も、ほんとうの自分が何かわからない。
そうして世界の何もかもが嫌になって投げ捨てそうになったとき、ユキを「
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!とびきり美しい海の夢をあなたに見せたい
主人公のユキは16歳の劇団員。
彼女が人魚姫のオーディションに落ちた瞬間から、物語は始まります。
信じていたものを粉々に砕かれて、失意のうちにあった彼女が出会ったのは、白馬の王子様ではなく、夜中に池の柵を越えようとしている不審な美青年・アレクシスでした。
女神が愛した美しい街、フロル・ネージュと、芸術に生きる人々の情景が、精緻な言葉で綴られた作品です。
”人魚姫に誰よりふさわしいのはわたしであるはず”
”だってわたしは人魚の娘なのだから”
冒頭のユキの独白は、何も知らない読者には謎めいて映ります。
ユキを取り巻く世界は、どこか不思議で、まるでおとぎ話の中のよう。
けれど、アレクシスとの交…続きを読む