双子や同性の兄弟姉妹というのは、どうしても片方を意識してしまうものですが、物語において出来の良い方悪い方(あるいは両方出来が良いが個性が違う)という対比が多いのはそっちの方が盛り上がるからだと思っています。
出来が悪い方が良い方を妬んだり、良い方が悪い方に執着していたり、ドラマは幾らだって生まれます。
このお話も一見して『不出来な姉が出来の良い妹に嫉妬をしている』という構図にはなっているんですが、一人称のお話なので一概にそうとも言い切れません。
姉が妹を妬むエピソードが紹介されているのですが、それを挙げてみても……
双子が恐らくは禁止されている場所である庭の池で遊んでいた時に見つかったが、妹が姉をかばう発言をしたため、自分の評価が下がった。
王妃が亡くなった時、妹姫が家族の前で涙を流したために同情を買い、本当に欲しかった遺品は妹の手に渡ってしまった。ちなみに品数自体は姉の方が多い。
夜会でははしたないと言われながらも隣国の王子に積極的にアプローチした妹の方が宴を楽しみ、姉は壁の花に追いやられた。
実は妹は何一つ姉を貶めて蹴落としたりしてないんですよね。
むしろ被害妄想ではないのか? と疑問に思います。
庭の池で遊んでいた時に妹が姉にそそのかされたと言ったら言ったで多分妹を恨んでいただろうし、遺品が逆になったところで「あっちの方が品数が多かった」と言いそうな気がするし、宴の件にしても逆恨みでは?という気がするような。
もしかして
能力的には差はそこまでないのでは……? と思ってしまったり。
そう思って見てみると、姉姫は物凄く人間らしい愛しさあふれる姫なんですよ。
不完全故に愛おしい……。
姉と妹の差とは、上手くやるかやれないかではなく行動を起こすか起こさないかではないでしょうか。
行動を起こし、それに伴った結果を得る妹に嫉妬というか恨みを抱いてしまう姉。
その解釈で読むと姉姫は実にお姫様らしい子です。
受動的であるのに、それでいて妬み嫉みの感情は持っている。
このお話は完全に姉視点なので、妹がどう思っているのかというのは語られません。
私は妹はこの子どもっぽくて不完全な姉をそれなりに愛しているのではないかなと思います。
「お姉様は一生、わたくしのことを引きずって生きてくださいませ」
というセリフとか。
イケメンにぽわーっとなってるゲンキンな姉に舌を出したりとか、もう妹ちゃんお姉ちゃんのこと好きですよね。
屈折愛かもしれませんね。
してやられた!と思いながらも蛮国に嫁ぐ妹が不安でいっぱいになってる時は、また気持ちがころっとかわって、妹に心からの同情と優しい言葉をかけてあげて欲しいな、そういう単純さに妹は救われてほしいなと思いました。