概要
特殊な力を持つ血が流れる娘と、初恋に全てを捧げた青年。
仄暗い閉じた世界で紡がれる、危ういほど純粋な恋は、ある夜を境に急激な変化の渦に飲み込まれる。
*
この世界には、『翡翠』と呼ばれる人間がいる。
吸血族は、その血を吸い尽くすと不老不病になれる。
『翡翠』である凛子(りんこ)は、五年前、名家の吸血族、怜(れい)に引き取られた。
二十歳の誕生日を迎えると同時に、怜に血を吸い尽くされるために。
だが、自分の命を奪うはずの怜に、凛子は恋をしてしまった。
二十歳まであと三か月と少しとなったある日、凛子の付き人として元罪人の青年がやってきた。
『農場』と呼ばれる孤児院で、凛子と一緒に育った、友人の伊織(いおり)だ。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!深い深い愛に満ちた、どこまでも美しく哀しい物語。
とある時代の、東京国。
人間の血を吸うことで命を養う吸血族が強い支配力を持つ場所。そんな土地に、表向きは孤児院でありながら、その実態は吸血族の食料とするための人間を育てる「農場」があった。
そこで育てられた少女、凛子は、ある日自分が特別な血を持っていることを知らされる。
彼女は、その身体の血を全て飲んだ吸血族に永遠の命と若さをもたらす特別な存在——「翡翠」だった。
買い取られた主人に、二十歳でその命と血を捧げる運命。それを知りながら、彼女は「花嫁」という名の「餌」として、吸血族の美しい主人・怜の元へ引き取られて行く。
同じ孤児院で育ち、彼女を深く慕う幼馴染の美しい青年、伊織。彼は凛子を何とか…続きを読む - ★★★ Excellent!!!傑作!! 最後の最後まで面白いので、文字数に躊躇せず是非読んでみて!!
ここまで素晴らしい作品だとは驚きました。
ネタバレせずにあらすじを書くのが難しいので、以下は私の感想がほとんどです。
エンターテインメント作品として、かなりのレベルだと思いました。
タグに「吸血鬼」とあり確かにそうなのですけれど、ホラー色は強くありません。切なさ、もどかしさ、スリル、驚きのある展開、吸血鬼もの特有の耽美な描写、主人公の成長、青春小説の爽やかさ、など様々な側面を見事に調和させた作品です。
突出した点をどれか一つとなると、そうですね、約19万字あるのにも関わらず、中だるみした箇所が一切なかったことです。
私は10万字書くのがやっとなので、19万字をこの密度で書ききるとは、作…続きを読む - ★★★ Excellent!!!一言では言い表せない面白さ
散々悩みましたがこれに尽きます。35文字に集約できないほど面白かったです。
この作品は……独特の雰囲気を放っています。
吸血鬼(厳密には吸血族)という人間ではない種族の存在。己の命を奪う当主に恋心を抱く主人公の凛子。そんな彼女を危なっかしいほど一途に想う幼馴染みの青年、伊織。そして将来凛子を殺す者となる怜様の不可解な行動……。
閉鎖的な屋敷に蔓延するどこか退廃的で耽美的、全体的に不透明で不安を煽る混沌とした空気には思わずくらくらしそうになるほど。そう感じてしまうほど本作はとても濃密です。
特に各人の感情表現や思いの丈を表す描写はたまりません。凛子の心、伊織の心、怜様の妻・美那さんの心、ご…続きを読む - ★★★ Excellent!!!あなたの愛が、私を変える
特別な血を持つが故に、美しい吸血族の男に『花嫁』として買われた少女、凛子。心の底から凛子を愛し、命懸けで救おうとする幼馴染の青年、伊織。
読み始めた頃、自尊心の欠片もなく、自己犠牲も厭わぬ伊織の熱い想いに全く気づかないヒロインが大嫌いだった。良く言えば、幼な子のように純粋で従順。だが、血を吸い尽くして命を奪うためだけに自分を買った男に淡い恋心を抱き、言われるがままにその身を差し出す凛子の姿に、否定的な感情を抱く読者も少なくないはずだ。それこそが、作者の意図するところなのだと、後々気付かされることになるのだが。
対して、凛子を尽きぬ愛情で優しく包み込み、時に狂気めいた庇護欲で自らを犠牲にし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!吸血族のいる世界。そして、「人を好きになる」ということ
次回から最終章、いよいよクライマックス、というところでのレビューです。
人間は吸血族の食糧である世界。その中でも、特別な『翡翠』と呼ばれる血を持つ凛子は、二十歳になるときに吸血族に血を吸い付くされるために、名門吸血族に引き取られた――。
凛子を救うため、幼馴染の伊織は奔走します。
けれど、彼の気持ちに全然、気づかない凛子ちゃん。物語の始まりのころは、応援コメントで「凛子ちゃん、駄目でしょ!」「鈍すぎ!」とツッコみまくりました。
悪い子ではないのです。とても純粋ないい子です。けれど、結果として伊織を傷つけてしまうのです。
けれど、どこか憎めません。駄目なところはあるけれど、応援…続きを読む - ★★★ Excellent!!!吸血鬼の物語であり、恋愛の物語であり、さらには……
最新の15話まで読んでのレビューです。
吸血鬼が当たり前のように人間を管理しその血を吸っている世界。
ヒロインの凛子はその当主に見初められ、花嫁として貴族社会へ召し上げられます。しかし彼女には幼馴染の伊織がいて、彼はなんとかその窮地から彼女を救い出そうとしていて……
という感じの話ではありますが、これだけではこの物語の良さをまるで説明できないのです。
おススメしたいのはこの物語が吸血鬼の物語としてとてもいい雰囲気を持っていることです。
それは読みやすいながらも、雰囲気のある言葉遣い、それらが紡ぎ出す退廃的で耽美的な雰囲気だったり。同時にヒロインの心情を丹念に追い、また伊織や当主の何とも魅力…続きを読む