一言では言い表せない面白さ

散々悩みましたがこれに尽きます。35文字に集約できないほど面白かったです。

この作品は……独特の雰囲気を放っています。
吸血鬼(厳密には吸血族)という人間ではない種族の存在。己の命を奪う当主に恋心を抱く主人公の凛子。そんな彼女を危なっかしいほど一途に想う幼馴染みの青年、伊織。そして将来凛子を殺す者となる怜様の不可解な行動……。
閉鎖的な屋敷に蔓延するどこか退廃的で耽美的、全体的に不透明で不安を煽る混沌とした空気には思わずくらくらしそうになるほど。そう感じてしまうほど本作はとても濃密です。

特に各人の感情表現や思いの丈を表す描写はたまりません。凛子の心、伊織の心、怜様の妻・美那さんの心、ご隠居の心、他にも様々な人達の直向きな想い――。
個人的に良い意味で絶句したのは後半のある人が語る昔話。この部分は是非とも最初から目を通した上で読んで、知ってほしいです。

そしてそして、ある話を境に発覚する衝撃的な事実! そこから目まぐるしく動く驚きの展開! しかもそれは一つだけではない!
息をつかせぬとはまさにこのこと。一気に主人公達から目が離せなくなります。

あ、その主人公の凛子ちゃんですが、他の方のレビューから察せられる通り最初は結構人を選ぶかもしれません。ですがご安心ください、それは作者様の意図的なものです。冒頭の彼女の癖は強いですが、それがあるからこそその後の目覚ましい成長にじーんときますので。

様々な愛が交錯する物語『翡翠に捧ぐ』。是非ともご一読ください!

その他のおすすめレビュー

實鈴和美さんの他のおすすめレビュー26