まず、作品のタイトルがとてもかっこいいです。響きもそうだし、文字の並びのビジュアルも。
メインの二人のキャラクターの重苦しい設定を知れば、この物語に単純に幸せな結末は待っていないのだと想像できる。その物悲しい雰囲気の中で、花菜と駿が少しずつ築いていく大切なナニカが綴られていく物語。
二人を取り巻く数少ない友人たちとの大人な関係性が、とても心地良い。優しい人たちだからこそ、その心に大きな傷を負った出来事が痛々しく感じられる。
物語は一人称視点で進んでいくため、広くというよりは、深く深く人物の心情が描かれる。
雲から僅かに覗く晴れ間が、二人の心に重なって見えた。
本作、実は最低四回は読んでいます。
一回目は別の投稿サイトで。二回目は改稿前のもの、三回目はその再読で。そして今回の改稿後の四回目。なので登場するキャラも話の流れも結末も全部知っていて覚えていますが、それでも泣いてしまいました。
主人公の花菜と彼女の幼馴染みの駿は、十年前の事件のせいで以後過酷な人生を送ってきました。
だからこそその二人がようやっと得られた幸福は、端から見たらごくありふれた些細なものでも何物にも代えがたいという事が非常に強く伝わってきます。伝わるからこそ、物語を追っていくにつれて二人が過ごす温かな日々が本当に脆く儚いという現実も一緒に突きつけられて……。それだけで終わるなら「後味が悪い悲しい話」で終わるんでしょうが。
確かに辛い展開に対して泣く事もありました。でも、最後までこの温もりは穢される事は無かった。最後は……ああなってしまいましたが、それでも確かに二人は救われた。その紛れもない事実にもほっとし、泣いてしまうんです。
『狼よ、白き薔薇を抱いて眠れ』、個人的に作者様の中で一、二を争うくらい好きな小説です。是非読んでみてください。
この作者様が以前、投稿されていた同名タイトル作品の改稿版です。
ストーリーの流れはそのままに、より凝縮され、読みやすく生まれ変わったそうです。
連載は始まったばかりですが、私は改稿前の作品を読了しているので、是非、皆様にお勧めしたく、レビューを書かせていただきます。
「吸血種」と呼ばれる、人間とは違う種族のはびこる世界の中で、ヒロイン花菜(はな)の境遇はとても過酷です。
そのため、彼女は少し卑屈です。
けれど、それは「それまで」の彼女の生き方から仕方のなかったこと――。
やがて彼女は、自暴自棄にならずにきちんと生きることを考えます。
大切な人を幸せにして、自分も幸せになろうとします。
そんな、彼女の純粋な気持ちに心打たれます。
この世界ですから、辛い展開もあります。悲しいことも、悔しいこともあります。
楽しいこともあるけれど、楽しいだけではありません。
悲しいけれど、悲しさの中から、幸せを掴み出せるようになるヒロインが素晴らしいのです。
読了後は、この物語を読むことができてよかった、と素直に感じることができます。
この改稿版は毎日更新ですので、連載を追っていくのが好きな方は、今すぐ追っていくことをお勧めします。
そして、完結作品を読むのが好きな方は、ほんの少し待ってから、是非、一気読みしてください。