吸血族のいる世界。そして、「人を好きになる」ということ

 次回から最終章、いよいよクライマックス、というところでのレビューです。

 人間は吸血族の食糧である世界。その中でも、特別な『翡翠』と呼ばれる血を持つ凛子は、二十歳になるときに吸血族に血を吸い付くされるために、名門吸血族に引き取られた――。

 凛子を救うため、幼馴染の伊織は奔走します。
 けれど、彼の気持ちに全然、気づかない凛子ちゃん。物語の始まりのころは、応援コメントで「凛子ちゃん、駄目でしょ!」「鈍すぎ!」とツッコみまくりました。
 悪い子ではないのです。とても純粋ないい子です。けれど、結果として伊織を傷つけてしまうのです。
 けれど、どこか憎めません。駄目なところはあるけれど、応援したくなるのです。
 それは彼女が、真っ直ぐな人だからだと思います。どんな人にも、いいところと悪いところがあります。つい、口が滑って言ってはいけないことを言ってしまうこともあります。
 彼女はその典型です。でも、言ってしまったあとで、ちゃんと自分と向き合います。そして、少しずつ、成長していきます。
 初めのころは「こんな子、嫌い」と言われそうなヒロインですが、身近で等身大で、そこが魅力なのです。クライマックスに差し掛かった今の彼女と、昔の彼女。同じところもあれば、違うところもあります。

 吸血族の食糧となる運命だった彼女が、どうなるのか――。
 彼女の成長を、ドキドキと共にぜひ読んであげてください。

 コトコトという、ストーブの音が聞こえる文章。
 柔らかな風景が浮かび、女子力の高い伊織の作る食事が香り、読み始めれば一気に物語に引き込まれていくと思います。

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