馬鹿馬鹿しい物語が、ひとつにつながる。
村人たちはじゃんけんに熱狂し、ある男は不可思議な一生を謳歌する。近未来の都市では労働と称して人々が走り回り、遠いどこかでは荒唐無稽な物語が綴られる。八王子の女子大生は恋をして、人ならざる怪物たちはさまざまな時代へとタイムトラベルを決行する。
七話でひとつの連作ショートショート/短編集。
〈収束〉「それぞれの本気」
仙人は軽快にジョークを飛ばし、ある村はじゃんけんに熱狂し、有名ブロガーは後悔とともに嘘を吐く。武士は宇宙人と出会い、魔法老婆は夜の公園で化け物と戦い、男はアイドルに愛を語りかける。
彼らから得られる教訓など何もない。
だが、全員が本気であるのは間違いがない。
〈人生〉「或る男の一生」
人はさまざまな経験をする。
サンタクロースを捕獲しようと目論んだって、異世界で魔王を討伐したって不思議じゃない。三十路で恋人にふられることも、中年になってから自信をなくすこともあるだろう。五十で地球を守るために尽力する人もいれば、悪ガキに翻弄される還暦のおじいさんもいる。
長く生きていれば教訓を得られることもあるさ。
〈旋回〉「百年紙飛行機」
時代は変わっても紙飛行機は飛び続ける。
街を走り回る青年、何かを投げることに執着する女、ついていない男、エロスを追い求める少年、競争が好きな家族、お節介な犬。
彼らの頭上で、紙飛行機はぐるぐると旋回する。
〈単発〉「価値のある虚言」
この世にはさまざまな物語が存在する。
適当に書かれても、真剣に書かれても、それはたぶん、命がけだ。
〈恋心〉「八重樫せんぱい。」
わたし、九藤やえは恋をしていた。
どうして、と訊ねられるが、気にしない。
やめた方がいいよ、と忠告されるが、気にしない。
だって、好きなんだもん。恋する女の子にとっては赤信号だって進めになるのだ。
同じ大学で、一つ上の、八重樫せんぱい。
好きな気持ちは止められない。
〈行進〉「人外☆タイムトラベル」
科学者は時の流れをおもちゃにする。
さまざまな時代に送り込まれたのはろくろ首、人魚、メデューサ、鬼、ミノタウロス、天狗。彼らはあまりにも常識的な力ではしゃぎ回る。
世界が蹂躙されることは、決してない。
(『小説家になろう( https://ncode.syosetu.com/n0855eh/)』でも掲載しています。)