爆弾に夕立を添えてお召し上がりを

作者 カスイ漁池

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★★★ Excellent!!!

なに不自由なく満たされた社会はユートピアだろうか。
ボタン1つで供給される食料、働かずとも回る社会システム、
物理的な肉体を必要としない仮想現実の娯楽コンテンツ。
空は巨大スクリーンに映され、天候さえ人工的に管理される。

近未来の日本は科学を偏重し、現実の肉体を置き去りにして、
国家まるごと仮想世界に引きこもり、入り浸ってしまった。
整備された社会に問題は少ないが、屋代は問題の中で育った。
浅井は、高校時代に彼の価値観を共有し得た稀有な友人だった。

最高にROCKだ。
人の魂を揺さぶる。
革命を起こす。
目を覚まさせる。

『感染性バスジャック症候群』『じゃんけんに熱狂する村』の
訳わからん勢いのユーモアを炸裂させるカスイ漁池も好きだが、
『罪人のレプリカ』の真っ向から語る骨太なカスイ漁池が
私はとにかく好きで、本作もまた真正面からガツンと来た。

軽妙な台詞回しのセンスは、シリアスな展開の中にも健在だ。
地の文のほどよい密度も、しっかりと構成された社会像も、
全面的に信頼して読める。安心して作品世界に没頭できる。
〈ヤーン〉の味、〈エイブラハムの樹〉の音が飛び込んでくる。

これが本物の飯テロだ。
リアルな幸福は配給も配信もされない。
不満ひとつ抱かせないぬるま湯に甘やかされるな。
ライブで掻き鳴らされるロックに魂をぶち抜かれればいい。