画面の中のアイドル
ねえねえ、キララちゃん、この前のライブ、すごかったねえ。僕、ちゃんとブルーレイ買ったんだ。あ、せっかくだし、一緒に見ようか。もう何回も見たからどのシーンにキララちゃんが出てくるか、覚えちゃってるけど。
今ね、キララちゃんが出てるカットまとめてる途中なんだ。でも、作業があんまり進まないのが困るんだよねえ。だって、ほら、僕ってキララちゃん見てると胸がぎゅうっと締めつけられてどうしようもなくなるでしょ? ほんと、「プンプン」だよ。あ、ごめん、催促してるわけじゃないんだ。やってくれたら嬉しいだけで。
え? やってくれるの?
嬉しいなあ! あ、ちょっと待って、正座するから。あー、ドキドキする。では、どうぞ!
……はあああん! キララちゃん、かわいい! かわいすぎて罪だよ! キララちゃんは神さまが生んでくれた贈り物だね!
ああ、もうドキドキしてきた。ほら、僕の胸触ってみて、心臓爆発しそうでしょ? 遠慮しなくていいからさ。ね、ね、ね? キララちゃんの指、暖かいなあ。白くて細いし、爪も綺麗だ……僕も触っていい? いいよね?
嬉しいなあ……まさか、キララちゃんとこうする時間が来るなんて夢みたいだよ。画面から出てきてくれたときは驚いたんだからね。隣の馬鹿な大学生はキララちゃんのこと気付かなかったみたいだけど、もったいないよねえ。あ、でも騒ぎになっちゃうと困るかな?
ねえ、キララちゃん、僕のこと、好き? 好きだよね? そうだよね?
うん、僕もキララちゃんのこと好きだよ。好き好き、愛してるよ。いつまでだってこうしていたい。地球が滅亡したって二人でいたい。いや、どっちかっていえば、地球が滅亡して新しいアダムとイヴになるのも素敵じゃない?
僕はキララちゃんのこと何でも知ってるしさ……本名とかどこで生まれたのかとか、いつも何をしてるのかとか、何でも知ってるよ。でもキララちゃんはキララちゃんだから言わないけどねー。
って、まずい! もう九時じゃないか。今日はキララちゃんの出る番組があるんだった。一緒に見ようね、キララちゃんが最高に輝くところ。
……あれ? ニュース速報だって。どうしたんだろうね。ふーん、「キララちゃんが行方不明」なんだってさ。キララちゃんずっとここにいるのに、おかしいねえ。
あ、呼び鈴だ。誰かな。また隣の大学生かな……面倒だけど、しつこいんだよねえ。ちょっと行ってくるね。
え、あ、お、おまわりさん、どうしたんですか? え? この家には僕とキララちゃんしかいませんよ? あ、ちょっと! なんで中に入るんですか! やめてください!
……まったく、キララちゃんグッズに傷がついたらどうするつもりですか。ええ、そうですよ。一生懸命集めたグッズなんです。世界に一つしかない、僕の自慢なんですよお。
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