荒唐無稽な理路整然。無理によく似た道理が飄々として貫かれる。

何を食べて育ったら、こういう作品を書く人になるんだろう?
かすみだろうか。
この人の頭をカパッと開けて中身を見てみたい、と、
異分野ならともかく、小説の世界では久々にそう思った。

私はご都合主義な筋立ての小説が苦手だ。
「特に理由もなく、十分な説明も設定もないままに、何故か」
愛されるとか異性との同居が始まるとかチートな能力を得るとか
タイムスリップするとか異世界転生するとか歴史改変するとか。

要するに、ウェブ小説で流行る系統が軒並み苦手なわけで、
じゃあ何が好きかと言えば、「リアリティある不条理」だけど、
この『じゃんけんに熱狂する村』には何かいろいろぶっ壊された。
価値観とか、いろいろ。

7本セットで、1つのストーリーが完成する。
一見バラバラなショートショートが、予測の裏を掻いて繋がる。
荒唐無稽でメチャクチャなのに、ご都合主義なんかではなく、
理由も説明も設定も飄々と語られるから、妙に納得できてしまう。

ショートショートと言えば星新一、と単純な発想に至ったのは、
「エヌ氏がいる世界の常識」をさも当然であるかのように語る、
あのぬけぬけとした感じを鮮やかに思い出してしまったからだ。
ラーメンズの知的で芸達者で整然としたぶっ飛び方も思い出した。

各話について「こういうストーリーでした」とうまく言えない。
言わないほうがいいし、言っても未読のかたには伝わらない。
とりあえず、なんかこう、ほっこりしたりいい話だったりします。
変な吸引力や中毒性があって、7本読むまでやめられなくなります。

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