古き時代の生活とハイカラな西洋文化が入り混じる、何とも雑然とした賑やかしい大正の世が舞台のお話。
色鮮やかに描き出される街の様子や、たびたび出てくる飯テロシーンから、この時代の空気感にすっかり惹き込まれます。
個性的なキャラクターが多く登場しますが、中でもメインの二人の関係性が魅力的です。
うだつの上がらない奇術師・一色と、辛辣な物言いの霊能者少年・後藤。
相性最悪で仲悪すぎるの二人のやりとりに、ついニヤリとしてしまいます。
有象無象の仲間たちや正体不明の敵、果ては謎の天狗や未来人まで。
次々起こる怪奇現象の謎を追ううち、人々の心の中にある『悪意』が存在感を増してきて——
いつの時代も、『普通でない人』は異端として見られがちです。
世間の目と、生きづらさ。
彼らの儘ならない人生模様が、テーマとして背景にあるように感じました。
第四章に仕掛けられた舞台装置は圧巻。
盛大で華々しいクライマックスの後、ちょっと関係が氷解した一色と後藤のラストシーンが爽やかでした。
またいつか彼らに会えたらいいなと思える、心楽しい物語でした!