概要
折り良く、颯斗は祖父の法事で思い出の比彌(ひみ)島を訪れる機会を得る。鹿児島沖の離島で颯斗を待っていたのは気さく過ぎる島民たち、奇妙な風習、遠縁の少女との出会い。そして、海で彼を待つのは「何」なのか──
孤島の伝承にまつわる真相を紐解く土着ホラー、異種間恋愛要素もあります。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!一気読み不可避!群青色の因習村ミステリー
いやーー面白かった!
一話冒頭を読んで、「これ睡眠時間削ってでも続きを読んじゃうやつ」とピンと来て、暇な日に腰を据えて読み始めました。
予想どおり、一気読み不可避でした!
南国の植生、蒸し暑い気候、島嶼部の地形、海辺の匂い、主人公と同じくらい読者のヒアリング力も試される方言…ほんとにこの島が存在していて、夏休みに訪れたような臨場感があります。
圧巻の描写力で描き出される南海の孤島、ぜひご堪能ください!
とはいえ…こちらの作品の一番の見どころは何と言っても、先が読めないシナリオです!
主人公が島に呼ばれた理由に始まり、本心の見えない島民たち、何かわからないけど起きてる異変、怪異の正体、味方…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ホラーは読まないあなたにこそ、この知的な恐怖をオススメしたい
ホラーと名の付くものは極力避けて通る私ですが、タイトルと「民俗学」のタグに惹かれて「一話だけ……」と仰け反り気味にページを開き、あっという間に魅了されて全部読んでしまいました。
物語が事件へなだれ込む時の急降下させられるような場面転換にも感嘆しましたが、この作品の真の魅力は細部にあると思います。
屋久島から比彌島へ、船へ乗せてもらってきつい方言をどうにかリスニングして、食事をごちそうになって──そのひとつひとつに香りまで感じるような丁寧な描写は脳裏の映像を色鮮やかにしても良さそうなのに、どこか嵐の起きる直前の晴れ間のような、端の方がちょっぴり翳っているような、静かな不気味さを抱かせます。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!伝承と怪異が絡み合う。美しい海を舞台に描かれる幻想的な伝奇ホラー
物語は主人公・颯斗の不可思議な夢から始まる。
やがて祖父の法要のため、祖父が生まれ育った九州沖合の離島・比彌島に赴いた彼を待ち受けていたのは、当地において語り継がれてきた古の伝説と奇怪な事件だった……。
架空の離島を舞台に展開される長編伝奇ホラー。
フィクションとはいえ、島で用いられる方言や伝承にはリアリティがあり、細部のディティールへのこだわりが物語の完成度を高めている。民俗学に興味のある向きにとってはたまらないポイントだろう。
ストーリー面に目を向ければ、島に伝わる過去の因習をめぐる謎解きや、主人公と島民との駆け引きといったミステリ的な要素も充分に楽しむことが出来る。
ホラーではあるも…続きを読む