第50話 青の剣

 王都、冒険者ギルドへ依頼を貼った翌日。

ナターシャも含めた皆んなでギルドへ。


 依頼内容は、竜の息吹と一緒にダンジョンへ潜りたい人orパーティー募集。

 報酬はなし。ただし、魔物の素材は全て差し上げます。詳細は受付にて。


 受付には、1名、もしくは1パーティーの依頼でストップしてと伝えてある。あまり多く人が集まっても困るしな。

 集合時間など伝えてもらうようにしてあるのだが、正直、クエスト受けてくれる人がいるのか少し不安…


「おはようございます。竜の息吹です。昨日の依頼、どうでした?」

「あぁ。皆様おはようございます。ちょうどあちらにお待ちですよ」


 受付穣が指した方に目をやると2人組が待っていた。


 どこかで見たことあるような…


 するとバッツがさーっと2人の前に出た。


「おぉクリスじゃねぇか!!俺たちの依頼受けてくれてありがとな!!」

「バッツ君、その…迷惑じゃなければ、よろしくお願いします!!」


「はっはっは。なんだそのバッツ君ってのは、バッツでいいよバッツで。で、もう1人は、パーティーメンバー?」

「そ、そうなんだ。僕と一緒、青の剣のメンバーで、カルロスって言うの」

「…カルロス…です」


 紹介されたのは、クマの獣人。

 2人ともまだ冒険者になって1年。13歳で、最近Eランクに上がったのだとか。


 ダンジョンへ行く途中に2人の戦闘スタイルを聴いておく。


「戦闘スタイル…正直まだ分からないんだ…とりあえず頑張って貯めたお金で剣と防具だけ買った」

「そうだね…」


 クリスの答えにカルロスも同意する。


「了解。とりあえずダンジョンの1階層に行ってみるか。そこで色々やってみよう」


 気のせいかカルロスに監視されてるような…


「あの、カルロス?何かあるのか?」

「‼︎。いや、なんでもない…です」

「ちょっとカルロス、失礼だよ」

「…でも…」


「安心しなさい。別に私達、あなた達を取って食べたりしないわよ。虐めるにしては弱過ぎですもの」


 やばい…カリーの口調が少し怒ってる…

 少し緊張した雰囲気のままダンジョン1階層へ。


「よし、着いたな、ここはウルフ系の魔物が出てくる。2人とも戦ったことある?」

「それが、まだ無いんです」


 クリスが申し訳なさそうに答える。


「なぁロドニー、ここは俺達に任せてくれないか?」


 バッツが言ってくる。


「了解。ならバッツとカリーに任せる。おらとナターシャは見学で」


 バッツ、カリー、クリス、カルロスの4人で話し合い、最初のウルフがやってきた。


「よし、作戦通りにすれば2人とも大丈夫だ!!落ち着いて行けよ」

「だだだだ、大丈夫かな…頑張る」

「クリス、行くぞ!!」


 緊張しまくりのクリスとは対照的に冷静なカルロス。意外と良い動きをする。


「カルロス…うん。頑張る!!」

「ウルフ。こっちだ!!」


 カルロスに意識を向けさせて、隙をみてクリスが攻撃。悪く無い作戦だ。

 だが、ウルフが思ったよりも動きが速く、カルロスが反応できずに腕に噛みつかれる。


「ぐっ…このっ!!」

「カルロス!!えーーい!!」


 カルロスはあえてずっと腕に噛み付かせておいて、クリスがウルフを攻撃しやすいようにした。


「あぁ〜、あれはダメなやですね」


 隣にいたナターシャが言った。


「ダメなやつって?」

「いや、あのカルロスがクリスを守る動きをしてるんですよ。自分が犠牲になってもクリスを守るんだって気持ちが伝わってきます」

「守りたい気持ちがダメなの?」


「時と場合によっては毒ですね。クリスからしたら、戦闘の度にカルロスが体を張って自分を守ってくれてる…ボロボロになって行くカルロスを見て、耐えきれなくなって、パーティー解散って流れを結構見てきたんで」

「あぁ〜。なるほど」


 今後どうなるかは誰にも分からないしな…

 カルロスの怪我を治してあげるカリー。

 カルロスは気のせいか少し恥ずかしそうにしていて、クリスは何故か羨ましそうにしている…三角関係⁉︎


 いらない想像をしてるとカリーがこっちにやってきた。


「ねぇロドニー、私達ってどうやって強くなったの?」

「え?」

「今の戦闘って全然ダメだったじゃない?」

「まぁそうだな…運良く勝てたって感じ」

「で、自分がどうやって強くなったのかな〜って考えてたら、分からなくなって…」


 まぁあるあるなのか?


「ん〜俺は基本的な魔力の使い方しか教えてないよ。あとは2人がどう強くなりたいか、明確なイメージがあったから強くなれたんじゃないのか?」

「!!たしかに…ありがとう」


 そのまま青の剣の所へと戻るカリー。


「ところで、ナターシャ俺たち今暇だよな?」

「そうですね」

「ならボスでも倒してる?」

「えっ…」


「お〜いバッツ!!ナターシャ借りていくぞ!!とりあえずブラッドオーガと遊んでくるから、また夕方にギルドで」

「わかった!!ナターシャ頑張れ!!」


 そしておれはナターシャを連れてボス部屋へ転移。


「ちょ、ちょ、ししょーー!!」


「はい。と言うとこで、ナターシャ、今からボスマラソンね」

「ボス、マラソン?」

「夕方になるまでずっとボスを倒すってこと」

「休憩は?」

「その都度とるよ。大丈夫。色々試したいことをやりながら、同じ戦い方じゃなくて、毎回考えて戦うこと。いいね?」

「考えて戦うですね。分かりました!!」


 とりあえず最初は何も言わずにナターシャにボスを倒させる。

 一度倒してるのもあってか余裕を持って、危なげなく倒せるようになっていた。


「ロドニー大師匠、前より冷静に倒せました!!すごいです!!」

「大師匠⁉︎」

「そうです。バッツ師匠の師匠なんですから」


 あぁ〜。そうですか。初めてナターシャに会った時はナイススタイルで一度お相手してみたいなとか思ってたけど、孫弟子とかになってしまったら手を出せないではないか…


「そうか。なら大師匠らしく、課題を与えよう。手を出して」

「はい!!」


 俺はナターシャの腕に魔力紐を結ぶ。


「これは?」

「ボスと戦いながら常に魔力をこの紐に流し続けること。魔力が途切れた瞬間、ナターシャに重力魔法かけていくから」

「重力魔法?」


 俺はナターシャの体を1.5倍重くした。


「えっ?少し体が重くなりました!!」

「そう。魔力が途切れた分だけ体が重くなるから、下手したら死ぬからね。まぁ死んでも生き返らせてあげるから心配しないで」


 血の気が引いていくナターシャ。

 正確には死にそうになったら結界と治癒魔法ですぐに治すだけなんだけど。

 腕の紐は離れててもすぐに治癒魔法が、かけれるようにする為でもある。


「さぁさっそく行ってみよう!!」

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