第36話 オープン!!

 お店オープンの日。

お店の名前は【アイリー】となった。

名前の由来?幸せとかそう言った意味。

半分趣味の店なので知り合いに声をかけたくらいで宣伝はしていない。

 大きい店でもないし、売り上げとか求めてないからボチボチやっていければいい。


「ロドニー様、そろそろオープンの時間です」

「アマンダさん、今日からよろしくお願いしますね」

「はい。こちらこそよろしくお願いします」


 貴族との問題がうやむやな為、アマンダさんは家に引っ越してもらい、いつでも守れるようにした。


 アリアナとはあの日以来、仲直りをして、その後もお泊まりする関係。アマンダさん曰く、ロドニー様はみんなの物だから独り占めはダメと言ってくれたみたい。


 冗談かと思ったが、夜の世界の女性で暗黙のルールとして存在するらしく、俺に彼女ができたら暗殺するかどうかという話もあるみたい…さすがにそれは冗談だと思うが…


 たしか日本の有名人で、全国の風○嬢が俺の彼女だって言った人いたような…


 まぁいい。オープン初日、ルドルフさんや蒼炎の皆さん、アーバイン伯爵も来てくれた。みんなハイボールに驚きながらも気に入ってくれた。


「ふぉっふぉっふぉ。このシュワシュワがたまらんの。ロドニー君や、これで一儲けしないかの?」

「ルドルフさん、お陰様でお金に困らないくらい稼がせてもらってるので、これ以上稼いだらと考えるだけで恐怖ですよ」

「なんじゃもったいない。また気が変わったらよろしくの」


「ルドルフ殿の言う通りだ。これは貴族相手に大儲けできるぞ」

「アーバイン伯爵様まで。一応、この炭酸水は瓶に詰めてあるので、よかったらお土産にお持ち帰り下さい。また欲しかったらお店で売りますのでいつでもお待ちしております」

「おぉ!!それはありがたい。さすがはロドニー殿」

「ただ、この炭酸水、蓋をあけるとシュワシュワが無くなっていくので、開けたら早めに飲んで下さいね」

「だから小さめの瓶なのだな?なるほど」


 蒼炎の皆さんはアーバイン伯爵が同じお店にいることにガチガチに緊張してしまっていて、隅っこで飲んでいる。


「皆さん、ここでは気楽に飲んで下さいよ」

「そ、そんなこと言ってもな…」

「なんかランスさんが小さく見えますね。なら特別に住居スペースに案内しますよ。お酒も少しはそこにあるので、気軽に飲んで下さい。今日は僕の奢りです」


 俺の奢りという言葉にランスさんが一番に反応、リーナさんとライラさん、エンリケさんは貴族と違う場所へ移れることに安堵してる様子だった。


 蒼炎の皆さんにはローラ、バロック、リリーも紹介しており、もし良かったらローラとバロックの戦闘訓練なども暇だったら付き合って欲しいと伝えた。訓練してくれた日はお酒を無料で飲めばいいとも伝えてある。お互いにWin-Winの関係だろう。


 閉店前には冒険者のギルドマスター、スパイクさんや、夜の蝶の店長、そこで働いている女の子まで来てくれた。


「スパイクさん、今日は僕が奢りますよ。遅くなりましたが、良いお店を紹介してくれたお礼です」

「良いお店?あぁ!!なるほどな。では遠慮なく」


「おやおや、良いお店とはうちのことですかね?」

「あはは。ちょっと店長、まぁそうですけどね」


楽しい時間はあっという間に過ぎ、閉店時間。


「一日お疲れ様でした」

「ロドニー様、皆さん喜んでくれましたね」

「えぇ。本当に色んな人が来てくれて良かったです」


 営業終了後、みんなでお疲れ様パーティーを開く。バロックもローラもみんなでお酒を飲み、リリーは炭酸ジュース。

 アマンダさんにお店の店長をお願いし、必要であれば従業員を増やしても良い権限を与えた。アマンダさんが体調不良の時は遠慮なく休めばいいとも。


 何か問題があった時はローラかバロックが俺に知らせてくれる。奴隷紋のおかげか、俺との繋がりがあって、奴隷紋に自分の魔力を流せば俺に伝わる。メッセージまでは無理だが、何かあったのだなと分かれば転移ですぐに助けられる。


「では、明日からも皆さんよろしくお願いしますね。僕はまた修行に戻ります」

「お店はあたい達にまかせときな」

「主人、たまには手合わせをお願いしたい」

「ロドニー様、私もほっとかれると寂しいんですからね」

「ロドニー様、リリー、ご飯作るのもっと上手になるから」

「何もなくても顔を出すので、あまりここを離れるとアリアナにも怒られそうですし…」


 その日以降、最低でも2週間に1度はお店に顔を見せるようにしている。


 アマンダさんに呪いをかけたのが誰なのかはまだ分かってない。もしかしたらあの貴族かもとアマンダさんは言ってるが、可能性でしかないのでこちらからは動けないが、まぁ何かあれば全力で相手を潰すまで。

 一応、アーバイン伯爵にも伝えてある。何かあった時に守ってもらう為だ。


 お店はひと段落したので、修行が終わったら今度はコーヒーを探す旅に出ようかな…


 ハージノ街の生活に戻った俺は、奴隷紋を参考に通信魔術を考えることに。

 お互いの魔力紋を交換することで呼んでるって意思は伝えられるが、会話ができない。

 得意の音魔法でなんとかなるかと思ったが、遠すぎてダメだった…


 いや、自分の声を録音して、相手に転移させれば行けるか?

 ちなみに、魔法陣を身体に描いて、魔力を流した物を魔力紋と言っている。


「父さん、カリー、ちょっと手伝って欲しい」

「「いいよ〜」」

「この魔力紋をカリーの腕に描くから、同じやつを俺の腕にカリーの魔力で描いて」

「わかった」

「父さんは魔力紋の改良点があったら意見が欲しい」

「面白そうな実験だね」


 俺はカリーと距離を取り録音した声をカリーの魔力紋へ転移させた。


『🎶カリー、聞こえる?』

「ロドニーの声が聞こえてきた!!」


 一旦カリーのとこへ戻る。


「俺の声聞こえた?」

「聞こえた!!でもどうやったの?」

「その魔力紋は録音と再生の機能があって、それをそっちに転移させた」

「すごい!!私もできるかな?」

「使い方さえ分かればできるよ」


 カリーに使い方を教え、また離れる。


『🎶ロドニー聞こえる?』

『🎶聞こえる!!』

『🎶すごい!!さすがロドニー』


 カリーのとこに戻り、父さんに意見を聞く。


「ロドは面白いことを考えるね。そうだね、この魔法陣だと、距離が長くなるほど転移に魔力が必要になるのが気になるかな」

「たしかに!!体ごと転移させる魔法陣をそのまま使ってたからな。音だけでいいんだよね」


 色々話し合いをしながら3人でなんちゃって通信魔法を作り上げるのだった。

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